前回に続き“売上予測が外れるパターン”について。今回は路面店のケースを取り上げます。
私自身がかつて、売上予測を大外しして痛い目にあった怖い失敗談を素材に、店前通行量の見方についてもお話ししたいと思います。
店前通行量と店舗売上の関係
店前通行量が少ない場合、店舗売上がどうなるのか?といいますと、自力で集客する力の弱い店舗や企業の場合は、高い売上が期待できない、と考えることになります。なので、通行量の少ない立地は避けられてしまうわけです。
逆に店前通行量が多いと、“集客できないリスク”が低い、出店して失敗する危険性が低い、と考えることができます。よって、通行量は、多いところが好まれやすい。ここまでは、それはそうだろうな、という話だと思います。
しかしながら、通行量が多いからといって、一概に高い売上が期待できるのか?というと、そうとも限らないのです。
いくつかの地点があって、店前通行量、物件の前の通行者数がほとんど同じでも「何か」が違うことがあります。その「何か」によって、売れたり売れなかったりするんです。
店前通行量は何のために測るのかと言いますと、出店した後の売上予測に使うためです。店前通行量と店舗売上の関連をマトリックスで示してみました。
縦軸は店舗売上が高いか低いか、横軸は店前通行量が多いか少ないか、を示します。売上は店前通行量が少なければ低くなり、店前通行量が多くなれば高くなるのが普通ですので、普通は右上か左下になると思われます。
左上の、店前通行量が少なくて売上が高い店というのは、立地が良いとか、間口が広いとか、色々な条件が揃った非常に理想的で優秀な店舗であることが考えられます。
問題となるのは右下です。店前通行量は多いものの、店舗売上が低い「△×(売れない)」とあるところです。こういう立地には、店舗開発としては、出店を避けたいと考えるわけです。
余談~かつて私が予測を大外しした失敗談~
関連して余談です。
今だから言えますが…というお話です。個人的に、もう20年ほど前の話になりますが、売上予測を大外ししたことがあり、その時のことはいまだによく覚えています。
ある集客力抜群の施設がありました。その施設と最寄り駅の間を結ぶ強力動線上の区画に出店することになりました。売上予測値をおよそ3000万円で出したのですが、実際のところは、売上はその半分にも届かなかったというケースです。
当時は既存店に類似したところがなく、イレギュラーなケースだったので、仕方がなかった等の事情もあります。が、いずれにせよあってはならない失敗です。これを教訓にしようと、原因をずいぶん考えたものでした。
さて、その施設とは何でしょう?ヒントは大阪です。今でもあります。目的地としての力が非常に強い施設です。
正解は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンです。
私はその店舗の予測を大外ししてしまったので、怖くて、いまだにUSJには行ったことがありません。今後も多分行くことはないんじゃないかなと思います。
以上、余談ですが、これを教訓としてお話していきたいと思います。
店前通行量の数字のみ鵜呑みにしての判断はNG
売上予測に反して売れない、これは開発としては避けたい。売れると言ったのに売れないというのは最悪です。と考えると、店前通行量の数字を鵜呑みにしてはいけません。
鵜呑みにしない場合どうすべきか?というと、数字を調整する必要があります。予測売上をやや控えめに見るというようなことも時には必要、ということです。それによって、ふさわしい売上予測を立てましょう、ということなんです。
じゃあ、調整の観点としてどういうものがあるんでしょう?ということで、大事なものを2つご紹介したいと思います。
観点1:全然通行量の性質
物件の前を通っている人の数だけではなく、その通行している人の性質、質的なものを観察してください。
例えば、歩行者の通行の目的です。目的が明確に定まっている、あまりにもハッキリしている場合というのは、歩く速さも速くなってきます。そうすると、その早い速度で歩いている脇にある店舗は、やはり、立ち寄られる確率は下がります。
その他、前面道路や通路の幅も確認してください。前面の道路の幅が非常に広いようなところでは、例えますと、川の大きな流れのように人が通過していく場所があります。当然、店前通行量の数自体は
多くなるのですが、それに比例して売上が上がっていくかというと、そういうわけでもないんですね。
例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと駅の間。また、「仙台一番町」という仙台市のメジャーな通りがありますが、そこもかつて似たような苦い思い出があり、こういう話になると思い出す場所です。
観点2:物件とTG(ティージー、交通発生要因)の位置関係
「TG(ティージー)」という言葉がありました。交通派生要因となるものですが、物件とこのTGの位置関係をよく考える必要があります。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも一つの例ですが、通行者の目的意識が極端に強い施設、真っ先にその施設に向かっていくような、一目散にその施設に向かって人が移動していくような力のある施設の付近は要注意です。
さらに、その施設の中で行動が完結してしまうような場合です。用事を全て済まして、人が出てくる。こういった場合も厳重な注意が必要です。行きも寄ってもらえない、帰りも寄ってもらえないということで、店の前は結局素通りされるだけで終わってしまうということになりかねません。
以上、2つの観点を取り入れてみてください。
まとめ
店前通行量についてお話をしてきましたが、人数以外の視点も重要です。
特に、あるTGとそこに近接する他のTGがある場合、その2つのTGを最短距離で結ぶような、単なる移動経路になってるような動線は要注意です。物件の前を人はいっぱい通るのですが、非常に速いスピードで通り過ぎていくようなところは、動線の質的な性質も加味して予測を調整すべきかを検討すべきです。
今回の話は、路面店出店に関してでしたが、同じようなことはロードサイド物件についても言えます。ロードサイド物件の場合はどうなのか、という点は、次回のブログで解説したいと思います。
弊社YouTubeチャンネルにミニ講義もアップしましたので、ぜひご覧ください。