苦手意識を持ちがちな売上予測業務を、得意技にするために

店舗開発において、新店の売上予測業務は「なかなか当たらない」「どうやってやったら良いのかわからない」と悩まれている方が非常に多い領域です。

でも、この売上予測は、物件のプレゼンで避けては通れないものですし、上に外しても下に外しても深刻な問題を起こします。きちっとできないと、店舗開発担当としては、よろしくないわけです。

ということで、売上予測をできるようになるために、統計学やExcelに関する本を探し、やってみようとするわけですが、これがなかなか、仕事に直結するように書かれているものがないのです。

ないならば作ってみようということで、当ブログでは、店舗開発の売上予測に使う必須の知識を、何回かにわたって、なるべく分かりやすく解説してみたいと思います。

少しだけ数学の話もしますが、中学校までに習ったものしか出てきませんので、どうぞ身構えずにお付き合いください。

今回はその第1回目として、「回帰分析」についての説明の触りの部分をやってみたいと思います。

そもそも「売上予測をする」とはどういうことか?

そもそも売上を予測するとは、既存店舗や、それがない場合は競合店などの類似する店舗の傾向から、新規物件の売上を“数字で測定すること”をいいます。

どのように測定するかというと、既存店や類似する店舗の傾向を分析し、その分析結果を新規物件に当てはめて結果を出していく。こういう作業をいいます。

ですから、ここに開けたら売れる・売れないといった、いわゆる“予想”ではありません。予測の「測」は、測定の「測」です。数字で測定することが予測ということになります。

ですからこれは、客観的な説明が求められます。客観的な説明とは、同じやり方で誰がやっても同じ結果が出るということです。

この予測値を出すやり方を、なんとなく自己流で行うのではなく、きちっとした作法や方法に則ってやってほしいということで、統計学やデータ分析を使うことが求められるわけなんです。

統計学とか、データ分析の手法をきちんと施したということによって、説得力が増していきます。その結果、社内の納得が得られやすくなるということで、こういう統計的な手法を身につけて売上予測をやっていくことが大切なのです。

第一段階:散布図の作成

最初に行っていただきたいのは「散布図」を作成するという作業です。こちらの図で説明します。

散布図の作成では、まず縦軸と横軸を取ります。店舗開発の売上予測の場合、縦軸は店舗の売上となります。横軸の「?」は、売上に影響する事柄で、売上に関連する「要因」と言ったりもします。

重要なポイントとして、横軸と縦軸に何を置くかは決まっています。横軸は原因になるもの、「規定要因」にあたるものとご記憶ください。縦軸はその結果に当たるものです。ですから、縦軸が店舗の売上となります。シンプルに、縦軸は店舗の売上、横軸が要因と覚えてください。

この店舗の売上と売上に関連する要因を店舗ごとに集めて、既存店のデータをプロットしたもの、これが散布図というものです。

例えば図のような形となります。緑の点が7つあります。既存店が7店舗あり、店舗の売上が高いところから低いところまであって、「?」の売上に影響する事柄は、右に行けば行くほど(「?」の値が大きくなればなるほど)売上も上がっていく。こういう関係が読み取れそうですね。

こういったことを目で見て把握するために、この散布図というものを作成していきます。これは、実際に実務で行うときは、Excelを使います。

そうすると、「?」が増えていくと店舗の売上も上がっていくということで、この7つの緑の点のちょうど間ぐらいを通る線を引いていくと、図のような赤い線が見えてきます。

散布図を作成して、2つの関係を一直線で表すとどうなるかな?なんて見ていくのが、第1段階となります。

第2段階:回帰分析をする

次に、回帰分析というものが出てまいります。回帰分析というと、統計学の中に出てくる手法なのですが、なるべく簡単に説明してみたいと思いますので付き合いください。

先ほどの散布図を再びご覧ください。散布図を描いた後に、7つの点のちょうど間を通るような一直線を考えるという話をしましたが、回帰分析は、その赤い線を1本に決める作業です。

まずは試しに、前掲の散布図の緑の点だけを見ながら、赤い線を皆さんそれぞれに描いてみてください。すると、赤い線は人によってひき方が変わってきてしまうのではないかと思います。同じ方でも、時間をおいてもう一度同じことをすると、全く同じ線にはならないのではないかと思います。このように、線の引き方は、人によって変わってしまうのです。ですから、この赤い線1本を、誰が見ても誰が決めても同じになるように、1本に決めたいんです。

売上に影響する事柄について、対象の物件について調べると、「?」の値が定まります。その値から上にいくと、赤い線にぶつかります。この赤い線によって、売上予測の値が計算される。回帰分析というのは、こういう仕組みを作ろうとしているんです。

「?」の値を1個決めると、予測売上が1個決まる。こういうものを「関数」といいます。xの値が1個決まるとyの値も1つ決まる。中学校の数学の時間に習ったことですが、そういう関係のことを関数といいましたね。一次関数といいますが、店舗開発の仕事でも、こういうところで使われているんですね。

赤い線を1本決めるとはどういうことかと言いますと、これは【店舗売上=ある係数×「?」の値+定数】という式を一つ決めることになります。式を一つ決めるというのは、係数と定数を決めることです。これによって、赤い線がただ一つに決まるんです。これを決めることを回帰分析と言います。回帰分析で何をやるかというと、この係数と定数を求めるんだと認識してください。

中学校で習った一次関数では、y=ax+bという式があったと思います。このaとbを決めていくことを
回帰分析といいます。ここで示した定数のことを「切片」、係数のことを「傾き」「変化の割合」などという言葉で習っていると思います。

回帰分析で関数が決まることによって、1本の線が決まり、物件の「?」の値から店舗売上の値が1つ決まるんです。赤い線の関数を経て予測売上が1つ決まっていくと、誰が計算し ても同じ数字が求まるようになるわけです。

今回は、回帰分析とはどういうものなのか、ということまでわかっていただければと思います。

実際の分析はとなると、Excelで行います。データ分析機能というものがあり、これが非常に便利になっています。

単回帰分析と重回帰分析

さて、売上に影響する要因である「?」に当てはまるものですが、これは通常、複数あります。1つ2つでは決まりません。

ですから、回帰分析というのは2つに分かれており、「単回帰分析」というものと、「重回帰分析」というものがあります。

単回帰分析というのは、要因がたった一つ だけの場合です。このようなケースはほとんどありません。2つ以上関連していることがほとんどです。この場合は、重回帰分析というものを使います。

単回帰分析と重回帰分析の違いは、要因が1つか2つ以上かということの違いだけで、基本的に考え方は一緒です。

次回に向けて:実務では、さらに様々なコツや考え方がある

先程の例では、7つの点があって、綺麗に赤い線を1本引けましたが、実際は、線が1本きれいに引けるなんてことはほとんどないです。通常、要因は複数あるとお話しましたが、複数の要因を何でもかんでも関係させ ていけばいいかというと、そんな簡単なことでもないんです。

しかしながら、仕事ですぐ使えるような知識だけがまとまっている書籍等がほとんどないので、当ブログでは、やり方やコツをご説明していきたいと思います。ご興味がおありの方は、またお付き合いください。

ということで今回は、売上予測に使う回帰分析とはどういうものなのか?をお話してみました。まずはざっくりとイメージを掴んでいただければ結構です。また、中学校の頃に習った数学が、実はこういったところで使われているんだ、なんてこともわかっていただければ良いなと思います。

続きは次回のブログで。弊社YouTubeチャンネルにもミニ講義をアップしましたので、ぜひご覧ください。