自治体レベルでの市場選定
前回の続きです。多店舗化する企業が出店に関して意思決定しなければならない要素には、
①総店舗数、②出店する市場の地理的範囲、③想定する個々の店舗の立地のバリエーション、④総店舗数の地域配分
があり、想定するストア・ブランドのイメージを軸に、それらを別個に考えるのではなく、同時並行に、システマティックに検討する必要があります。
今回からは、②「出店する地域市場の範囲」についてお話します。
これは、展開する「自治体レベルでの市場」をどのように選定するかを意味します。
個々の自治体の中で具体的にどこに出店するべきかについては、③想定する個々の店舗の立地のバリエーションで扱うとして、その前の段階で敢えて「自治体レベルの市場選定」の方針を決めておく必要があるのはなぜでしょう?
それは、はじめに物件ありきで、個々の物件の立地が良いというだけで場当たり的に新規出店を繰り返すことによる弊害を減らすためです。
ではその弊害とは何でしょう?
まず、チェーン企業としての成長段階の早い段階から店舗網が広域に分散してしまうことが挙げられます。
それに伴い物流・配送や店舗管理、広告宣伝などの費用対効率は悪化してしまいます(この点については後日、「ドミナント戦略とは?」という特集でお話させていただきます)。
また、出店する自治体の多様性が高まることにより、ブランドイメージが拡散してしまう恐れが生じます。
下の【表】は、三越伊勢丹ホールディングスが出店している都道府県・自治体と、店舗数を示しています。北は札幌、南は福岡まで全国的に店舗を配置していることが分かります。
百貨店が出店する自治体は市場規模も大きく、不特定多数の消費者を吸引する力を持っています。こうした自治体に限定して店舗を構えることである一定のイメージを保つことができるのです。
ただご注意いただきたいことは、百貨店のようなBig-boxタイプのリテーラーは、各自治体に1~2店舗を出店すれば十分なため、店舗数が32店舗しかないのにも関わらず表のような全国的な店舗展開が可能だということです。
一方、Mini-boxタイプのリテーラーは、各自治体に10店舗以上出店しなければならないこともあるため別のアプローチが必要です。そのあたりは、意思決定要素の④総店舗数の地域配分でお話しますが、ここでは店舗展開の優先順位が高い自治体にどのようなものがあるかをご確認ください。
ここでもやはりストア・ブランドのイメージが関わってくるのですが、どの自治体でも出店機会があれば出店するのではなく、成長段階に応じて展開するべき自治体を主体的に選択して広げていくべきなのです。
続きは明日のブログで。
【表】三越伊勢丹ホールディングスの店舗展開
都道府県 | 市区町村 | 店舗数 |
北海道 | 札幌市中央区 | 2 |
北海道 | 函館市 | 1 |
宮城県 | 仙台市青葉区 | 1 |
埼玉県 | さいたま市浦和区 | 1 |
千葉県 | 千葉市中央区 | 1 |
千葉県 | 松戸市 | 1 |
東京都 | 中央区 | 2 |
東京都 | 新宿区 | 2 |
東京都 | 渋谷区 | 1 |
東京都 | 豊島区 | 1 |
東京都 | 立川市 | 1 |
東京都 | 府中市 | 1 |
東京都 | 多摩市 | 1 |
神奈川県 | 相模原市南区 | 1 |
新潟県 | 新潟市中央区 | 3 |
静岡県 | 静岡市葵区 | 1 |
愛知県 | 名古屋市千種区 | 1 |
愛知県 | 名古屋市中区 | 2 |
京都府 | 京都市下京区 | 1 |
広島県 | 広島市中区 | 1 |
香川県 | 高松市 | 1 |
愛媛県 | 松山市 | 1 |
福岡県 | 福岡市中央区 | 3 |
福岡県 | 久留米市 | 1 |