銀座には百貨店のほか高級ブランドショップが多く軒を連ねています。銀座は国内での地価が最も高い地点を含み、銀座へ出店することはブランドにハイエンドなイメージを与える効果があると言えます。

銀座は日本における最大の情報発信源であるといって良い場所です。マクドナルドとスターバックスの共通点の一つには、日本での展開を銀座から開始したことが挙げられます。ほかにもその時々で勢いのあるテナントが初出店してきました。

さて、弊社が出店という観点からとらえた銀座の2023年をお話したいと思います。

5月、H&Mの“カムバック”出店がありました。2008年に日本一号店を開業後、2018年の閉店を経た再出店でした。

2008年といえば、ファストファッションのテナントの銀座出店が相次いだ時期でした。ZARAも2008年に出店しました。2010年にはGINZA SIXにフォーエヴァー21が出店しました

しかし、ZARAは2015年に、フォーエヴァー21は2013年に、それぞれ閉店しました(参考記事:「ザラ」が銀座マロニエ通り店を閉店)。後者は店舗どころか会社ごと無くなってしまいました。

銀座の高額な家賃が手ごろな価格帯の業態には重すぎたことが閉店の大きな原因だったものと推測できます(参考記事:H&Mが銀座にカムバック「H&M銀座並木通り店」出店の狙いは?)。

9月1日、こうした、新たにファストファッションで出店したテナント(ユニクロは除く)が、ことごとく閉店した銀座に新たなブランドが初出店しました。ワークマンの新業態Workman Colors1号店が銀座4丁目と5丁目の間に位置するイグジットメルサ5Fに出店したのです。

H&M、ZARA、Forever21が閉店したエリアに、それらと比べると実績が乏しく、将来性も未知数なテナントの出店は、どう考えても楽観的には思いにくいものです。H&Mのような再出店が続くとすれば、閉店→銀座2丁目への移転が予想されます。

10月17日にはEDLPのスーパーOKが銀座3丁目のマロニエゲート銀座2の地下2、地下3階に出店しました。EDLPというなら地価の高い銀座にわざわざ出店せずとも、もっと手堅い所に出店して、より安くしてほしいと消費者なら思うはずで、どうも“違和感”のある出店でした。

これはEDLPをうたう同社が積極的に仕掛けたものなのか?と思い、同社のHPを調べてみると、そうでもないように思われる情報がありました。同社の販促広報室によれば、“株式会社ファーストリテイリングとのご縁により、出店の機会をいただきました。”とあります。“マロニエゲート銀座2には、株式会社ファーストリテイリングがユニクロのグローバル旗艦店「UNIQLO TOKYO」をはじめ、ジーユー、PLST(プラステ)、Theoryなどグループブランドも展開しています。当社はそのマロニエゲート銀座2のB1FとB2Fに出店します(出所)”。

以上の内容を、次のように解釈しました。

ファーストリテイリングさんが一棟を借りている商業施設で、ファッションには相応しくないので、つまり、地下が埋まらないので、どこか興味のあるところはないだろうか?ということで、恐らく複数のスーパーに声がかかり、その中で中央区に店舗がないスーパーOKが関心を示した、といった具合です。

確認したわけではありませんが、スーパーOKにとっては、銀座出店は小売業としてのゴール、あるいは悲願、の一つだったのかもしれません。(消費者としてはそうでないと思いたいところです)

以上を踏まえて、銀座に関する弊社の勝手な将来予想です。

銀座は銀座でも従来の高価格帯のテナントが集積する4丁目付近からは離れた2丁目に、価格帯の手ごろなテナントの集積ができ、4丁目で無理したテナントの受け皿となる、という流れが強まると予想します。証券市場をもじって、銀座プライム、銀座スタンダード、銀座グロースのような、銀座地区内の地域の序列が進むことも考えられます。

予想通りとなるかどうかを確認しながら、2024年以降も銀座の変化を観察したいと思います。

なお、ブログやYouTubeではどうしてもこのあたりまでしかお話できませんが、弊社独自取材の情報も含めた実例の数々をご紹介しつつ、「店舗開発の落とし穴と失敗しないための考え方」を深掘りしてお話するセミナー「店舗開発という仕事2024春」を来年3月15日、丸の内にて開催します。弊社として実に4年ぶりのライブセミナーとなります。クローズドかつ少人数で、ご自由に質問いただける会です。ご興味のある方はぜひこちらよりお問合せください。