引き続き固い話ですが、なぜ“店舗はあって当然”、“店は簡単に開けられる”と思われてしまうのか?の前回からの続きです。

これはマーケティング領域の知識に偏りがあることにも原因があります。小売やサービスを研究対象としている研究者が扱う内容は、短期的に変更が可能な店内環境に関するものに偏っているといえます。そこでは店内にいる顧客にどう対応するべきかが課題となり、メニューや接客、音響、レイアウトなどの店内環境に関する要素が顧客の購買意欲等にどう影響するか?といった内容が研究対象となります。顧客満足という言葉をよく耳にしますが、これも顧客自体が存在することが前提になっています。顧客になっていない人をどう顧客にするかというビジネスで最も重要な課題に取り組む人は少ないのです。

しかし現実は店舗の立地に応じて顧客の数や質は異なります。店舗・立地は短期的に変更が不可能な要因で、新規出店は供給のキャパシティや方法を決める意思決定ですが、これは十分に知見が蓄積されているとは到底言えない状況です。そろそろこうした問題を扱う人が出てきても良いように思いますが、まあ、実務で経験しないと、こうした喫緊の問題に対して考えることを求めるの難しいのかもしれません。

しかしこうした店舗の立地を独立して考える人を量産している状況をそろそろ変える必要があります。店舗を開業するノウハウ本が書店に多く並んでいます。自信のあるサービスメニューを準備し、店内も小洒落たものにするのは良いのですが、こうした本のモデルとなる店舗もそれをどこに出店するかで成功するか否かの大半が決まるということを、どれだけの人が分かっているのかと不安に思います。

小売経営における知見が以上のような状況なので“店舗はあって当然”、“店は簡単に開けられる”と思う人が多いのは当然といえば当然なのです。こうした状況を代えるべく、店舗開発という業務を担当する幸運に恵まれた人で意欲のある人は知恵を働かせ、それを経営における知見にしていく努力を始め理論武装をはじめるべきなのです。その助けになる教科書を現在執筆中です。来春刊行予定ですので、ご記憶ください。

このシリーズは、先日「第18回 関東 店舗開発情報交流会(於虎ノ門)」(197社303名参加)で弊社が講演させていたただいた内容の補足として書き始めました。『店舗開発情報交流会』は、店舗を有しチェーン展開を行う企業の店舗開発実務担当者を会員とする組織で、店舗開発に有意義な情報交換を行うことを目的としています。ご興味のある方はこちら(http://sdc-j.jp/)より事務局までお問い合わせください。