前回の続きです。昨日、業界トップクラスの某レストランチェーンの店舗開発部長と面会する機会がありましたが、やはり出ました、“「店舗開発なんて誰でも出来るんだろう?」と言う役員がいる”という話。

彼自身は大変優秀な開発マンで、当たり前のように開発業務をこなしてしまうので、簡単なように思われてしまうのかもしれませんが、“誰でも出来るだろう”と能力の低い社員を店舗開発に充てがわれ、苦労をされたそうです。

こうした“店舗開発は誰でもできる”、“簡単に店は開けられる”と思う人が後をたたないのはなぜか?

それは経営に関する知識の現状にあります。書店や図書館で経営に関する本を手にとってみてください。店舗開発に関して記載があるものはほとんどありません。店舗の開業に関するノウハウ本でも、立地の重要性くらいは記述がありますが、多店舗化についてはほとんど記載がありません。出店戦略に関する書籍も若干はありますが、これもどういう場所に出店すべきか、どう立地を評価すべきか、つまり、“1店鋪をどこに開けるべきか”という内容に集中しているように思います。要は、小売業の経営に関する知識は“店舗ありき”のものと言えるのです。店舗と顧客はあらかじめ存在することが前提とされているのです。その結果、“店を開ければ客は来る”という勘違いを誘発しているように思います。

この状況を改めるためには、まず現状をしっかり把握する必要があります。少し固い話になりますがお付き合いください。

なぜ“店舗はあって当然”、“店は簡単に開けられる”と思われてしまうのか?

それは、小売業に関する知識は“ビッグボックス”の小売業に関するものが主流であるためです。ビッグボックスの小売業とは、百貨店やショッピングセンターといった大箱の店舗をもつ小売業をいいます。これらは歴史が古いため、長い間、研究対象となってきました。こうした小売業の特徴は、“自由に立地を創造できる”ということです。乱暴な言い方になりますが、開けられる土地に大規模な店舗を開業すれば広域からでも自力で集客ができるのです。立地を選ぶ際の自由度が高いのです。

それに対して“ミニボックス”の小売業やサービス業は歴史がまだ浅く、知識の体系化が遅れているのです。その為、自社がビッグボックスであると勘違いして、それと同じように出店を考えてしまう人が生じてしまうのです。“ミニボックス”の場合、開けられる場所に単独で出店しても自力で広域から集客し続けることは困難です。むしろ集客をビッグボックスの小売業を含めた、他の集客力のある施設に集客を依存せざるを得ないのです。それが可能な立地には限りがあり、その獲得をめぐり同業者・異業者との争いになるのです。

以上のように“ビッグボックスとミニボックスは性質が異なる”ということを、まずは強く認識すべきであると思います。引き続きミニボックスに相応しい考え方について考えていきたいと思います。続きは次回のブログで。

このシリーズは、先日「第18回 関東 店舗開発情報交流会(於虎ノ門)」(197社303名参加)で弊社が講演させていたただいた内容の補足として書き始めました。『店舗開発情報交流会』は、店舗を有しチェーン展開を行う企業の店舗開発実務担当者を会員とする組織で、店舗開発に有意義な情報交換を行うことを目的としています。ご興味のある方はこちら(http://sdc-j.jp/)より事務局にお問い合わせください。