誕生日やクリスマスなどで買うことがある丸い“ホールケーキ”は気分をワクワクさせるものです。しかし、いつまでも丸いままではなく、食べるときには人数分に切り刻まれてしまいます。
そして、自分の分が取り分けられると、他の人の分を食べることはできなくなります。

こんなことを思ったのは、先日(個人的な話で恐縮ですが)次男の付き添いで渋谷駅新南口付近に行く用事があったのですが、普通に京王井の頭線のメイン改札を出て向かったものの、工事の囲いがいたるところにあってなかなか目的地にたどり着かくことができず、お恥ずかしい話ですが、時間に余裕をもって到着するはずだったところが、集合時間に若干遅れてしまったときでした。

その後、次男の用事が終わるまで6時間ほど時間が空いたので、渋谷駅周辺一帯を回遊しようと歩き始めました。

遅刻の原因は、昨年9月に開業した『渋谷ストリーム』でした。東急東横線のホームがかつて存在したあたりの都市再生事業の一環で、“渋谷駅南街区プロジェクト”と呼ばれるそうで、あくまでも東急電鉄のための施設であり、JR渋谷駅新南口や京王井の頭線と物理的に接続しているわけでもありません。

東急電鉄といえば『渋谷ヒカリエ』ですが、渋谷ストリームと駐車場は提携しているものの、2つの施設間を移動するのは非常に面倒ですし、渋谷ヒカリエ地下メイン入口前の東急東横線改札口から渋谷ストリームへスムーズに行くのも非常に困難です。
行き先のサインも今のところありません。

同じ企業が進めているプロジェクトが複数あるものの、施設間の連携のようなものはほとんど感じられず、“街をホッツキ歩く楽しみ”のようなものはもはや感じられなくなってしまいました。
2023年には渋谷駅桜丘口地区が竣工し、2027年には旧渋谷駅街区に東急電鉄、JR東日本、東京メトロが事業主体となる渋谷スクランブルスクエアが開業するそうで、それらにより渋谷駅周辺から路上への人の流れは堰き止められ、以前あった街の回遊性はほとんどなくなってしまうように思われます。

「界隈性(かいわいせい)」という言葉があります。
建築用語.netによれば、界隈性とは、

地元商店街の賑わいや生業の活気といった、生活感あふれる雰囲気を感じさせる個性的な街並みについて、界隈性が高いなどという。個々の非合理的条件が全体としては合理的にまとまっているような状態をいう

そうです。
「界隈性」は、渋谷駅周辺からどんどん失われていくように思われます。

やっとのことで、昔からあった『三千里薬局』から西武百貨店を経て東京百貨店本店があるあたりに出ると、人々が街を歩く、一昔前までは当たり前だった光景を見ることができてほっとします。
しかし、10年後にはこうした景色も豹変していると思われます。

こうした状況は渋谷駅に限らず、共通している駅が他にもあるように思います。
しかし、その反動もあるように思われ、将来的には意外な街の人気が上がることも考えられます。
それはどこだろうか?
また、都市再生が進む状況に対して、出店しやすいテナント、逆に、出店しにくいテナントはどのようなものか?
など、考えることが多々浮かんできましたが、それは別の機会にしたいと思います。

渋谷駅というかつての“ホールケーキ”がどう切り刻まれていくかは、こちらのページの『渋谷駅周辺開発全体図』をご参照ください。

https://www.tokyu.co.jp/shibuya-redevelopment/index.html

切り刻まれたケーキとケーキの間を全て回ると、距離の割にかなり歩かされることになるため、全ての回遊を目指される方は、時間の余裕をもってお出かけください。

続きは明日のブログで。