前回の記事では、

「店舗数が10~30店舗ぐらいの場合、新店の売上予測を行うことを意識せずに、それよりも、売れている店舗と不振の店舗のグループ分けと、グループ間の違いがなぜ生じるかを“言葉で説明する”ことをまずは行う必要があります。それぞれのグループに入る店舗に共通することは何か?と問いかけるのです。」

とお話ししました。

これだけですとピンとこないという方もいらっしゃるように思われますので、問いかける内容や考え方をより具体的にしてみたいと思います。

どのような店が売れるか、あるいは、どのような店が売れないかを尋ねると、人によって様々な答えが返ってくるものです。「売上は店舗を運営する人によって変わる」という人もいれば、「店舗の広さ(面積)や区画による」と考える人もいます。店舗のある街の特徴を関連付ける人もいます。競争企業が多いか少ないかで分類する人もいます。

このように様々な回答がありえますが、ほとんどの要因が売上に影響をしており、ほぼ全員が正解なのです。しかし、そこにはある問題があります。

それは、ほとんどの回答が、一つの要因で売れる・売れないの説明をしようとしていることです。実際は、複数の要因が少しずつ影響しています。3つ以上の変数の関連を考えることは普通の人にとっては難しいものです。そのために重回帰分析などの統計的手法が必要になるのですが、それらが店舗数の都合で使えないとなると、自分の頭で考えるしかないのです。

ある一つの要因で売れる・売れないの説明をすることを行い、その結果から、新たな次の要因を見つけることを繰り返していくのです。

最初のある一つの要因は客観的な数字で測れるものを選び、それと店舗の売上高との関連を確認します。店舗の売上高に関連している要因として、最初に選ぶべきものは、ズバリ“市場規模に関するもの”です。人口の多い市場と少ない市場は、前者の方が高い売上が期待できると考えます。同様に年商が高い商業施設と低い商業施設では、前者の方が高い売上が期待できると考えます。実際の物件判断でも、無意識のうちにまず住所(~市、~区など)や商業施設名を見て、ざっくりと優劣をつけていませんか?

市場規模と売上高の関連は、今こそ丁寧に分析する必要があります。

コロナ禍前までは、単純に市場規模が大きいことは良いことと考えられていました。しかし、コロナ禍を通じて人々の行動は変化し、市場規模が大きいことが良いことと単純には考えにくくなりました。ある目的で市場規模の大きい遠方の街まで出かけていた人が、同じ目的が達成できるなら、市場規模が小さくても、自宅により近い街に行くようになることも考えられます。

自社店舗にとって、コロナ禍後も市場規模が大きいことが良いことなのかどうか、コロナ禍後の売上高に新たな傾向が生じているか、などを確認する必要があります。

売上予測で最初に行うべきことは、市場規模を表す数字と売上高の関連を分析することです。次回のブログでは、両者の関連を見て、次に何を考えるべきかをお話します。