シアトル・マリナーズのイチロー選手も引退し、平成もいよいよ終わりが近づきつつある中、先日の記事に続き再び、そして恐らく当ブログ最後の、『スターバックス リザーブ ロースタリー 東京』訪店記です。

シアトル・マリナーズのイチロー選手といえば(個人的な話で恐縮ですが)、スターバックス店舗開発本部の社員だった時代、シアトルのスターバックス本社出張中に幸運にもマリナーズの試合があるときは、頼まなくても現地の皆さんがちょうどよい時間に物件調査や既存店視察をスケジュールに入れてくださり、そのままナイトゲームに連れて行ってくださったことを思い出します。2000年代の話です。

あの頃、イチロー選手と同様に、日本のスターバックスには勢いがありました。その頃は、企業イメージの観点から物件の“周辺環境との調和”ということを真剣に議論しながら出店判断をしていました。周辺環境がイメージ的にバツ、という理由ではねられた物件もありました。

さて、昨日『スターバックス リザーブ ロースタリー 東京』を訪れました。
が、整理券を手に入れたのちに、やや冷たい風が吹く曇り空の下を並ばされ、雇われ警備員と思われる人々の指示があるまで店内に入れない状況をつくりだす(顧客満足度ならぬ)“自己満足度”が高い店舗、あるいは、自社が扱う業態を一か所にまとめた“一等貸しの居酒屋のカフェ版”のような店舗、には立ち寄ることなく、前回(寒くて天候も悪かったため)よく確認しなかった物件の“周辺環境”との関係を確認してみましたので、写真を共有させていただきます。

スターバックスリザーブロースタリー東京周辺環境

ドン・キホーテさん、トヨタレンタリースさんを悪く言う気は全くありません。が、スターバックスがかつて維持してきたイメージとは齟齬があるように思われ、それらが隣り合っているのを見ると、色々な事情があったにせよ、往年の時代にあった大切な何かが社内ではもう過去のものになってしまったのだと思われ、残念な気がしました。

あるものを良くするために力を注いだ対象が、自分にとって快くない方向へ変わってしまう。それはとても残念なことです。当時のスターバックスで働いていた人で、何らかの理由で退社した人の中には、この店を見て、同じような気がしている方もいらっしゃるのではないかと思います。

歴史の終わり…それはキリスト教の終末論、つまり、世界の歴史には初めがあり終わりがある、という考え方に基づいているといえます(詳しくは岩田靖夫著『ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書ご参照)。
これをスターバックスに当てはめて考えると、自分にとっての“その歴史”は終わったと、気持ちに区切りをつけるのに良いタイミングのように思われました。
日本のスターバックスに勢いがあったころをよく知り、ロースタリーのオープニングのためにわざわざ来日された(私も大変お世話になりました)元本社役員の皆さんによると、ハワード・シュルツ氏も日本法人の初代社長・角田雄二氏もこの店のオープニングにはいらっしゃらなかったとのことです。

新年を迎えると前年の物事が急に古いもののように感じられるように、新たな元号の時代を迎えると、その前の元号の時代のものも急に古いものに感じられるようになるのかもしれません。彼らは進化を遂げるのかもしれませんが、そのような姿は見たくないという人もいて、そういう人たちは、静かに歩き去っていくのかもしれません。

以上、今年の桜が散りぬる頃、ある歴史が終わる(?)というお話でした。

<これから『スターバックス リザーブ ロースタリー 東京』へ行かれる方へ>
施設の最寄り駅は中目黒駅なのでしょうが、ストレスなく行くとしたら、渋谷駅から始発の東急バス『下馬一丁目循環』に乗り、どこで降りても220円払うのが癪なのでやや長い時間乗ってバス停『東山一丁目』で降りるのがおすすめです。そこで降りて通りの反対に見えるドン・キホーテさんの真裏です。