マクドナルドに限定的な不振の理由とは?

前回の続きです。さて、マクドナルドは、2002年に当期純利益が赤字となりました。

外食産業の市場規模が1997年のピークを境に減少に転ずる中、外食産業にとって1990年代後半に起こったことといえば、予想しがたく、事前に対策を立てにくい事柄が目立ちました。阪神大震災という未曽有の災害、O157による食中毒問題、狂牛病、鳥インフルエンザ問題などです。経済全般でもデフレが進行し、価格競争が加速しました。

こうした外的環境に関する要因は業界全体に影響を与えるものであり、特定の企業である“マクドナルド”が赤字になった原因として考えるには不十分です。マクドナルド不振の理由に切り込むには、よりマクドナルドに限定的な内容を考える必要があります。

前回も触れましたが、2000年当時はコンビニおにぎりという外食産業以外の業態による商品が競合関係にあたるようになりました。それ以外で当時のマクドナルドにとって手痛い環境変化は何であったか?

“手頃な外食”新興勢力の勃興で店舗数が稼げなくなった

それは一言でいうと、“手ごろな価格で外食サービスを提供する新興勢力が勃興し、それらが積極出店により急成長した”ということです。

現在では当たり前の存在となった企業が、2000年当時はまだ導入期から成長期に移行しつつあった時期でした。牛丼、焼き肉、カフェ、うどん、お好み焼き、中華そば、回転寿司、居酒屋・・・を提供する企業が、都心や郊外における出店機会をものにして市場プレゼンスを高めることに成功しました。

それにより、マクドナルドは店舗数を稼げなくなってしまったのです。

出店数が稼げないとは、つまり、売上高を成長させることが困難となることを意味しますし、競合が増えれば顧客が外食をする際のマクドナルドの利用機会の一部が他社へ流れるのは必至です。

利益率の高い商品に新たな競合が台頭

少し視点を変えて、商品の視点からも、日本マクドナルドが不振に陥った理由を思い起こしてみましょう。

企業の収益性が低下するということの短期的な理由として、利益率が高い“何か”が売れなくなった、と考えることは意義深いことと思われます。

当時のマクドナルドにとって利益率の高い商品、それは“コーヒー”でした。そのコーヒーが、2000年当時から、うまく売れなくなったのです。

これも、マクドナルドのコーヒーがまずくなった、消費者の嗜好に合わなくなったなどと考えるのではなく、消費者が新たな選択肢を得たと考えるべきでしょう。その“新たな選択肢”とは?

これも、今では当たり前の存在となった企業ですが、当時店舗網を急拡大していた、ドトールコーヒー、スターバックス、タリーズなどのコーヒーショップチェーンが該当します。

マクドナルドと立地・物件面でも競合しやすく、マクドナルドの出店機会を奪ったプレーヤーだと言って良いと思われます。

つまり、コーヒーショップチェーンは、マクドナルドの店舗利益と新規出店の機会の両方に打撃を与えた存在と捉えることができます。

そうした環境変化に対して、2000年当時のマクドナルドは、“プレミアムコーヒーメニュー”の導入拡大を図ります。(しかしその一方で、株式の店頭公開を2002年に延期する旨を発表しており、このマイナスイメージを払拭するかのように“環境対策”を本格化することを打ち出しています。)

ここでも、マクドナルドが飽きられた、消費者のニーズに合わなくなった云々、という論調には疑問が生じます。続きは明日のブログで。