再上陸ブランドを日本で定着させるのはとても大変

ホノルルコーヒー』が再上陸するということが商業施設新聞ほかで報じられています。再上陸といわれる理由は、かつてフジオフードシステムが運営していましたが、撤退したためです。

2012年4月6日付の日経MJに掲載されたホノルルコーヒー事業展開についての記事によりますと、フジオフードはホノルルコーヒーの展開を開始し、5年で100店以上も視野に入れているとのことでしたが、その後、10年弱が経った2022年1月、全13店舗を閉店しました。(参考記事:ホノルルコーヒーが日本から完全撤退!惜しむ声続々

2012年のホノルルコーヒー以外にも、毎年のように新しい屋号のテナント企業が一号店を出店したり、出店を再開したりしますが、それらのうち日本国内で順調に店舗数を増やし、知名度を上げ、消費者の選択肢の一つとして定着したものはごくわずかしかありません。そして、今回のホノルルコーヒーの再上陸も、同じ結果に終わるように思えてなりません。

ここではホノルルコーヒーの再上陸に対して批判的なことを言うつもりはありません。日本国内で成長してほしいという期待を込めて、展開を開始する前に、そう思う理由を書いてみたいと思います。

コーヒーショップの出店となると、さらに厳しい

ホノルルコーヒーは、ハワイで11店舗、グアムで2店舗、カナダ・バンクーバーで2店舗ということで、残念ながらまだコーヒー市場での存在感は弱く、知名度も低いと言えます。世界規模で店舗を増やしているというニュースをきいたことがありません。

一度撤退した際に惜しむ声はあったとのことですが、その後に待望感のようなものを強く抱く消費者が日本にどのくらいいるのかと考えると、それほど多いとは考えにくいものです。こうした点が弱いと、フラッグシップ店を出店したとしても、その情報のインパクトは弱いもので終わり、その後の出店にも悪影響を及ぼしかねません。

ハワイの本社からの出店のプレッシャーがどのくらいなのかも気になります。日本国内での総店舗数、それを何年で達成するか、本当にできるのか、という本社の縛りや圧力が弱い場合、日本国内での出店は“のんびりしたもの”になりがちです。店舗数が多い有名企業は、こうしたプレッシャーが強烈だった時期を経ていると言って良いです。

また、コーヒー市場の出店は大変厳しいものです。店舗数で業界3位か4位のコーヒーチェーンの店舗開発担当者でさえ「“スタバ一強”で、スタバさんが断った情報しかうち(自社)には回ってこない・・・」とぼやいていたのを思い出します。

ホノルルコーヒーが、再上陸を成功させるために考えるべきことは?

今回は株式会社エストゥルースという不動産業の会社による参入であるとのことで、以下余計なお世話ですが、追加します。

 「2024年秋頃、東京エリアにフラッグシップ店をオープン予定」で再上陸とのことですが、この文言だけでも、“常夏のハワイの会社なのになぜ秋なのか?””フラッグシップ店=一号店と考えていないか?””東京エリアの範囲をどのあたりまでであると考えているか?”など、質問したいことが満載です。

どういう場所にホノルルコーヒーの店舗は存在するべきかについて、ハワイ・グアム・カナダで店舗数が合わせて20もないなら、日本での運営・多店舗化に携わる方々は当然全ての店舗を訪店し、そのイメージを作るために熱い議論を行っている、と信じたいですが実際はどうでしょうか?

競合するコーヒーチェーンが出店するようなタイプの立地で、ホノルルコーヒーがかつて勝負できていた場所はどこだったのかについても、かつて日本国内で出店した前例があるわけですから、調査は可能なはずです。

不動産業のため自社で物件はお持ちなのかもしれません。しかし、手持ちの物件の中から良さそうなところに出店し、自称フラッグシップ店で終わってしまわないか、気がかりです。一号店を出店したのちも出店を継続するテナントの多くは、一号店の場所に強いこだわりを持ちます。そして広域から集客し、行列を作ります。一号店にはそのような立地を選ぶことが必要です。

さらに、一号店を出店後の出店計画は立てられているか?最終的に何店舗を出店するつもりかによって、出店の仕方は変わってきます。出店計画は店舗の出店だけでなく、従業員の採用や物流などにも関連します。1号店開業前から、5店舗程度までの出店候補地が想定され、出店の目途が立っているか?など、先んじて計画すべきことがあります。

仮に出店計画がない場合、出店は場当たり的なものとなり、すぐに出店できるところに出店したという印象のものになりがちです。その結果、東京エリアの中でも話題性の乏しい地域や区画、更には東京エリアから遠く離れた商業施設などに出店してしまい、追加出店しても売上が伸びない、しかし、固定的なコストは増えるという状況に陥り、更なる出店という考えが起こらなくなり、慢性的に赤字状態が続き、そのうちに不採算店舗を閉店し始め、結局は全店舗閉店、撤退ということになる可能性が高まります。

このような“負の連鎖”は非常に吸引力が強く、簡単に陥ってしまうもので、前例も枚挙にいとまがありません。最大時の店舗数は一桁台、定着せずに5年以内に再度撤退、というようなことにならないことを切に祈ります。

幸い、まだホノルルコーヒーは日本に店舗が1店舗もありません。これはとても価値があることです。普通にコーヒーを出す店として戦うのでは厳しい環境において、一貫性のあるイメージを与えられるような“面白い出店”を期待します。

例えば、混雑しているスターバックスの店舗の横に必ず出店する、常夏のハワイの雰囲気を出せる立地・区画を主体的にピンポイントで選定して確実にそこに出店する、などを通じて、“こういうところにはホノルルコーヒーが必ずある”というイメージを消費者の頭に構築するような出店です。

ホノルルコーヒーの再上陸が、台風のように一過性のもので消えてしまわずに、今度こそ日本市場に定着することを期待して、見守っていきたいと思います。