前回の記事では、テスラのような外資系・高価格帯ブランドが日本で展開する際の「あるべき4段階のプロセス」についてお話ししました。今回はその続編として、実際のテスラの出店状況を、世界首位を争うBYDとの比較から検証してみたいと思います。

勢いを増す中国勢、BYDの出店スピード

1月28日のテスラ決算発表では、最終利益が前年同期比61%減という衝撃的なニュースがありました。EV販売の低迷が報じられる中、各地でシェアを奪っているのが中国勢、その筆頭がBYDです。

BYDの日本国内における店舗網を確認してみると、そのスピード感に驚かされます。

  • 店舗数: 2026年1月末時点で56店舗。準備中を含めると約70店舗に達する見込みです。
  • 展開エリア: すでに38都道府県に進出。わずか2年前後でこれだけのネットワークを築いたのは驚異的と言わざるを得ません。

ただ、店舗開発の視点で見ると、50店舗台の段階で38都道府県という広がりは、少し「広げすぎ」な印象も受けます。

テスラの現状:31店舗に潜む課題

対するテスラは現在、日本国内に31店舗を展開しています。BYDの実質的な店舗数(準備中含む)と比較すると、2倍以上の差をつけられているのが現状です。

テスラの展開状況を精査すると、いくつかの懸念点が見えてきました。

  1. 都道府県別の偏り: 31店舗で18都道府県に出店していますが、これも初期段階としては広域に分散しすぎている感があります。
  2. 東京でのプレゼンス不足: 高級ブランドとして最も重要な東京での店舗数は、BYDが11店舗に対し、テスラはわずか3店舗。これでは首都圏での認知や「顔出し」が十分とは言えません。

「商業施設」への偏りが招く知名度の限界

テスラの出店におけるもう一つの特徴が、大型商業施設内への出店が多いことです。 商業施設は集客力がある一方で、その施設に来る客層にターゲットが限定されてしまうという側面があります。

「最近テスラをよく見かけるね」という自然な認知(プレゼンス)を高めるためには、視認性の良いロードサイドの路面店を、主要な動線上にバランスよく配置することが不可欠です。

今後の提言:倍増計画でどこを攻めるべきか

テスラは今後、国内店舗数を倍増させる計画を立てているようです。そこで私ならどう展開するか、戦略を整理してみます。

  • 市場規模の大きい都市への集中: 未出店の県へ広げるよりも、まずは首都圏、とりわけ東京都内や大都市圏のパーセンテージを上げるべきです。
  • 「外資系高級ブランド」の定石: メルセデス・ベンツのような著名な外資系ブランドは、店舗の半分以上を首都圏に集中させています。市場の大きい場所で確実に「見かける頻度」を上げることが、信頼感に繋がります。
  • 立地の厳選: 単に数を増やすのではなく、主要なロードサイドを厳選し、ブランドイメージを体現する拠点を作るべきです。

テスラが今後、日本で「当たり前のように存在するブランド」へと成長できるのか。その鍵は、この店舗倍増計画において、どれだけ戦略的に「市場の大きい場所」を攻めきれるかにかかっています。

引き続き、この動きに注目していきたいと思います。