「商圏(しょうけん)」という言葉を聞いて、何をイメージしますか? 地図上の店舗を中心に、コンパスで描いたような「半径◯kmの円」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実際のところは、商圏は円形ではありませんし、一度決まったら変わらないものでもありません。
本記事では、多くの人が陥りがちな「商圏分析の落とし穴」と、実務で使える「正しい商圏の定義」について解説します。
1. 商圏の正しい定義とは?
一般的に商圏とは「お客様が来店する範囲」と曖昧に定義されがちですが、店舗開発の実務ではもっと厳密に定義する必要があります。
私が提唱する定義はこうです。 「商圏とは、顧客が来店する直前にいた場所の集まりである」
少し難しい言葉で言うと、「行き先(Destination)」の反対語である「来し方(Origin)」の集積が商圏です。 自宅から来たのか? 職場から来たのか? それとも駅の改札から直行したのか? 「直前にいた場所」こそが、その店舗にとっての真の商圏(ソース)なのです。
2. アンケート調査の「あるある」失敗例
商圏を知るために、お客様にアンケートをとることがあります。ここで多くの担当者が失敗します。
× ダメな質問:「今日はどこから来ましたか?」 お客様の回答:「(とりあえず)自宅からです」
これでは実態が見えません。なぜなら、自宅を出て電車に乗り、駅前の書店に寄ってからあなたの店に来た場合、直前の場所は「自宅」ではなく「書店」や「駅」だからです。
○ 正しい質問:「ここに来る直前はどこにいましたか?」 こう聞くことで初めて、「駅利用者が流れてきているのか」「近所の住民が直接来ているのか」という、来店動機のリアルな構造が見えてきます。
3. やってはいけない「2つの思い込み」
商圏分析において、避けるべき2つの落とし穴があります。
① 「商圏は円形である」という思い込み 商圏の形は、道路の付き方、川や線路などの地形、競合店の配置によって歪になります。 「半径500m」と機械的に円で括ってしまうと、実際には踏切があって分断されているようなエリアまで商圏に含めてしまい、売上予測を外す原因になります。
② 「商圏は変わらない」という思い込み 商圏は生き物です。特に注意すべきなのは、「商圏は時間とともに狭くなる」という事実です。 開店当初は珍しさで遠くからもお客様が来ますが、次第に日常使いの範囲に落ち着きます。また、近くに競合店ができれば、そちら側の商圏は削り取られます。 「一度調べたから大丈夫」と安心していると、気づいた時には商圏が半分になっていた、という事態になりかねません。
正しい商圏分析は、精度の高い売上予測への第一歩です。 「なんとなく円を描いて終わり」にするのではなく、「お客様は直前にどこにいたのか?」という視点を持つだけで、出店戦略の解像度が上がります。
さらに詳しい解説は、以下の動画でもお話ししています。ぜひ合わせてご覧ください。
▼動画で学ぶ:店舗開発実務講座#5