「そろそろショッピングセンターに出店したい」 「駅ビルなら集客は確実だろう」
多店舗展開を進める中で、路面店から商業施設(インショップ)への出店を検討する企業は多いでしょう。 しかし、「路面店と同じ感覚」で商業施設に出店しようとすると、痛い目を見ることになります。
商業施設への出店は、路面店とは全く異なる「ルール」と「力学」で動いています。 今回は、店舗開発担当者が知っておくべき、商業施設出店の「決定的な違い」と「交渉のポイント」について、実務の視点から解説します。
1. そもそも「商業施設」とは?
商業施設と聞いて、何を思い浮かべますか? 大型ショッピングモールや百貨店だけではありません。「集客力のある施設に、商業機能が付加された場所」すべてが商業施設です。
- 交通施設: 駅ビル、空港、サービスエリア、道の駅
- 複合ビル: オフィスビルやタワーマンションの下層階、ホテル併設の商業ゾーン
- 公共・観光施設: 病院、公園、動物園、美術館、神社仏閣の参道など
- 物流施設: 近年は、従業員向けのカフェや売店を併設する物流倉庫も増えている
これら全てが「施設内店舗(インショップ)」の対象となります。路面店とは「それ以外(道路沿い)」の店舗を指します。
2. 路面店と商業施設の「決定的な3つの違い」
では、実務上は何が違うのでしょうか? 大きく3つのポイントがあります。
① 貸主(オーナー)が違う
- 路面店: 個人オーナーが多く、交渉の相手は不動産仲介業者がメインです。
- 商業施設: 運営企業(デベロッパー)が相手です。交渉相手は「リーシング担当者」となり、BtoB(企業対企業)のビジネス色が強くなります。
② 情報ルートが違う
路面店の情報は街の不動産屋から出てきますが、商業施設の空き区画情報は表に出ません。 デベロッパーのリーシング部門に直接アプローチし、「出店したい」と手を挙げなければ、情報は一生入ってきません。
③ 決定権の所在が違う
これが最も重要です。 路面店なら「家賃を払えば借りられる」ことが多いですが、商業施設はそうはいきません。「施設のコンセプトに合うか?」「区画のバランスは良いか?」という施設側の意向が最優先されます。 たとえ賃料を高く提示しても、施設のブランドイメージに合わなければ断られる。それが商業施設の常識です。
3. 担当者が知っておくべき「交渉術」
商業施設への出店を成功させるためには、以下のマインドセットが必要です。
「出店させてください」だけでは通じない
「うちはこんなに良い店です」とアピールするだけでは不十分です。相手(デベロッパー)は、「この区画にはカフェが欲しい」「30代女性向けの雑貨店が足りない」といったパズルを持っています。
交渉のゴールは「パートナー」になること
「空いている場所を借りる」のではなく、「その施設の価値を高めるパートナーとして参画する」という姿勢を見せることが重要です。 「私たちの店が入れば、施設全体の集客にどう貢献できるか」 この視点を持って交渉に臨めるかどうかが、出店の成否を分けます。
商業施設への出店は、路面店とは全く異なる「作法」が求められます。 しかし、一度信頼関係を築ければ、集客力のある一等地に店を構えるチャンスが広がります。 まずは、出店したい施設の運営会社や担当者を調べ、直接アポイントを取ることから始めてみましょう。
さらに詳しい解説は、以下の動画でもお話ししています。ぜひ合わせてご覧ください。
▼動画で学ぶ:店舗開発実務講座#34