原宿・表参道に並ぶ“露店”を“一発屋”で終わらせないためには?
この話は、これまで書いてきた記事よりもちょっと上位レベルの話になります。「国内市場でどう展開するべきか」という出店戦略論に関するものです。
さて、縁日の日に神社の参道には多くの露店が並びます(因みに大辞林第三版によれば、「露店」とは街頭などでものを売る店、を意味します)。今の原宿・表参道もしかりです。
神社の縁日と異なる点があるとすれば、今の原宿・表参道は、“毎日が縁日”のようなものであるということです。ちなみに、表参道とは明治神宮へのメインの参道です。
そこでは、お客さんが行列をして購入・利用するのがあたかも当然のように営業している“露店”を散見します。メディアはそのような“露店”を「今、最も人気のお店」などと持て囃し、それにより行列が助長され、更には、新たな露店が出現し、また新たな行列ができる…。そんなことが、今の原宿・表参道では繰り返されています。
確かに、路面店で行列を作ることは、日本市場で成功する前提条件です。また、成功の意味は企業によって異なりますし、行列を作る“露店”を運営する企業が何をもって「成功」と考えているかは定かではありません。が、まさか彼らがずっと日本市場で表参道にたった1店しかない“露店”を運営し続け、お客さんが行列する期間をできる限り長くして終わろうとは思っていない・・・と信じたいものです。
本来、お客さんを公共の歩道にまで行列させる、お客さんを長いこと待たせる、というのは、ごく普通の店舗では許されることではありません。行列のできる“露店”では、お客さんがその希少性や目新しさ、話題性に免じて、待たされることについては目をつぶってくれているに過ぎません。そうした状況が永久に続くわけはありません。
彼らが日本市場で表参道にたった1店しかない露店を運営し続けることで希少性は維持できても、目新しさは時間と共に低下しますし、話題性も新たな露店の出現により薄まります。となれば、待たされることを厭わないお客さんの数は当然減少します。
せっかく海外から日本参入し、日本の東京に一号店を開店したのに、“一発屋”で終わってしまうのはあまりにも機会損失が大きい。より多くのお客さんが利用しやすい場所に新規に出店し、その商品・サービスを広く普及させてほしいものです。
行列による人気が売上高の実額で裏付けられた“露店”を、その希少性や目新しさにあやかりたい多くのディベロッパーは商業施設のテナントとして誘致したがることでしょう。こうした今後の出店(シュッテン)機会をどのように組み合わせ、出店(デミセ)を増やしていく「べき」かについて、この「行列の先にあるものは?」シリーズでお話ししたいと思います。
ある国(この場合、日本)で一号店を開業後に、その国内市場で店舗展開するうえで市場計画を立てる際に示唆を与えてくれるような知見は、実はほとんど存在しません。私はこれまでの研究活動において、そこを補完するようなフレームワークを構築してきました。そんな中から、開店時の行列を東京以外の都市でも作り続けるような店舗展開の方法のエッセンスをお話していきたいと思います。