市場プレゼンスとは?

全体として店舗数はあるのだが、店舗数の割には全体的にいまいち売れない、集客力が弱い。こういう話は、よく耳にします。なぜそうなるのか?ということを考えてみたいと思います。

裏をかえすと、これから店舗を増やしていくというときに、店舗数以外にも意識すべきことがあるという話です。今回はその一つとして、「市場プレゼンス」という言葉をご紹介したいと思います。

そもそも市場プレゼンスとはどういう意味か?これは、英語では「Market Presence」といいます。Marketは「市場」。Presenceとは「そこに存在する」というような意味です。辞書で調べると「市場での存在感」などと訳されています。ビジネスではよく使われる言葉で、私自身もよく使う言葉ですが、出店や店舗開発という領域ではあまりメジャーな言葉ではないような気がするので、ご説明したいと思います。

店舗開発領域における市場プレゼンスとは、

自社が属する市場での、自社の屋号・ブランド名の存在感

と言い換えることができます。この「存在感」は、「高い・低い」とか「ある・ない」といった言葉が説明として使われます。

市場プレゼンスが高い状態とは?

市場プレゼンスが高い状態とは、あるブランド名(屋号)が、市場において存在感があることを意味します。認知度や知名度が高い、知っている人が出現する比率が高いということです。それに伴い、店舗の利用経験者、すなわち、そのブランド名の店舗を使ったことがある人や立ち寄ったことがある人も多くなるはずです。

ある市場で「何屋さんといったらどこ?」と聞いたら、パッとその会社のブランド名を思い出してもらえる、思い出す人が多い状態です。これを専門用語では、第一想起(トップ・オブ・マインド)と言います。結果として、そのブランド名の店舗を知っている・使ったことがあるお客様の集団、すなわち「顧客基盤」が強くなります。当然、市場シェアも高くなってくるはずです。

こういう状態を作れると、店舗物件紹介の数も増えます。物件情報の数も増えていくんです。

逆に、市場プレゼンスが低い状態とは?ある屋号が市場での存在感がない。認知度・知名度が低く、それに伴って、利用経験者数も少ない。第一想起どころか、純粋想起されない。そういった状態です。純粋想起されないというのは、思い出して名前を言ってもらえないということです。ですから当然、顧客基盤も脆弱になります。

こういう状態になりますと、やはり、物件紹介も来ないですし、物件情報も集まりませんから、市場プレゼンスの高低は、出店活動にも影響してきます。ですから当然、市場プレゼンスは高くしたいですよね。

市場プレゼンスを高めるには?

では、自社の市場プレゼンスを高めるには、どのように出店していったらいいのでしょうか?目標は、自社の存在感を高めたい。顧客基盤を増やしたい。第一想起で名前が挙がって、店舗物件紹介も入りやすくしたいということです。

そのためにはまず、出店数は増やす必要があります。店舗の数が少ないのと多いのでは、やはり多い方が市場プレゼンスは高まりやすいです

しかしながら、ただ数を追って出店すればいいわけではありません。人口が高齢化して減少していくなどと言われる時代ではなおさらです。出店数の増加に伴って、市場プレゼンスが高まるように出店を進めることが必要です。

認知度・知名度を高めるには、一般消費者が、自社の店舗やロゴマーク、看板、サイン類などの表に出るものを、日常的に、頻繁に見かける状態を作るよう出店する必要があります。ただ、この表現ですと、「一般消費者」をどうとらえるかが難しいと思います。そこで、こんなことを考えてみてください。

自社の市場プレゼンスを高めるには?

この図は、人の行動パターンをあらわしています。人はどこかに居住していると考えます。自宅があって、何らかの行き先があるので、人は移動をします。行き先に行くまでの間や行った後に寄る場所があったり、通過する場所があったり、駅で乗り換えたりして、矢印のような感じで移動していく。そして最終的には、自宅に帰ってくる。

こういう行動パターンをとると考えた場合、市場プレゼンスはどのように高まっていくでしょうか?

例えば、行き先に店舗があるとします。緑色の丸が店舗だと思ってください。行き先の近くや、行き先に店舗がある。よく見ると、通過するところにも店舗がある。またあの緑のロゴがあった、となる。それから、立ち寄る場所にもあの緑のロゴがあった。こんな感じで、移動する経路の中で、繰り返しブランド名・ロゴ・サインを目にしていく。その蓄積により、「寄ってみようかな」という気持ちが高まっていくわけです。

知らないお店がポンと開店した場合、すぐに行く方もいらっしゃると思いますが、多くの方はいきなり最初からは行かないのではないでしょうか。生活圏の中に店が徐々に増えてくることによって、その屋号を知って、覚えて、行ってみようかな?という気持ちが高まっていくのではないでしょうか。

こんな感じで市場プレゼンスは高まっていきます。

市場プレゼンスが高まらない出店とは?

一方、仮に同じ3店舗を開店したとしても、市場プレゼンスが高まらない場合もあります。下の図のような出店をした場合です。

赤い点線で区切りましたが、人々の行動パターンが異なる3つの市場があると思ってください。

同じ3店舗でも、それぞれの市場に、このように1店舗ずつ開けていくような場合です。そして、ここで出店を止めてしまうような場合です。こういう出店のしかたをすると、市場プレゼンスはなかなか高まらない傾向があります。

1店舗開けただけで一般消費者に覚えてもらえるかというと、そういうわけではありません。また、この3つに分かれている市場を、定期的に、毎日循環するように移動している人は、かなり少ないと考えるのが普通です。

市場プレゼンスを高める出店を考えるときは、出店しようとする場所の一般消費者の移動経路を考える必要があります。その移動経路の中における、自社の屋号・ブランド名のプレゼンスを高めるような場所に、徐々に店舗を増やしていくことが必要になります。自社のブランド名やサインの露出をどんどん増やしていくのですが、その地域の消費者の移動経路を考え、その経路の中に少しずつ増やしていくという考え方が必要です。

また、特定の地域に少数の店舗を孤立させない、独りぼっちにさせないことが重要です。店舗を孤立させてしまう可能性がある、1店舗しか出店できないような市場への出店は避けることも、出店判断時には考えていく必要があるわけです。

それから、出店が商業施設に偏ってしまうと、その商業施設に行く人だけがそのブランド名(屋号)を見ることになりますので、その地域全体での市場プレゼンスは高まりにくくなります。ですから、商業施設内テナント出店だけではなく、人々が通過・移動する経路上の路面店もバランスよく配置していく必要があります。

出店する地域におけるエリア戦略をどうしていくかを考えながら出店することが、今後ますます求められるようになるでしょう。

まとめ・エリア戦略の重要性

まとめになりますが、これからの出店判断の考え方です。

出店をする際に、個々の物件の立地の良し悪しだけでなく、自社のブランド名(屋号)の市場プレゼンスが高まるかどうかを同時に考える必要があります。

ですから、そこの立地が良いですとか、未出店の地域であることを理由に出店することがありますが、それだけではなく、そこに出店した後のその地域の出店計画(エリア計画・エリア戦略)を持った出店が、今後はますます必要になるだろうと考えます。

その際にやってはいけないこと、危ないことは、1店舗を離れたところに孤立させることです。その状態を長期間放置させることは、避けた方がよいです。これをやってしまうと、不思議なことに、コンプ(Comparable Sales、対前年比売上)の低下がおこりやすいです。その地域での市場プレゼンスがなかなか高まらず、思うように集客ができず、売上が上がらない。そういう状態を長期間放置すすれば、気が付くと競合店舗が周辺に増える。こういったことが起こりがちです。いいことがないんですね。

孤立させてしまうようなエリアは、出店をやめるといった判断も、今後ますます必要になってくるのではないかというふうに考えます。

今後の出店をするときのご参考になさってください。

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