前回の続きです。「開成教育グループ」(成学社)の2015年11月時点の教室数は298ですが、もし今後、「開成教育グループ」が1000教室を日本国内で展開すると仮定した場合の、各地方に教室数はどのように配分されるべきでしょうか?

表1は、2015年1月1日時点の各地方の住民基本台帳人口とその比率(%)、そして1000教室を人口の比率に応じて各地方に配分した数字を示しています。

これによると、彼らの地盤である近畿地方をカバーする教室数のざっと2倍弱の教室を関東地方に配分する必要があることが分かります。

開成教育グループ全国展開店舗数

実際には、開成教育グループが一年間に東京都に開業する教室数は一桁台が続いており、その結果、5年間で15教室を開業しているに過ぎないこと、そして、香川県・徳島県といった市場へも新たに展開していることを鑑みると、開成教育グループが市場規模に見合うだけの教室展開を関東地方で本気で進めようとしているのかについては疑問符がつきます。

学習塾業界の場合、迂闊に新たな地理的市場へ教室網を展開し、その市場への追加出店が遅れると、上場企業のほか非上場のローカル企業、個人塾も含めた零細企業などとの激しい競争にさらされ、思うように学生数が伸びないという状況に陥りやすいものです。新たに展開した市場での知名度が低い企業の場合は猶更だと思われます。

そうした状況を防ぐには、東京都内に進出後、単に“継続的に追加出店をする”だけでは不十分であり、より市場規模の大きい市場で店舗網を展開する場合には、単に追加出店をするだけでなく、“全社的な新規出店数”に占める“その市場へ追加出店する店舗数”の比率を上げること、言い換えれば、その市場での“出店速度(スピード)”を上げることが必要です。

首都圏でも、関西に次ぐ新たなドミナント形成を短期間で進める必要があり、その計画が立っていないのであれば、迂闊に東京へ進出するのは避けた方が良いのかもしれません。

“関東地方への進出”が開成教育グループの将来計画においてにどのような意味を持つのかを、現時点の出店状況からは読み取ることはできません。

2011年の東京への進出時と、東京での店舗数の成長が芳しくない2015年を比較すると、経常利益率が8.65%から4.51%に低下しており、東京への追加出店を優先するには厳しい状況にあるように思われます。

開成教育グループが関東地方での教室展開を加速するのかどうか、引き続き追跡してみたいと思います。

これで、「サービス企業は店舗網をどう拡大すべきか【学習塾・予備校業界ケーススタディー】第一回」から連載してきた、学習塾・予備校業界の店舗展開に関するケーススタディーは、ひとまずおしまいにしたいと思います。お付き合いいただき、ありがとうございました。