銀座最大級の商業施設「GINZA SIX」で大量閉店、というニュースが報じられました(「銀座最大級の商業施設「GINZA SIX」で大量閉店 1月17日に14店舗が一斉撤退」ITmediaビジネスONLINE)。テナント企業の店舗開発を担う立場より、このニュースから今後の教訓とすべきことは何かを考えてみたいと思います。

このご時世、“大量閉店”に関するニュースはとかくコロナ禍、緊急事態宣言などを原因にして片付けられがちです。しかし、そこにはコロナ以前から生じていた“ある傾向”も反映していると考えるべきです。

“ある傾向”とは、“大型商業施設は大型だから安心とは言えなくなった”ということです。

かつて、高度経済成長期やバブル経済といった、経済が拡大基調、イケイケの時代がありました。商業施設の大型化はこのころから始まり、恐らくバブル期に主に計画された大型商業施設が、バブル経済が終わった後に開業しました。商業施設の大型化で集客するという考え方はその後も続き、デフレ経済・人口減少の時代になっても大型商業施設の建設やリニューアルが進みました。

これは“大型”であることが目新しいことではなくなったことを意味します。類似したものの供給が増えれば、基本的な機能は備わっていて当たり前と捉えられるようになるものです。

そこで、大型商業施設はサイズ以外に“目新しさ”を強調するようになり、新規性がある、集客力があるなどの魅力的なテナントを誘致することを進めました。この傾向は今も続いていると言えます。そのような流れの中で報じられたのが「GINZA SIX」で大量閉店というニュースでした。

銀座の中心地は銀座四丁目交差点付近です。角に和光、三越などがあります。高度経済成長期、バブル期などには、今とは比べ物にならないくらい大勢の人々が集まっていたようです。商業施設への需要が供給を(恐らく大幅に)上回っていたため、大型商業施設である百貨店の進出が中心から離れた場所に近接するように進みました。拡大基調の時代、大型商業施設がまだ珍しかった時代、人々は中心地が人であふれていたため、そこから離れた地域まで移動したのでしょう。

しかし、そうした時代が終わると、銀座に来た人々は中心地から離れた場所にわざわざ行かなくなるようになる。さらには中心地に位置する大型商業施設もテコ入れを図る。こうして、かつては集客力を誇っていた大型商業施設とはいえ、中心地から距離が離れたところ、言い換えれば、立地の利便性が劣るところは集客が苦しくなった、と考えることができます。この点は、銀座を他のエリアに置き換えても同様なことが言えると考えるべきなのかもしれません。

中長期的な視点で、今後、大型商業施設への出店を検討する場合、その施設のあるエリアの商業面の発展の経緯、大型商業施設そのものの立地上の利便性、という観点が必要であると思われます。今のように新規出店を前向きに考えにくい時期には、野球の打者でいう“選球眼”のようなものを養い、将来に備えたいものです。

※5年前と古くなった講演録ですが、当ブログ関連記事はこちら「大型商業施設のこれまでとこれから」「まとめ記事「大型だから安全か?を見極める必要性」からお読みいただけます。