消費者調査『商業施設利用実態調査2016』の結果より、首都圏の新しい商業施設で「顧客定着度」が高かった順に調査対象商業施設を並べてみましょう。

分析のフレームワークとしてRFM分析を部分的に用いました。RFM分析とは、自社の優良顧客をリーセンシー(Recency)、フリークエンシー(Frequency)、マネタリー(Monetary)という観点で定量的に識別するマーケティング手法です。リーセンシーとは「直近で利用したのはいつか」、フリークエンシーとは「利用頻度」、そしてマネタリーとは「いくら支払ったか」、をそれぞれ表します。本リサーチでは、このうちフリークエンシーとリーセンシーの組み合わせで「顧客定着度」を分析しました。

利用頻度が高く、かつ、前回利用した時期が最近に近ければ近いほど、日常的な買い物の場として定着している商業施設であり、逆に、利用頻度が低く、かつ、前回利用した時期が最近より遠ければ遠いほど、開業後に一度訪れたきりリピートされておらず、日常的な買い物の場として定着していないか、非日常的に利用されている商業施設と考え、各商業施設を分類しました。

『商業施設利用実態調査2016』調査対象商業施設(開業日順)
 三井アウトレットパーク木更津   ダイバーシティ東京 プラザ   渋谷ヒカリエ   東京ソラマチ東京スカイツリータウン   ビックロ   KITTE   酒々井プレミアム・アウトレット   MARK IS みなとみらい   イオンモール幕張新都心   イケア立川   ららテラス武蔵小杉   キラリナ京王吉祥寺   大宮ラクーン   イオンモール木更津   グランツリー武蔵小杉   原宿ALTA   ららぽーと富士見   二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット   コクーンシティ   ららぽーと海老名   渋谷モディ   ららぽーと立川立飛
(調査年: 2014/2015/2016 ●2015/2016 2016)

新しい大型商業施設では、開業当初の話題作りに成功し、グランドオープンをめがけた顧客が殺到し、その長い行列や混雑する店内の様子がメディアを通じて大々的に報道されることも少なくありません。しかし、そうした大型商業施設が、開業後のいわゆる「オープン景気」が一巡した後に、どの程度利用者とのリレーションシップを構築できているか、利用者の日常的な購買行動の中に定着しているかについては、十分な検証がなされていません。

そこで本リサーチでは、「定着した顧客」以外の顧客も含めた利用経験者のフリークエンシーとリーセンシーの高低の組み合わせにより、調査対象商業施設の「顧客定着度」を、顧客の目線から4グループに分類しました。

顧客定着度は、「日常的に利用」されている『コクーンシティ』から、「非日常的に利用」されている『東京ソラマチ東京スカイツリータウン』まで開きがありました。

開業1周年を迎えたばかりの『コクーンシティ』は、フリークエンシー・リーセンシーともに調査対象商業施設中最も高く、なおかつ顧客ボリュームも確保できており、利用経験者の量と高い優良顧客比率の両方を獲得するという偉業を達成しています。

今年の調査で顧客定着率が大きく下がったのは、顧客ボリュームは伸びているものの、昨年よりもフリークエンシー・リーセンシーが共に下がった『渋谷ヒカリエ』でした。東急線沿線をはじめ渋谷駅ユーザーが利用しやすい他の大型商業施設の開発が進み、顧客の買い物機会が分散する一方で、新しい利用経験者が未だライトユーザーにとどまっていることが原因として考えられます。

新しい首都圏大型商業施設の「顧客定着度」ランキング2016【1都3県】

『商業施設利用実態調査2016』調査対象商業施設~顧客定着度が高かった順~

<顧客が「日常的に利用する」商業施設>グループ

  • 【1位】コクーンシティ
  • 【2位】二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット
  • 【3位】大宮ラクーン
  • 【4位】ららテラス武蔵小杉

<顧客が「以前よく行ったが最近あまり行かない」商業施設>グループ

  • 【5位】MARK IS みなとみらい
  • 【6位】キラリナ京王吉祥寺
  • 【7位】イオンモール木更津
  • 【8位】ダイバーシティ東京 プラザ
  • 【9位】イオンモール幕張新都心
  • 【10位】酒々井プレミアム・アウトレット

<顧客が「最近行ったが、よくは行かない」商業施設>グループ

  • 【11位】ららぽーと富士見
  • 【12位】原宿ALTA
  • 【13位】渋谷モディ
  • 【14位】グランツリー武蔵小杉
  • 【15位】ららぽーと立川立飛
  • 【16位】ららぽーと海老名

<顧客が「非日常的に利用する」商業施設>グループ

  • 【17位】ビックロ
  • 【18位】渋谷ヒカリエ
  • 【19位】KITTE
  • 【20位】三井アウトレットパーク木更津
  • 【21位】イケア立川
  • 【22位】東京ソラマチ東京スカイツリータウン

以上です。ご自身のイメージと比べて、いかがでしたか?

もう少しランキング形式で続けてみましょう。

『商業施設利用実態調査2016』は、首都圏で新たに開業した商業施設の利用状況を、同じ物差しで、毎年同じ調査設計で、横断的かつ動態的に調査している点に特色があります。その結果を徹底的に比較することによって、
● 開業当初の“オープン景気”が終わったのち、どれだけのボリュームの顧客がその施設を使い続け、定着しているのか?開業当初に一度利用したきりで来なくなってしまった人はどのぐらいいるのか?
● 一度利用した顧客のうち、再びその施設を利用したいと思う人の割合が高い、ないしは低い施設はどこか?
● 開業後半年以上が経過し、商圏や顧客層、彼らの利用行動にどのような変化が生じているのか?
などの実態を、相対的に明らかにすることを目的としました。

そこで、次は、「開業当初に1度利用したきりで来なくなった顧客の比率が高い順」商業施設ランキングをお届けします。続きは次回のブログで。