お世話になります。福徳社の小泉です。今日は、企業・ブランドロゴの変更に関して思うこと、です。

私は30年ほどいろいろなブランドでマーケティングのお仕事に関わってきましたが、ロゴ変更に立ち会うことはレアな体験です。最初はアップルでした。私が入社した頃はフルカラー+特色のレインボーロゴで、名刺1枚刷るのに100円かかっていましたが、単色ロゴに変更されました。いろいろ後付けの評価はされているものの、当時の会社の経営状況に照らすと、最大の理由はコスト削減だったと思います。本社の看板から販促物や製品の同梱物まで膨大な資材を一気に変更した、全社的な、大変なプロジェクトでした。

初めてロゴ変更に興味を持ったのは高校生のときです。父が伊藤忠商事の海外営業で、物心ついたころから実家には伊藤忠ロゴグッズがあふれていました。見慣れたシンプルなCIロゴから今のロゴに変更になったとき、父は「会社はこのロゴを作るのに〇億も使ったんだ」といたくおかんむりでした。社員にはあまり評判が良くなかったようです。なぜロゴを変えるんだろう、なぜそんなにお金がかかるんだろう/かけるんだろう、と疑問に思ったことを覚えています。今戻れたら、ロゴは余程の理由がなければ変えてはいけないのが原則だけど、どうしても必要で、一定の規模の会社がちゃんとやろうとしたら、億単位でお金がかかるのは当たり前。当時そこまでやったから、その後に統一されたイメージが定着しているんだよ。と説明するかもしれません。

ロゴのデザインを変えるという決断が、ビジネスにとってどれほど重大なものなのか、失敗を避けるためにはどれほどの準備や労力、費用がかかることなのか?マーケティングのお仕事をされている方には「何を今更」と言われてしまいそうですが、意外と理解されていないようにも思います。

ロゴはそのままで全然いいとお客さまは思っているのに、むしろ変わったら混乱するからやめてほしいのに、会社の側がデザインに飽きてしまったり、目先を変えるネタが欲しかったりで、安易にロゴの変更に手を出してしまい、失敗したケースは過去にもたくさんあります。

最近「やってしまったな」と思ったのは、創立30周年を記念して5月3日に発表された、法律系資格予備校伊藤塾のロゴ変更です。私はたまたま朝日新聞の全面広告を見かけ、一見では伊藤塾の広告と分かりませんでしたが、チラ見で何かが引っかかり、よく見直して気づきました。

伊藤塾の新ロゴは、おしゃれなのですが、ロゴタイプやフォントも含めて変えすぎだと思います。塾生や法学徒が慣れ親しんだ四角いロゴとの連続性がなく、長年かけて築かれた知覚→記憶→ブランド想起のリンクが断たれるし、ブランドの独自性も失われ、色々ともったいないと思います。

新ロゴ発表から3か月経つのに、まだ旧ロゴが多く使用されていることも気になります。もしどうしてもやると決めたなら、一気に揃えるべきです。

ロゴデザインの欠点(古臭さ、読みづらさ、使いづらさなど)が放置できないほど致命的な場合はどうすれば良いのでしょうか。解決方法の一つとしては、一般人目線では一見変わったと分からないギリギリ程度の手直しから、ブランドを知覚できなくなる人の発生を防ぎつつ、段階をふんで修正していく方法をとることがあります。これですと、新旧ロゴが混ざる期間がやむなく発生してしまう場合の問題も小さくて済みます。

リブランディングがほとんどの場合失敗に終わるのは、せっかく築かれたブランド資産をリセットしてしまうからです。ブランド自ら消費者に見つけづらいようにしてしまうのです。そして、代替となる競合ブランドがある場合、消費者の目線はそちらに行ってしまいます。