ワークマンの何がどう変わってきたか?

ワークマンの客離れが報じられています(ワークマン業績予想を下方修正、「職人離れ」が指摘される理由 他)。

実は、2023年9月1日にワークマンの新業態Workman Colors1号店が銀座4丁目と5丁目の間に位置するイグジットメルサ5Fに出店して以降、そこはかとなく危険な予感がしており、以来、その正体が何なのか?を出店の観点から示してみたく、最近のワークマンに何が起こっているのか?を追っていました。

こうしたニュースが報じられる前に書きあげなければと思っていたのですが、報じられるのが予想以上に早く、急遽内容の一部を共有させていただきます。

ある会社の状況を把握するには、少なくとも5年前からの情報を遡る必要があると思います。情報源は比較可能で、信ぴょう性の高いものが望ましいです。以上を満たすものとして最適なものの一つに、有価証券報告書があります。

ワークマンの出店・店舗展開の考え方・方針がどう変化してきたかを把握するため、株式会社ワークマンの有価証券報告書(2019年~2023年)で関連する部分を抜き出してまとめてみます。

有価証券報告書にみる、ワークマンが“目指すもの”の変遷

5年前の有価証券報告書には、下記の記載があります。

ワーキングウェア・作業用品の専門店「ワークマン」はナショナルチェーンを目指しており、(出店政策においては)当社独自の出店基準で候補地を選定し、ベスト立地にローコストの出店を実施、各地域でドミナントエリアの構築に取り組みます。同時に、不採算店舗のクローズとスクラップアンドビルドによる既存店の活性化を進め、利益率の向上を図ります

2019年3月期 有価証券報告書 P5

5年前は(今となっては“古き良き“)ワークマンをナショナルチェーンにすることを目指していたものの、不採算店舗があり利益率が低下していたことがうかがえます。

その翌年は、目指すものが変化し、『ワークマンプラス』が新たに登場します。

「機能と価格に新基準」を実現するために、客層拡大とデータ経営を軸に持続的成長を目指しており、(店舗展開は)当社独自の出店基準で候補地を選定し、ベスト立地にローコストの出店を実施、各地域でドミナントエリアの構築に取り組みます。客層拡大を目的としたワークマンプラスの出店を強化、併せて既存店舗をワークマンプラスへ改装転換し、一般のお客様にも入りやすく、親しんでいただける店舗づくりに取り組み、新規顧客の獲得を目指します。

2020年3月期 有価証券報告書 P5

4年前からワークマンプラスの出店強化により客層拡大に動き出したことが分かります。

利益率が低下していたことから、不採算店舗をワークマンプラスに転換することで、これまでにないタイプの顧客の来店を促し始めたことが分かります。不採算の理由は複数考えられますが、ロードサイド店の場合は敷地面積や駐車場台数、売場面積などが不十分であることが多いのですが、そこを業態転換で新たな客層にアプローチしようとしたことが分かります。

その翌年は、#ワークマン女子が登場しますが、目指すものから「客層拡大」が消えました。

「機能と価格に新基準」を実現するため、データ経営を軸に持続的成長を目指しており、(店舗展開は)当社独自の出店基準で候補地を選定し、ベスト立地にローコストの出店を実施、各地域でドミナントエリアの構築に取り組みます。客層拡大を目的としたワークマンプラス・#ワークマン女子の出店を強化、併せて既存店舗をワークマンプラスへ改装転換し、一般のお客様にも入りやすく、親しんでいただける店舗づくりに取り組み、新規顧客の獲得を目指します。

2021年3月期 有価証券報告書 P5

その翌年は、以下同文でした。

「機能と価格に新基準」を実現するため、データ経営を軸に持続的成長を目指しており、(店舗展開は)当社独自の出店基準で候補地を選定し、ベスト立地にローコストの出店を実施、各地域でドミナントエリアの構築に取り組みます。客層拡大を目的としたワークマンプラス・#ワークマン女子の出店を強化するほか、既存店舗をワークマンプラスへ改装転換し、一般のお客様にも入りやすく、親しんでいただける店舗づくりに取り組み、新規顧客の獲得を目指します。

2022年3月期 有価証券報告書 P5

そして2023年は目指すものから「データ経営」が消え、代わりに「顧客満足度向上の実現」が加わりました。後半は変化なく、ワークマンプラスへの転換と#ワークマン女子の出店強化が継続しています。

客層拡大と顧客満足度向上の実現で持続的成長を目指しており、(店舗展開は)当社独自の出店基準で候補地を選定し、ベスト立地にローコストの出店を実施、各地域でドミナントエリアの構築に取り組みます。客層拡大を目的としたワークマンプラス・#ワークマン女子の出店を強化するほか、既存店舗をワークマンプラスへ改装転換し、一般のお客様にも入りやすく、親しんでいただける店舗づくりに取り組み、新規顧客の獲得を目指します。

2023年3月期 有価証券報告書 P5

目指すことに新たな文言が入れ替わり現れ、新たな屋号が2つも開発され、それらにより不採算店舗は改装転換・新規出店が進み、客層拡大、新規顧客の獲得など、とても積極的、前向きな印象を受けるかもしれません。

しかし、これらをつなぎ合わせると“とても怖いこと”が進行しているように思えてなりません。それが何かをお話ししたいと思います。続きは次回のブログで。