前回の続きです。出店戦略講義第2講では、一度決めたらそう簡単に変えられない立地の選定を誤るとどうなるか、負のスパイラルという話をしました。

学生のモチベーションを上げるために、出店に関する事柄を知らないとどうなってしまうか、という話をし、そうなりたくなかったら勉強してください、という趣旨で話しました。

出店戦略をよく勉強せずに、あなたが立地の選定を誤ってしまうとどうなるか?

  • 立地が良くない店舗は、開業当初はある程度集客できたとしても、数か月して既存店売上高が低下し始めます。
  • あなたは焦り始めます。開業前から莫大な資金(百万円から数千万円)が店舗設備に投下されていて、なるべく早く投資額を回収しなければなりません。また、店舗投資の資金の一部を金融機関等から借り入れている場合、毎月返済をしなければなりません。不動産賃借料は毎月固定的にかかる費用(固定費)で、売上が下がっても、仮にゼロになったとしても、毎月同じ金額を支払わなければなりません。
  • なぜ売れないのだろう?と考えます。
  • そして、商品に魅力が無い、接客サービスに問題がある、店舗が知られていない(認知度が低い、といいます)、価格が高い、などの理由を挙げます。それを受けて、新商品、メニューに導入したり、従業員教育をして接客を強化したり、看板を出したり、チラシをまいたり、タイムサービス、バーゲンセールの実施、などを試みます。これらは全て原価や費用増につながり、従業員への負担が増すものです。
  • それでも、状況は好転しない。そこで、営業時間の延長、更なる割引や値下げ、更なる新商品、メニューの導入・・・を繰り返します。
  • こうして働けども、働けども、思うように売上が伸びず、費用は嵩み、店舗利益が減少し、収益性が低下する悪循環・負のスパイラルに陥ります。
  • 遂に売上高が固定費を下回るようになり廃業を決意するも、店舗の原状回復工事の費用が支払えず、店舗はそのまま。それでも不動産賃借料、借入金の返済債務は容赦なく発生・・・(あとは想像にお任せします)

このようなケースが発生してしまう理由は、これまでの小売・サービス業のマーケティングが、企業が短期的に変えられること、例えば商品や価格、広告宣伝、店内環境、従業員による接客などに関する施策を中心に扱ってきたことにあるといえます。

マーケティングに関連する情報は、立地は所与のものであり、店内に顧客が既にいることが想定されている議論がほとんどです。

既存客への対応が優先されてきたことの表れでしょうが、それよりも重要な経営者の関心ごとは、どうやって顧客を獲得するべきかであり、そこでは立地がより重要な役割を果たします。業績不振の理由を店内の要因に求めても、そもそも店舗のある場所が悪ければ、結局は問題解決できずに終わるのです。

小売・サービス業のマーケティングの知見の現状は、店舗経営者にとって無責任な状態にあるように思います。

立地が店舗の客数と客層を決め、それに応じて店内環境に関わる要素を適合させ、組み合わせていくのが本来の姿です。立地選定と店内環境に関わる要素を別個に決めてはならないのです。

続きは次回のブログで。