“満席で良かった”という話ではなく、“満席でも怖い”というお話

前回に引き続き、『サンマルクカフェ狛江店』を分析します。

事前知識として座席に関しては二つの数字を把握する必要があります。

それは、座席稼働率座席回転数です。

座席稼働率とは、すべての座席の何パーセントが稼働しているか、ここでは、すべての席数に対する、代金を支払ったお客さんに利用されている席数の比率です。極端ですが、2人掛けのテーブルを1人で使用している場合、1席は使用されていますが、もう一席が荷物置に使われていたら、座席の稼働率は50%です。

座席の稼働率が100%、というのはなかなか達成しにくい数字のように思います。一人がけのカウンター席を増やすことや相席を承諾してもらうなどによりカフェ・喫茶店は座席稼働率を高めようとしますが、それでも100%は難しいものです。

次に座席回転数ですが、これは一つの席が一日に延べ何人に利用されたかを意味する数字です。入れ替わり立ち代わり何人がその席を利用したかです。

席はありませんが、立ち食いそば屋は、食事をするスペースは手狭なものの、(座席)稼働率と回転数を上げることによって“客数”を増やしています。ある瞬間、満席なのは喜ばしいことなのですが、それだけではなく“回転”しているかも確認する必要があるのです。

『サンマルクカフェ狛江店』は、一人で座れる席も多く、稼働率は高い印象を受けました。しかし座席が“回転”している様子はなく、店内は静かで動きが感じられませんでした。それは、1人で来店して試験勉強や読書、PCでの作業などに没頭している人が多いためです。後から入店された方(車で1人で来店)で、満席の様子を見た瞬間に帰られた方もいました。

以下は推測ですが、お客さんの大半は周辺住民であり、座席数が136もあるということで、彼らには確実に座れる店と認識されているのでしょう。多少遠くても自転車でわざわざやって来るからには、コーヒーを一杯飲んですぐに帰ろうとは考えないはずです。むしろ朝早く店に行き、好きな席、つまり、作業しやすくて店員の目に入りにくい席、を確保し、申し訳程度に飲み物等を買い、勉強、仕事、読書などの作業に打ち込もうと考えるのではないでしょうか(私ならそう考えます)。わざわざ自転車で来ているので、滞在時間は数時間に及ぶこともざらです。こうなると回転数は非常に低くなります。

仮にですが、136席で稼働率60%、回転数を3.5回とした場合、客数は285.6人。客単価をやや高めの800円とした場合、日販は228,480円です。非常に心配になる数字です。人件費をかけられないのか、店員さんの数も少なく、店内を巡回する機会も減り、自習室化がますます進んでいるようでした。

業態転換などを検討されているのかもしれませんが、引き続きウォッチしてみたいと思います。

この座席稼働率と座席回転数をお金をかけずに社内で調べる方法は?というお話は次回のブログで。