「カニバリゼーション」(通称カニバリ)って何?【その2】の続きです。

カニバリのパターン

カニバリは客観的な方法で、具体的に何%落ちるというところまで予測がなされるべきものです

次に、その方法を述べたいと思います。

既存店と新店が①ともに路面店舗の場合と②ともに商業施設内の店舗の場合とで分けて考えます。

<カニバリのパターン①2店がともに路面店>

具体的な数字を求める前に、カニバリの大きさをランク分けする方法をお話しします。

近くに新店が開いたら「ものすごく影響を受けそう」とか、「あまり無さそうだけどゼロではない」とか、直感的に思うことがありますよね。それをパターン化してみます。

単純化のため、ある市場に路面店舗が1店舗しかなく、新たに路面に2号店を出店するときのカニバリを考えるケースを考えます。

カニバリを考えるときに、チェックすべきことは次の4点です。

①  その市場の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)

②  2つの店舗の間の距離

③  2つの店舗のサイズ

④  2つの店舗の立地

① その市場の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)

市場規模が大きい場合、2号店を出してもカニバリは発生しにくいものです。仮に2号店にお客さんが流れたとしても、市場規模が大きいため既存店は新しいお客さんを獲得しやすいと考えられるためです。だから、新宿、池袋、栄、梅田、天神・・・などの場合には、カニバリは議論にもならないかもしれません。

しかし、各駅停車しか停まらないような駅の場合「2店舗も出して大丈夫か?」という心境になりますよね。そう、その感覚です。市場規模が小さければ小さいほどカニバリは発生しやすい一方、市場規模が大きければ大きいほどカニバリは発生しにくいのです。

② 2つの店舗の間の距離

2つの店舗の間の距離。これは分かりやすいと思います。100メートル離れた新店と1キロメートル離れた新店では影響の仕方が異なります。当然、2店舗の間の距離が近くなればなるほどカニバリは大きくなります

③ 2つの店舗のサイズ

店舗のサイズ(面積)も影響します。面積の大きい店舗と小さい店舗では、お客さんはどちらが利用しやすいですか?当たり前の話ですが、面積の大きい店舗の方です。つまり、1号店よりも面積の大きい2号店を出店すればカニバリは大きくなります

④ 2つの店舗の立地

最後に立地です。1号店より便利な場所に2号店を開ければ影響は大きくなりますが、立地の利便性が1号店と同じ程度かそれ以下の場合のカニバリの影響は小さいと考えられます。つまり、1号店よりも良い立地に2号店を出店すればカニバリは大きくなります

以上の4項目を組み合わせると、カニバリの強度は16ランクに分かれます。

カニバリ強度 市場規模 2店舗間の距離 2号店の方が 2号店の立地が
16 小さい 近い 大きい 1号店以上
15 小さい 近い 大きい 1号店以下
14 小さい 近い 小さい 1号店以上
13 小さい 近い 小さい 1号店以下
12 小さい 遠い 大きい 1号店以上
11 小さい 遠い 大きい 1号店以下
10 小さい 遠い 小さい 1号店以上
9 小さい 遠い 小さい 1号店以下
8 大きい 近い 大きい 1号店以上
7 大きい 近い 大きい 1号店以下
6 大きい 近い 小さい 1号店以上
5 大きい 近い 小さい 1号店以下
4 大きい 遠い 大きい 1号店以上
3 大きい 遠い 大きい 1号店以下
2 大きい 遠い 小さい 1号店以上
1 大きい 遠い 小さい 1号店以下
<カニバリのパターン②2店がともに施設内の店舗>

最近は既存店が駅ビルの中で、新店が新たに開発される商業施設といったケースが増えています。この場合、自社の店舗よりもテナントとして入居する施設間の関係が、カニバリの重要な要因になります。

しかし、基本的な考え方は路面店のケースと同じです。チェックするべきことは次の4点です。

①  その市の市場規模(昼夜間人口、商業販売額など)

②  2つの店舗が入店する施設の間の距離

③  2つの店舗が入店する施設の規模

④  2つの店舗が入店する施設の立地

では、自社のチェーン店で、「カニバリがあったか、なかったか?」はどのようにチェックすればよいのでしょうか。

次回のブログでは、過去にカニバリがあったかどうかをチェックする方法についてお話します。