今回は、エリア戦略の基本でありながら、意外と「なんとなく」で済まされがちな「10万人あたりの店舗数」という指標の具体的な計算方法と、その戦略的な活用法について解説します。
店舗網を拡大していく過程で、避けては通れないのが「エリア戦略」の策定です。特に全国展開を目指すチェーン店ともなれば、出店自治体の数は数百、数千に達します。
「A市にはあと何店舗出せるのか?」
「Bエリアはすでに飽和状態ではないか?」
こうした問いに、勘や経験ではなく、データに基づいた「根拠」を持って答えるために必須となる指標が、今回ご紹介する「10万人あたりの店舗数」です。
1. なぜ「10万人あたりの店舗数」が必要なのか?
店舗数と人口をバラバラに眺めていても、そのエリアの出店状況が適切かどうかは見えてきません 。
例えば、人口20万人の市に1店舗あるのと、人口7万人の市に4店舗あるのでは、どちらが「密度」が高いでしょうか。直感では判断しにくいこうした状況を、共通の尺度(人口10万人あたり)に直すことで、エリア間の「ばらつき」を浮き彫りにするのがこの指標の目的です 。
2. Excelでできる!具体的な計算方法
自治体の数が増えてくると、一つひとつ個別に考えていては時間が足りません 。Excelを使って一括で計算する仕組みを作っておきましょう。
【必要なデータ】
- 既存店の所在地(市区町村レベル)
- 市区町村ごとの店舗数
- 市区町村ごとの人口(政府統計e-Statなどで取得可能)
【計算の公式】
10万人あたりの店舗数 = (市区町村の店舗数 × 100,000) ÷ その自治体の人口
Excelのセルにこの数式を入力し、全ての自治体行にコピーするだけで、立派なエリア分析データが完成します 。
3. 数字から「エリアの課題」を読み解く
計算して出た数字は、まず「平均値」と比較することから始めます 。
- 値が平均より大きい場合: 人口に対して店舗数が多すぎ、既存店同士で売上を食い合う「カニバリ(自社競合)」が起きている可能性があります 。
- 値が平均より小さい場合: 人口に対して店舗が少なく、まだ出店の余地がある、あるいは「攻めきれていない」エリアと言えます 。
例えば、人口20万人の大都市なのにこの数値が極端に低い場合、そこには「本来獲得できるはずの需要」が眠っていることになります 。
4. 戦略への応用:あと何店舗出せるか?
この指標の真の価値は、将来の「目標店舗数」をシミュレーションできる点にあります 。
特定の自治体や全社平均を「目標値」として設定すれば、未出店エリアや既存エリアにおいて、あと何店舗の出店余地があるのかを逆算することができます 。
【目標店舗数の公式】
目標店舗数 = (設定した10万人あたりの目標値 × 自治体の人口) ÷ 100,000
これにより、根拠に基づいた中長期的な出店計画の策定が可能になります 。
まとめ:データで「エリアの健康診断」を
売上が振るわない原因が、店舗のオペレーションにあるのか、それともエリア戦略(過剰出店や未充足)にあるのか。
「10万人あたりの店舗数」を算出することは、いわばエリアの健康診断です 。まずは自社のデータをExcelにまとめ、数字の「開き」がないか確認することから始めてみてください。
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