前回の記事では、経済センサスの「小売業年間商品販売額」というデータが、人口データ以上に「市場の体力」を正確に表すことを解説しました。今回はさらに踏み込み、このデータを使って「具体的にどの自治体から、何店舗出すべきか」という出店計画の立案プロセスについて、茨城県を例に解説します。
ステップ1:市場規模による自治体のランキング化
出店計画を立てる際、まずは対象都道府県の全自治体を「小売業年間商品販売額」の大きい順に並べます。
例えば、県全体の販売額に対して各自治体が占めるシェア(%)を算出します。水戸市が約13%、つくば市が約11%……と累積していくと、上位数件の自治体だけで県全体の市場の半分以上を占めていることが分かります。これにより、「まずはこの上位〇市を攻める」という優先順位が明確になります。
ステップ2:数字だけでは見えない「エリアの塊」を読み解く
ここからが実務の醍醐味であり、有料級のノウハウです。実は、「数字(販売額)が小さいからといって、後回しにしていいとは限らない」のです。
注目すべきは、自治体同士の「地理的な位置関係」です。
「点のデータ」を「面のエリア」へ
例えば、茨城県南部の守谷市、つくばみらい市、取手市、牛久市。
これら一つひとつの自治体の販売額シェアは決して大きくはありません。しかし、地図上で見ればこれらは隣接しており、都心に近い鉄道沿線の「一つのまとまった地域」を形成しています。
これらを「一つのエリア」として合算すると、シェアは約10%に達します。
ステップ3:大型施設の配置を加味した最終判断
さらに、大型ショッピングセンター(SC)の配置を確認します。
自治体の境界をまたいで集客する巨大施設がある場合、数字上の境界線は意味をなしません。
• 単体では市場が小さく見えても、隣接自治体と「塊」で捉える。
• 交通網や大型施設の配置から、消費者の流れを予測する。
これらを経済センサスの数字と掛け合わせることで、「勝てる出店優先順位」が導き出されます。
まとめ:データは「解釈」してこそ価値が出る
経済センサスは、国の無料データでありながら、店舗開発における最強の武器になります。
1. 最新の数字で市場規模を把握する(令和3年度調査「経済センサス‐活動調査 / 令和3年経済センサス‐活動調査 / 立地環境特性編 表2」が最新です)
2. 自治体をランキングし、シェアを算出する
3. 地図を見て「エリアの塊」や「競合配置」から優先順位を補正する
「なぜその街に出すのか?」という問いに、数字とロジックの両面から答えられる準備をしましょう。具体的な出店数の配分や、より詳細なエリア分析の手法を知りたい方は、ぜひ弊社の「店舗開発実務講座」もご活用ください。