吉野家がロードサイドを中心に出店・既存店改装を進めてきた、カフェのような落ち着いた内装を施した「黒い吉野家(C&C店舗)」。最新の決算説明資料によると、約500店舗のC&Cを含む「新サービスモデル店」は、全1,259店舗中540店舗にまで増えているようです。

さて今回は、あるロードサイドにオープンした黒い吉野家を題材に、店舗開発における「物件調査」の具体的なステップと評価方法を解説します。 新規出店であっても既存店分析であっても、物件調査は大きく分けて「デスクリサーチ(仮説構築)」と「現地調査(検証と情報収集)」の2つのステップで進めます。この実践的なプロセスを順を追って見ていきましょう。

1. デスクリサーチ:地図から「仮説」を立てる

まずは現地へ赴く前に、地図やインターネットの情報を駆使して仮説を立てます。 地図上では、商圏を分断する「河川」や「鉄道」の有無、競合チェーンの配置などを確認します。今回の物件の周辺にはインターチェンジやショッピングセンターがあり、交通の必然性はありそうだと予測できます。

しかし、地図を拡大して道路形状をよく見ると、一つ気になる点が見つかります。それは、店舗が「道路が左に曲がった直後の直線部分」に位置していることです。このような形状の道路は、カーブを抜けた後に車のスピードが出やすいため、「入りにくい立地ではないか?」という仮説(不安要素)を立てることができます。

2. 現地調査(店外):店舗の手前から「見え方」を確認する

仮説を持った上で現地調査に向かいますが、いきなり店舗に入るのはNGです。まずは店舗の手前から、車を運転するドライバーの視点で状況を確認します。

実際に確認すると、前面道路は片側2車線で制限速度は50km/h、さらにトラックの通行比率が高い「通過動線」であることが分かりました。また、歩道の幅が広いため道路から敷地内に入るまでの距離が長く、進入角度も狭く見えます。手前にある樹木が視界を遮っていることも重なり、デスクリサーチでの仮説通り「手前から気づきにくく、入りにくい店舗」であることが検証できました。

3. 現地調査(敷地内):アンバランスなレイアウトの謎を解く

次に敷地内のレイアウトを確認します。この店舗は座席数が31席(カウンター5席、テーブル26席分)あるにもかかわらず、駐車場は敷地の隅に14台分しかありませんでした。

なぜ敷地の中央に無駄なスペースが空いているのか?その原因は「ドライブスルーの動線設計」にありました。敷地に入ってから90度右折し、S字のように曲がって受け渡し口へ向かう窮屈な構造になっており、やや大きめの乗用車でもレーンからはみ出してしまう状態でした。当然、前面道路を多く走っているトラックは利用できません。

さらに、商品を受け取った後は左折してUターンしなければ外に出られない構造になっており、この複雑な車の動きを確保するために、敷地中央を空きスペースにせざるを得ず、結果として駐車場を増やせないという致命的なアンバランスが生じていました。

4. 最終評価:売上と客数への影響を考察する

最後に、これまでの情報を統合して店舗のポテンシャルを評価します。

敷地から出る際、右手に信号機があるため交通の流れが定期的に途切れ、出庫しやすいという点はプラス評価です。しかし総合的に見ると、以下のマイナス要素が大きく目立ちます。

  • 制限速度50km/hでスピードが出やすく、入りにくい前面道路
  • 窮屈なドライブスルー動線による、駐車場台数の圧迫
  • トラック客(高単価が期待できる層)を取り込めない敷地レイアウト

近隣の競合店が制限速度40km/hの道路沿いに出店していることと比較しても、立地と敷地の使い方に大きな課題があり、カフェ風の内装で居心地を良くしても、売上や客数を大きく伸ばすのは苦しい物件であると評価できます。

このように、正しい手順で調査を行うことで、物件の真の価値(リスク)を客観的にあぶり出すことが可能になります。

皆さんもぜひ、自社の店舗や気になる業態の店舗で試してみてください。

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