店舗開発のプロセス「この新店舗の売上予測を出して」と言われたとき、いきなりエクセルを開いて計算を始めようとしていませんか?
当社が提供しているeラーニング『福徳塾』や過去のブログでも、売上予測の手法として「重回帰分析」をご紹介していますが、実は回帰分析は長い売上予測プロセスの中で使う「ひとつの道具」に過ぎません。
今回は、重回帰分析を使う前の段階として、売上予測の全体プロセスと、分析の土台となる「考え方」を共有します。このプロセスを理解することで、経営陣から「なぜその売上予測値になったのか?」と質問された際に、論理的かつ明確に答えられるようになります。
売上の8割は「立地」で決まる!5つの売上決定要因
店舗の売上は、店舗面積のような「1つの要因」だけで決まるほど単純ではありません。複数の要因が少しずつ影響し合って結果(売上)が作られています。
いろいろな人が様々な意見を言いますが、店舗の売上に影響する要因を整理すると、大きく以下の5つに集約されます。
- 市場規模(商圏内の人口、世帯数など)
- 集客要素(TG:交通発生源など)
- 競争環境(競合店の有無、自社競合=カニバリなど)
- 物件要因(視認性、駐車場の入りやすさ、店舗の形など)
- その他(営業力、ブランド力、景気など)
ここで非常に重要な事実があります。 実は、1〜4の要因は「どこに出店するか(立地)」を決めた瞬間に確定してしまい、後から企業努力で変えることが極めて困難なのです。
そして、開けたお店が売れる・売れないの約80%〜85%は、この1〜4の「立地要因」で決まってしまいます。「店を開けたけど売れない」となった場合、それは現場の営業力不足ではなく、店舗開発の責任(出店場所の選定ミス)と言わざるを得ません。だからこそ、店舗開発部門の責任は重大なのです。
売上予測の第一歩は「市場規模」を測ること
5つの要因には、考えるべき「順序」があります。一番最初に影響し、真っ先に考えなければならないのが「1. 市場規模」です。
ターミナル駅と各駅停車の駅ならターミナル駅を選びたいと思うように、私たちは無意識のうちに「市場規模」を最優先して出店場所を考えています。面積や物件の形を気にするのは、実は最後のステップなのです。
では、市場規模は何のデータを使って測ればよいのでしょうか? 路面店であれば「周辺人口」「世帯数」「小売業年間販売額」など、商業施設であれば「施設の売上」や「施設面積」などが使われます。この指標を選ぶ際、以下の2つのポイントを押さえてください。
- ポイント①:深く悩まず「1つ」選ぶ 人口と世帯数など、似たような動きをする指標で迷った場合は、「データが入手しやすいもの」を1つだけ選べばOKです。完璧な1つの指標を探す必要はありません。
- ポイント②:「市場規模が大きい店舗は、売上が高くなる“べきだ”」と考える 「高くなる」ではなく「高くなるべきだ」という前提(仮説)を持つことが、この後の分析で非常に重要になってきます。
散布図の正しい見方:「同じ市場規模なのに売上に差がある店舗」を探す
市場規模の指標を決めたら、自社の既存店データを使って「散布図」を作成します。 横軸に原因となる「市場規模」、縦軸に結果となる「店舗売上」を取ってプロットします。
当然ながら、全ての点が綺麗な一直線に並ぶことはなく、バラツキが出ます。ここからが分析の腕の見せ所です。この散布図を「下から上(縦方向)」に目を動かして見てください。
そして、「横軸(市場規模)は同じくらいなのに、縦軸(売上)に大きな差がある2〜3店舗」を意図的に探し出します。
- 「市場規模は同じくらいなのに、なぜA店は売上が高くて、B店は売上が低いのか?」
- 「市場規模がこんなに大きいのに、なぜC店は全然売れていないのか?」
この「市場規模以外の要因による売上の差(ズレ)」をあぶり出すことが、散布図を作成する最大の目的です。
なぜ売上に差が出るのか?社内ヒアリングのすすめ
探し出した2〜3店舗をピックアップし、「なぜこの店舗間で売上の差が生まれているのか?」をじっくりと考えてみましょう。
その答えこそが、最初にお伝えした「3. 競争環境」や「4. 物件要因」の違いに他なりません。「A店の近くには強力な競合がいるからだ」「B店は駐車場が入りにくいからだ」といった具体的な理由が見えてくるはずです。
このとき、店舗開発部門だけで悩むのではなく、営業部門など他の部署の人に「市場規模は同じくらいなのに、この2店舗で売上に差があるのはなぜだと思いますか?」と社内ヒアリングを行ってみることを強くおすすめします。現場ならではのリアルな要因が言語化され、後々の予測モデル作りに大きく役立ちます。
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