少し前ですが、ネットのニュース等で「焼肉店の倒産件数が過去最多」が話題になりました。 記事の理由としては「お店が増えすぎているから(競争激化)」と書かれていることが多いですが、我々店舗開発者は、そこで思考を止めてはいけません。
「店舗数が多すぎる」という事象をデータで分解し、今後の出店戦略の教訓として活かすには? 今回は東京都の自治体を例に、「市場規模(世帯数)」と「競合数(焼肉店数)」の関係から、無料データの組み合わせでも簡単にできる、出店余地のあるエリアと競争過多なエリアをロジカルにあぶり出す手法を解説します。
市場規模(世帯数)×店舗数のマトリックスで考える
ただ単に「店舗数が多い・少ない」を比較しても意味がありませんので、その店舗が存在する自治体の「市場規模」に対して、店舗数が適正かどうかを見る必要があります。
今回は、市場規模を測る指標として「世帯数」、店舗数として「iTownPageの掲載件数」を用いて、縦軸に店舗数、横軸に世帯数を取った散布図(マトリックス)を作成しました。
▼ 図表はこちらのYouTube動画で ▼
この散布図を4つの象限に分けると、以下のような傾向が見えてきます。
- 右上(世帯数:多 / 店舗数:多): 市場も大きいが競合も多い、激戦区。
- 右下(世帯数:多 / 店舗数:少): 市場規模に対して店舗が少ない=出店余地がある(狙い目)。
- 左下(世帯数:少 / 店舗数:少): 昔からの店舗が定着しており、新規参入のハードルが高い傾向。
- 左上(世帯数:少 / 店舗数:多): 市場が小さいのに店舗が多すぎる=競争過多(撤退リスク大)。
東京23区のデータから見える「超広域市場」と「狙い目」の区
実際に東京都の自治体をプロットしてみると、相関係数は「0.585」となりました。 少し相関が弱い理由は、左上(世帯数が少ないのに店舗が異常に多い)に外れ値が存在するからです。具体的には、新宿区、港区、渋谷区、千代田区、中央区などです。 これらは中間人口(昼間人口)が多く、ターミナル駅を抱える「超広域市場」であるため、住民の世帯数だけでは測れない特殊な市場だと言えます。
興味深いのは、この超広域市場の中で「豊島区」は、世帯数に対して焼肉店数が比較的少ないポジション(右下寄り)に位置している点です。データ上は、まだ出店余地がある区と見ることができます。
標準的な自治体における「出店の目安」とは?
では、特殊な「超広域市場」を除外して、一般的な自治体だけで再度散布図を作ってみましょう。すると、相関係数は一気に「0.931」まで跳ね上がり、世帯数と店舗数に非常に強い関連性があることが分かります。
この標準的な自治体の分布から、異常値を除いて直線を引いてみると、ひとつの明確な基準が見えてきました。
「約8,000世帯に対して、焼肉店が1店舗」
これが、現在の東京都における標準的な市場バランスの暫定的な目安と言えそうです。 この「8,000世帯」という基準値を持っておけば、ある自治体の世帯数を8,000で割ることで、「その街に出店できる焼肉店の上限数」の仮説を立てることができます。
さらに細かく見ると、板橋区や練馬区は世帯数に対して店舗数が少なめ(出店余地あり)、一方で品川区、墨田区、目黒区は世帯数に対して店舗が多め(激戦区)という傾向も読み取れました。多摩地域(市部)においても、立川市や武蔵野市のような大きな駅の影響を受ける自治体と、そうでない自治体で明確な差が現れています。
まとめ:ニュースの裏側をデータで読み解く
「焼肉店が多すぎる」というニュースも、このように「世帯数」と「店舗数」をプロットして可視化することで、自社の出店戦略に直結する生きたデータ(出店基準の目安や、狙い目のエリアの発見)に変換することができます。
皆さんもぜひ、自社の業態に置き換えて、出店候補エリアの散布図を作ってみてください。
(※本分析の店舗数はiTownPageのデータを使用しているため、全店舗の網羅性や重複に関する留意事項を含みます。詳しい分析プロセスはYouTube動画をご覧ください。)