悩ましいロードサイド店舗の駐車場台数。決め方や考え方はあるのか?

今から20年程前のことですが、ドライブスルー店舗の出店のため、郊外のロードサイドを朝から晩まで同僚と車で走り回っていた時期がありました。そんなある日、「駐車場台数ってのは、何か決め方とか考え方があるのか?」ということが話題になりました。

当時は外食産業にいたので、「同じ飲食の店でも、数えるくらいの駐車スペースしかない店もあれば、駐車場の面積がかなり大きい店もある。」「自分らにとってふさわしい台数は何台か?」という具合に話が展開しました。

一般的には、面積の決まった区画がある → 店舗の位置が決まる → 残った面積にどのくらい車が停められるか考えて、結果として出てきた数字が駐車場台数となる。…という決め方になることが多いのではないでしょうか?

その場合、店舗自体の広さはだいたい決まっているはずなので、敷地面積が広ければ駐車場台数は多くなり、敷地面積が狭いなら駐車場台数は少なくなり、その“多い少ない”で売上予測の金額を調整する、ということになります。

それに対し、ロードサイドに店舗展開する複数の企業の店舗売上の傾向から、あることが分かりました。それは、「駐車場台数が多いほど売上は上がる」という考え方は大方正しいのですが、それが当てはまるのは、ある駐車場台数までの範囲に限られるということです。駐車場台数がある値を超えると、駐車場台数が増えても売上が上がらない、むしろ低下することもある、ということです。

多すぎてもダメだし、少なすぎてもダメなのが駐車場台数です。(これは実は、店舗面積でもあてはまります)

駐車場台数が多すぎる場合、少なすぎる場合の弊害は?

少なすぎる場合は、客数が思うように伸びません。ロードサイドで車を停められるところが少なくなると、やはり客数が伸びず、その結果売上も伸びなくなります。よって駐車場台数はなるべく多くしたいと考えます。

多すぎた場合はどうなるかというと、敷地面積が多くて駐車場台数が結果として多くなったという場合は、敷地面積そのものが大きいので、賃料が高額になります。売上が伴わない場合は余分に賃料を支払うことになります。

以上は、出店する側の都合に関するものです。

駐車場台数が多すぎる、少なすぎることの弊害には、お客さんの視点によるものもあります。

駐車場台数が多い場合、駐める場所によっては、車から店舗までの距離が遠くなります。大型のショッピングセンターなどでも、店内入り口の近くはいつものように車でうまっていて駐めにくいですよね。なるべく車から歩きたくないというのが利用客の本音であり、車から店舗までの距離が遠くなることで不快度が増加することが考えられます。雨の日などは特にです。

車から店舗の距離が遠いだけではなく、店内での待ち時間が増加することも考えられます。

駐車場が広いためお客さんがどんどん車で来店します。しかし、店舗の処理能力が不十分だったり、飲食店の場合は座席数が不十分だったりすると、入店してもなかなか用事を済ますことができず“待ち時間”が増加します。こうなると利用客の不快度は増加していきます。

少なすぎる場合は、外から見ると混雑していて入りにくく感じたり、敷地に入れても駐められる場所を見つけにくかったり、更に、場合によっては人や車と接触しそうになったりと、店舗に入店する前段階で不満度や不快度が増加します。

では、駐車場対数は、何台が妥当なのか?

先程、駐車場台数がある値を超えると、駐車場台数が増えても売上が上がらない、むしろ低下することもある。と書きましたが、その台数は何台なのか?という問題です。

その台数はケースバイケースであり、一概に何台とは言えません。業種・業態によって変わりますし、同じ業態であっても変わります。…しかし、それで終わってしまっては、何も言っていないのと同じです。そこで、ここでは、概論的な考え方を共有させていただきます。

この問題を長いこと考えた続けた結果、3つの事柄が関連していることが分かってきました。その3つとは、①ロードサイド物件のタイプ②グループ人数③店舗のキャパシティ・処理能力です。

① ロードサイド物件のタイプ

駐車場付きのロードサイド物件は「都市型」と「郊外型」の2つに別れます。

「郊外型」とは、いわゆる典型的なロードサイドで、自動車での来店客がほぼ100%の、純粋な郊外にあるロードサイドです。周辺に緑地や農地などがあって、敷地の前を車が多く通っている場所にあります。

しかし、ロードサイド物件にはもう一種類ありまして、徒歩や自転車来店も可能な“準郊外”といえる場所があります。周囲に戸建て住宅や高層住宅、雑居ビルのようなものがあり、最寄り駅まで歩いていけないこともない距離にある場所です。それらをここでは「都市型」ロードサイドと呼びます。

「郊外型」は賃料の単価が相対的に安いこともあって敷地面積が大きくとれます。逆に、「都市型」というのは賃料単価が相対的に高く、土地も細かく分かれていることが多く、敷地面積が小さくなりがちです。

都市型ロードサイドと郊外型ロードサイドとでは、必要とされる駐車場台数は原則的にどっちが多くなるでしょうか?これは郊外型の方が多くなります。考えてみれば当たり前なのですが、物事は当たり前のことを組み合わせて考えるのが堅実です。

② グループ人数

「グループ人数」とは、この場合、“自動車1台に乗っている来店客数”が意味合いとしては近いです。飲食店で何名様ですか?と聞かれますが、その人数です。最低人数は1人です。自社店舗は何人客が多いかを考えてください。その人数です。一人客が多い業種・業態もあれば、4~5人での来店が多い業種・業態もあります。

このグループ人数を駐車場台数と関連させて考えてみると、それが多い場合と少ない場合とで駐車場台数に対する考え方が変わってきます。

結論から申しますと、グループ人数が多い方が駐車場台数は少なめでよく、グループ人数が少なくなると駐車場台数は多めに必要であるということです。

ですから個人客が多い場合は駐車場台数は多めにしなければなりません。逆に、3~4人が多い場合には、個人客が多い場合に比べて駐車場台数はそれほど多くは求められず、多く作ってしまうと、多すぎるということになりかねないということです。

③ 店舗のキャパシティ・処理能力

“キャパオーバー”という言葉がありますが、そこに含まれる“キャパ”が「キャパシティ」です。

これは単純に店舗面積とは限りません。店舗が一定時間に応対できる来店客数だと思ってください。さばけるお客さんの数というイメージです。

これはどういう数字で表れるかというと、飲食業の場合は座席数です。座席数が多ければ多いほど対応できるお客さんの数は増えます。物販店になってくると、これはレジ台数が影響します。レジが2台の場合と1台の場合では対応できるお客さんの数が変わってきます(もちろん接客力も処理能力に影響しますが、それはここでは置いておきます)。サービス業の場合は、サービスを行う従業員の数によって対応できる来店客の数は変わります。

キャパシティが大きければ、駐車場台数は多くすることができます。キャパシティが大きいので、お客さんにも入ってほしいので、駐車場は増やすと考えることができます。キャパシティが小さければ、駐車場を増やしすぎると店内でのお客さんの不満が高まる恐れがあります。

以上の3つの事柄を組みあわせることで、妥当な駐車場台数が何台か?という問題に迫ることができます。

続きはこちらの動画で解説させていただきましたので、ぜひご視聴ください。動画の最後に練習問題も出してみましたので、よろしければ考えてみてください。そちらの解説はこちらの動画で。

ロードサイド店舗の「駐車場台数」の考え方|店舗開発実務講座【立地タイプ別出店の考え方解説】 「店舗開発という仕事チャンネル」by 福徳社 より

  • 00:00 ロードサイド店舗の開発における「駐車場台数」の重要性
  • 01:15 なるべく台数を多くすればいい、は正しいか?
  • 02:13 駐車場台数が多すぎる・少なすぎることによる弊害
  • 04:39 紋切り型の考え方で駐車場台数を決めるのは危険
  • 05:37 考慮すべきこと①ロードサイド物件のタイプ
  • 07:59 考慮すべきこと②グループ人数
  • 09:37 考慮すべきこと③店舗のキャパシティ
  • 11:47 店舗タイプ別“必要駐車場台数の多さ”ランキング
  • 14:30 練習問題:郊外型ロードサイド物件(焼肉屋)の場合

前掲動画の演習問題を解説します。

【問題】郊外型ロードサイド物件。業態は「焼肉屋」。店舗面積は敷地の4分の1。会社の店舗面積基準は満たしている。⇒この物件に出店すべきかどうか、どう考えたらよいでしょうか?

  • 00:00 【動画①の復習】ロードサイド店舗の必要駐車場台数の考え方
  • 02:18 演習問題の確認
  • 02:44 演習問題の解説
  • 05:22 業態が喫茶店の場合はどうか?
  • 06:50 必要な駐車場台数は何台か?の考え方のまとめ:大雑把な公式