ケーススタディー:幸楽苑 vs. 日高屋 ~総店舗数の地域配分が対照的な企業~(続き)

昨日の続きです。ここで、日高屋と幸楽苑を比較したグラフを見てみましょう。

幸楽苑対日高屋

横軸は、市区町村別の出店数を表します。1店舗しかないエリアもあれば、複数店舗を出店しているエリアもあります。

縦軸は、そのエリア内の出店数に対応する市区町村数を示します。幸楽苑は、1店舗ないしは2店舗しかないエリアの数が圧倒的に多く、率にすると87%に上ります。

前回までの情報も踏まえると、幸楽苑は本社のある福島県内を除くエリアでは、地域拡大が優先され追加出店がほとんど進んでいないことを示しています。

逆に日高屋は2店以上出店しているエリアの数もバランスよく存在し、読み取りにくいですが20店舗を出店しているエリアもあります。地域拡大よりも展開済みのエリアへの市場浸透を優先していることが分かります。

両社の出店行動を比較すると、

日高屋は新規出店を狭域に集中させる一方、幸楽苑は新規出店を広域に分散させている

ということが、直感的にもお分かり頂けると思います。

こうした集中・分散の度合いを客観的に把握し、企業間で比較可能できるようにするため、前回の表で「集中度」という数字を示しました。集中度は日高屋が176.1幸楽苑は61.3でした。

これはハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)というもので、各社の市区町村ごとの店舗数のシェア(%)を2乗した数字を、合算したものです。ある企業が、一つの市区町村に全ての店舗を出店していた場合、その市区町村の店舗数のシェアは100%で、集中度は100×100=10,000となります。2つの市区町村に半分ずつ出店している場合、50%の2乗が2つですから、集中度は50×50×2=5,000です。

この数字は企業によって異なりますし、同じ企業でも出店を進めるにつれて変化します。

出店方法の性質を説明する上で重宝する指標ですので、ここでご紹介させていただきました。

それを用いると、

幸楽苑は特定のエリアへの店舗数の集中度を低下させつつ、地域拡大を急激に進めている一方、日高屋は店舗数の集中度を高いレベルに維持しつつ、特定のエリアへの追加出店を優先している

と説明できます。

この2つの出店戦略のうち、どちらが皆さんは良いと思われますか?その根拠は何ですか?是非、考えてみてください。