■ 連載「新しいエリア戦略」第3回 ■ 連載プロローグ 第1回 第2回

大都市の周辺にある自治体について、「○○都市圏のベッドタウン」という説明をよく見かけます。

店舗開発でも、大都市圏と地方都市を大きく分け、
「この市は札幌商圏」
「この市は名古屋商圏」
と整理することがあります。

もちろん、広域的な都市圏を把握することは重要です。

しかし、その分類だけでは少し違和感の残る都市があります。その一つが小樽市です。

小樽市は札幌市に隣接しています。
では小樽は、「札幌都市圏の一部」と考えればそれで十分なのでしょうか。

小樽は確かに札幌と強くつながっている

小樽市は、札幌市を中枢都市とする「さっぽろ連携中枢都市圏」に参加しています。

この連携中枢都市圏は、札幌市への通勤・通学割合などを基準に構成されており、小樽と札幌の間に一定の生活・経済上の結びつきが存在することは明らかです。
交通面でも、小樽は札幌と鉄道・道路で直接結ばれています。

したがって、
「小樽は札幌とは別の独立した市場なので、札幌との関係は考えなくてよい」
という捉え方は適切ではありません。

札幌との接続性は、小樽の市場を考えるうえで重要です。

しかし、ここで話は終わりません。

小樽自身にも「中心」がある

小樽市の立地適正化計画では、市街地はJR小樽駅周辺の中心市街地を中心として形成され、その一方で東側の札幌市に近い銭函地域、西側の塩谷・蘭島方面などにも市街地が存在しています。
市街地は地形的制約を受けながら、海岸沿いに東西方向へ広がっています。

つまり小樽は、単に札幌から住宅地が外側へ延びてできた都市ではありません。
自らの中心市街地を持ち、長い歴史を持つ商業・観光都市でもあります。

さらに、小樽市は周辺の余市町、仁木町、積丹町などと「北しりべし定住自立圏」を構成しています。
札幌に吸引される側であると同時に、後志地域側から見れば中心都市として機能しているわけです。

ここが小樽の面白いところです。

「札幌依存」か「独立市場」かでは説明できない

従来型のエリア分類で考えると、
A:札幌都市圏の一部
B:独立した地方都市
のどちらかに小樽を入れたくなります。

しかし実際には、どちらでもあると考えた方が自然です。

札幌と強くつながっている。
同時に、小樽自身にも中心性がある。
さらに西側の周辺地域から人を吸引する役割もある。

つまり、「独立性が高いこと」と「大都市との接続性が高いこと」は矛盾しません。

私はこの点が、新しいエリア分類を考えるうえでかなり重要だと思っています。

独立性と接続性を別々に考える

地域を一列に並べて、
大都市依存 ←→ 独立市場
と考えると、小樽のような都市をうまく説明できません。

そこで、二つを別の軸として考えます。
一つは、その地域自身にどれだけ市場の中心性があるか。
もう一つは、他の大きな市場とどれだけ強くつながっているか。です。

小樽であれば、
独立性:高い
接続性:高い
という評価が考えられます。

このような都市を仮に、「独立中心・大都市接続型」と呼ぶと分かりやすいかもしれません。

一方、大都市への流出が非常に強く、自らの商業中心性が弱い都市なら、
独立性:低い
接続性:高い
となります。

見かけ上はどちらも「大都市の隣」ですが、店舗開発上の意味は大きく違います。

小樽に一店舗出す意味は何か

店舗開発の視点では、この違いはかなり重要です。

例えば全国チェーンが北海道へ展開するとします。

札幌市内の店舗網を十分に構築した後、小樽へ出店する場合、
「札幌都市圏を西へ拡大しただけ」と捉えるのか、
「小樽という新しい市場へ進出した」と捉えるのか。

どちらか一方ではなく、両方の性格を持つと考えるべきでしょう。

小樽店には、
小樽市内の需要を取る役割。
札幌方面との連続性を補完する役割。
後志方面からの需要を受ける役割。

複数の意味が生まれる可能性があります。

これは単純な自治体人口では読み取れません。

「どこに属する都市か」から「どことどうつながる都市か」へ

従来のエリア分類では、「この市はどの都市圏に属するか」を決めることが中心でした。

しかし、今後の店舗網戦略では、
「この地域は、どことどのようにつながっているのか」
を見る方が重要になるのではないでしょうか。

一つの地域が複数の市場と関係を持つことは普通にあります。
そして、その関係の強さも一様ではありません。

店舗網を広げるときには、自治体を塗り分けて所属を決めるよりも、地域同士の関係を線で見る必要があります。
小樽市は、そのことを非常に分かりやすく示す例だと思います。

次回は、さらに別の問題を扱います。

人口がかなり多い自治体でも、一店舗では市場を取り切れない。かといって、各地に何店舗も出すほどではない。
そんな市場があります。

東広島市を例に、人口規模と「市場をカバーするために必要な店舗数」の違いを考えます。