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店舗開発で出店エリアを検討するとき、「人口10万人」という数字は一つの目安になります。
例えば、「人口10万人以上の市を出店候補とする」「人口5万人未満の自治体には原則として出店しない」といった基準です。
人口は市場規模を考えるうえで重要ですから、この考え方自体は合理的です。

しかし、ここで一つ疑問があります。
同じ人口10万人の市なら、店舗開発上も同じように評価してよいのでしょうか。

今回は、人口規模が比較的近い2つの都市として、石川県小松市と千葉県鎌ケ谷市を見てみます。

約10万人という数字は近くても、都市の置かれ方は違う

小松市の人口は2026年7月1日現在で104,261人です。市の立地適正化計画では、小松駅地区を「中心拠点」、粟津駅地区を「地域拠点」と位置付けています。つまり、市内に複数の拠点を持ちながらも、小松駅周辺に中心性を持たせた都市構造が明確です。

一方、鎌ケ谷市も人口約11万人です。2026年4月1日の住民基本台帳人口を年齢3区分から合計すると110,091人になります。人口規模だけを見れば、小松市と大きな差はありません。

ところが、鎌ケ谷市の都市構造はかなり違います。

鎌ケ谷市は千葉県北西部にあり、新鎌ケ谷駅は鉄道4路線が結節する広域交流拠点として位置付けられています。また、新鎌ケ谷駅・初富駅・鎌ケ谷駅の3駅と、その間を結ぶ空間を「都市軸」として捉えています。さらに、市は東葛・湾岸広域都市圏の中に位置しており、都市機能を市内だけで完結して考えることが難しい都市でもあります。

つまり、小松市の10万人と鎌ケ谷市の11万人は、人口という数字だけなら近くても、その「意味」はかなり違います。

「10万人いる」だけでは店舗商圏は分からない

仮に、あるチェーンの一店舗当たりの成立人口を10万人とします。すると、
小松市104,000人
鎌ケ谷市110,000人
という数字だけを見れば、どちらも「1店舗出店可能」と判断するかもしれません。

しかし、実際の店舗開発ではそう単純ではありません。
小松市の場合には、小松駅周辺を中心とする市街地のどこに店舗を置けば、市内需要を効率よくカバーできるかという問題になります。

一方の鎌ケ谷市では、市内需要だけを見ればよいとは限りません。
住民の生活行動は隣接する松戸、船橋、柏方面などとも結びつきますし、新鎌ケ谷は周辺地域から人を集める側でもあります。

つまり、
「自治体人口10万人=その自治体の中に10万人市場が存在する」とは限らないのです。

人口10万人という数字は同じでも、一つの都市として中心性を持つ10万人なのか。
大都市圏の連続した市街地の中に存在する10万人なのか。
周辺から需要を吸引する10万人なのか。
逆に周辺へ需要が流出する10万人なのか。
これによって、店舗の役割は変わります。

人口は「量」、都市構造は「意味」

この違いを店舗開発の視点で整理すると、
人口は需要の「量」を表し、市場構造はその人口の「意味」を表す
と考えると分かりやすいのではないでしょうか。

これは商業施設を評価するときにも似た問題があります。

同じ40,000㎡のショッピングセンターでも、周囲に同規模施設が全くない場合と、40,000㎡級の施設がいくつも存在する場合では、その40,000㎡の意味は違います。

人口も同じです。10万人という数字だけを切り取るのではなく、
その10万人がどこにいるのか。
周辺地域とはどうつながっているのか。
どこが生活の中心なのか。
どこへ需要が流れているのか。
まで見て初めて、出店に使える数字になります。

「人口10万人なら1店舗」ではなく、その10万人をどう取るか

店舗開発担当者が考えるべきなのは、「人口10万人あるか」だけではありません。
より重要なのは、「この10万人の需要を、一店舗でどこまで取れるのか」です。

一店舗で市場の大部分をカバーできる10万人市場もあります。
反対に、行政上は10万人いても、一店舗では一部しか取れない市場もあります。
あるいは自治体人口は5万人しかなくても、隣接自治体を含めれば15万人、20万人の連続市場になるケースもあるでしょう。

ここに、自治体人口だけを出店基準にすることの限界があります。
人口を見ることをやめる必要はありません。むしろ人口はこれからも最も重要な基礎データの一つです。
ただし、「人口が何人いるか」から、「その人口がどのような市場を形成しているか」へ。
一段深く見る必要があります。

次回は、この問題をさらに進めます。

そもそも、市区町村の境界は市場の境界なのでしょうか。
埼玉県南部の蕨市・戸田市・川口市を例に、「行政界」と「市場の境界」の違いを考えます。