生成AIを店舗開発業務にどう使うか。最近は、物件情報の整理、商圏調査、競合比較、資料作成など、さまざまな場面でAIを試している方が増えていると思います。

ただ、AIを使うこと自体が目的になってしまうと、回答は増えたのに判断は速くならない、情報が多すぎてかえって迷う、といったことも起こります。

今回のテーマは、「AIをどこに使うか」より先に、「店舗開発業務のどこを改善したいのか」を考えることです。

AIを使って、業務の質は本当に上がっているか

生成AIに質問すると、短時間で多くの情報が返ってきます。しかし、情報が増えることと、店舗開発業務の質が上がることは同じではありません。

まず確認したいのは、AIを使うことで、物件判断がしやすくなったのか、説明が分かりやすくなったのか、業務が速くなったのか、といった本来の成果につながっているかという点です。

AIの回答をそのままコピーして使うのではなく、数多く出てくる情報の中から、何を採用するのかを判断する必要もあります。

AIを入れる前に、業務プロセスを一度見直す

AI活用を考えるときは、最初に現在の業務全体を振り返ってみることが有効です。

  • この仕事は何のために行っているのか
  • どのような情報を集めているのか
  • どこで比較・判断しているのか
  • どの部分で業務が止まりやすいのか
  • 担当者によって判断がばらつく部分はどこか

そのうえで、うまく進んでいない部分を具体的に改善するためにAIを使う。この順番の方が、AIの効果を実務につなげやすくなります。

AIが得意なのは「整理・比較・説明の下書き」

店舗開発業務の中で、AIが特に力を発揮しやすいのは、情報を整理する、比較する、説明の流れを作るといった作業です。

候補物件が増えれば、物件情報や現地調査の記録も増えます。複数の物件を共通項目で比較することや、集めた情報をもとに会議用の説明の下書きを作ることは、生成AIが得意とする領域です。

一方で、何の情報を集めるのか、何を比較するのか、説明に何を含めるのかは、AIではなく店舗開発担当者が決める必要があります。

視認性評価は、人とAIの役割分担が見えやすい

この役割分担を考える具体例として、動画では「視認性評価」を取り上げました。

視認性は、物件会議で頻繁に使われる一方、「見える・見えない」「目立つ・目立たない」といった曖昧な表現になりやすく、同じ物件でも担当者によって評価が分かれることがあります。

そこで、写真を生成AIに見せ、評価の根拠を整理する補助として利用します。ポイントは、AIに最終判断を任せるのではなく、議論するための材料を同じ観点で整理させることです。

視認性を4つに分けて考える

視認性は、次の4項目に分けると議論しやすくなります。

  1. 視覚的露出:店舗や看板などの手がかりが視野に入るか
  2. 注意獲得:周囲に埋もれず、目に留まるか
  3. 個店分離:一つの店舗として区別できるか
  4. 店舗理解:店名、ブランド、業態、提供内容などが分かるか

この4項目を共通言語にすることで、「視認性がよい・悪い」だけで終わらず、どこに問題があるのかを具体的に話しやすくなります。

写真もプロンプトも、人間が条件を決める

AIによる視認性評価では、入力する写真の撮り方が重要です。店舗がよく見える位置だけを撮影するのではなく、主要な接近方向ごとに、遠い位置・中間地点・直前から、通行人の目線で撮影します。

また、最初から対象店舗を指定するのではなく、「この写真の中で注意を引きやすい店舗・看板はどれか」といった質問を先に行い、その後で対象店舗を4項目から評価させる方法も有効です。

ここでも、評価項目、撮影条件、質問の仕方を決めるのは人間です。

AIの回答は、必ず人間が確認する

生成AIは、写真から特徴を抽出したり、同じ項目で比較したりすることには優れています。ただし、回答には事実と推論が混ざることがあります。

「看板の一部が柱に隠れている」といった記述であれば、写真や現地で確認できます。一方、「この条件によって売上が何%下がる」といったことは、写真だけからは判断できません。

店舗や看板の取り違い、文字の読み違い、根拠のない断定が含まれる可能性もあります。したがって、AIが整理したものを人間が現地情報と照合し、解釈し、最終的な物件判断につなげる必要があります。

AI活用の価値は、担当者の経験を共有しやすくすることにもある

写真の撮り方、AIへの問い、評価項目、評価条件を会社の中である程度そろえていけば、視認性評価の過程そのものを共有しやすくなります。

一人の担当者の経験だけに依存していた物件評価を、チームで確認し、検討し、再現する。生成AIには、そうした店舗開発業務の標準化を助ける使い方もあります。

動画でも解説しています

今回の内容は、YouTube動画でも具体例を交えて解説しています。

視認性評価を実務で使いたい方へ

視認性評価の考え方をさらに詳しく知りたい方に向けて、電子書籍『店舗開発×AI ― 視認性評価の実務』を刊行しています。

写真の撮り方から、4項目での評価、物件説明への活用方法、コピー&ペーストで使えるプロンプト例まで、店舗開発の実務で使える形にまとめました。価格は980円です。

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AIに何を任せるかを考えることは、同時に、店舗開発担当者が何を判断すべきかを見直すことでもあります。ツールを増やすことからではなく、業務のどこを良くしたいのかを明確にするところから始めてみてはいかがでしょうか。

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