【連載】①Stage 1「つくる」編 ②Stage 2「拡げる」編 ③Stage 3「組み替える」編

店舗を開ける仕事を初めて担当すると、店舗開発には一つの「手順」があるように思えるかもしれません。

  • まず、どこに出すかを決める。
  • 次に、物件を探す。
  • 物件が決まったら店舗をデザインする。
  • 工事をして、開店する。

確かに、教科書に書くならこの順番が分かりやすいでしょう。

しかし、実際の店舗開発はそれほどきれいには進みません。

福徳社では、店舗開発を大きく5つのフェーズで考えています。

PLAN どこに、どんな店を出すのか。
FIND どんな物件なら成立するのか。
CREATE どんな店舗をつくるのか。
OPEN どう開業するのか。
ENABLE 次の店も、今のチームで開けられるのか。

店舗開発の5つの機能

ここで重要なのは、この5つは「手順」ではないということです。

最初に必要なのは、「どんな状態をつくりたいか」の仮説

5つのフェーズを同時に進めるといっても、行き当たりばったりに進めるという意味ではありません。

まず考えたいのは、最終的にどのような状態をつくりたいのかです。

1号店を開けることが目的なのか。
それとも、5店舗、10店舗と増やしたいのか。
5年後には数十店舗を展開したいのか。

目指す状態が違えば、1号店を開ける前に準備しておくことも変わります。

もちろん、最初からすべてを正確に決めることはできません。

どの地域に何店舗出すのか。
どのくらいの店舗面積にするのか。
どの程度の売上を目指すのか。
どのような人員体制が必要になるのか。

現時点で分かることは決める。まだ分からないことには仮説を置く。重要なのに判断材料が足りないことは調べる。そうやって、まずは目指す店舗展開の全体像を仮置きします。そして、実際に物件を見たり、1号店をつくったり、市場について新しいことが分かったりすれば、その計画も更新します。

目指す状態を見ながら走り始め、走りながら計画の精度を上げていく。

これが、実際の店舗開発に近い進め方です。

物件が先に出てくることもある

例えば、検討に値する物件が突然出てくることがあります。

その物件を見ながら、
「この面積なら、店舗フォーマットを少し変えられないか」
「この賃料なら、どのくらいの売上が必要か」
「この場所なら、想定していた客層を変える必要はないか」
と考えることになります。

逆に、諸般の不確定要素のために、必要な店舗面積や投資額が確定できず、どんな物件を探せばよいのか決められないこともあります。

一つの条件を変えると、ほかの条件も動きます。
だから店舗開発では、一つを完全に決めてから次へ進むという方法が、必ずしも効率的ではありません。

「全部決まるまで待つ」こともしない

一方で、計画を完璧にしようとして、いつまでも動き出さないのも問題です。

店舗開発にはスピードが必要です。
良い物件について意思決定を求められているのに、「まだ出店戦略の検討が終わっていません」と言って、待ってもらえるとは限りません。

店舗開発では、時間をかけて考えるべきことと、ある程度の情報で判断して先へ進むべきことを分ける必要があります。
必要なのは、全体を同時に見ながら、判断できることからどんどん決めていくことです。

まだ判断材料が足りないものは調べる。
現時点で判断できるものは決める。
新しい情報が入って前提が変われば、以前の判断も必要に応じて見直す。

計画を固定して実行するのではなく、実務を進めながら計画も更新していきます。

店舗開発のプロジェクトは、この繰り返しで前に進んでいきます。

「良い物件が見つかった」だけでも店は開かない

もう一つ、初めて出店する企業で見落とされやすいことがあります。

良い物件が見つかっても、もちろん、それだけで営業できるわけではありません。

店舗設計が必要です。
工事が必要です。
人を採用しなければならないかもしれません。
採用した人の教育も必要です。
商品やサービスを店舗で提供できる状態にする必要があります。

そして、店を開ければ自然にお客様が来るわけでもありません。

どう認知してもらうのか。
開店前に何を告知するのか。
開店後にどう集客するのか。

これらにも準備が必要です。

しかも、設計、施工、採用、教育、PRなど、それぞれ必要な時間が違います。

物件が決まってから一つずつ始めていたら、開店日に間に合わないことがあります。
だから、これらも並行して動かします。

「1号店を検証してから2号店を考える」は間違いなのか

初めて店舗を出す企業から、よく聞く言葉があります。

「まず1号店を出して、うまくいくか検証してから次を考えたい」

これは、一見すると非常に合理的です。

実際、1号店を開けて初めて分かることはたくさんあります。

想定していたお客様が本当に来るのか。
商品やサービスは受け入れられるのか。
必要な店舗面積は適切だったのか。
どのくらいの売上が期待できるのか。

分からないものを無理に決める必要はありません。

ただし、最初から多店舗化することを目標としているのであれば、「1号店の検証が終わるまで、2号店以降について何もしない」こととは分けて考える必要があります。

検証を待つものと、今から準備できるものを分ける

例えば、1号店の実績を見なければ最終判断できないことは、結果を待てばよいでしょう。

しかし、その間にも準備できることがあります。

次に出店する可能性のあるエリアを調べる。
物件情報を得られる関係をつくる。
どんな物件なら検討対象になるかを整理する。
店舗デザインのどこを標準化できそうか考える。
店舗開発を担当する人が今の体制で足りるか検討する。
必要なら採用や育成を始める。

2号店の契約を急ぐ必要はありません。

しかし、次の店舗を開けるための準備まで止める必要はありません。

物件開発にも、人材育成にも、店舗づくりにも、それぞれリードタイムがあります。

1号店が成功したことを確認してから、初めて2号店のエリアを考え、人を探し、物件情報を集め始める。その進め方では、次の店舗まで長い空白期間が生まれることがあります。

本当に数年間で複数店舗を展開するのであれば、1号店が開くころには、2号店、3号店に向けた活動もすでに始まっている。

多店舗化とは、そういう時間軸で進む仕事です。

成長すると、店舗開発の課題そのものが変わる

ここには、もう一つ重要な問題があります。

1号店を準備している段階では、まだ経験したことのない「多店舗化した後の世界」を想像するのは簡単ではありません。

1店舗をつくるときと、店舗網を拡大するときでは、必要な判断も組織も変わります。

さらに店舗網が成熟すれば、新店を増やすだけではなく、既存店の改善、移転、統合、閉店、店舗フォーマットの見直しなども課題になります。
つまり、店舗数が増えると仕事が単純に増えるのではありません。

企業やブランドの成長とともに、店舗開発で解くべき問題そのものが変わっていきます。

だからこそ、これから多店舗化を目指す企業では、目の前の1号店だけを見るのではなく、「この先、店舗が増えたら何が必要になるのか」を少し先回りして考えておく必要があります。

もちろん、未来を正確に予測することはできません。

大切なのは、次の成長段階を完全に設計しておくことではなく、次の段階へ進むために時間のかかる準備を、今から止めないことです。

5つに分けるのは、仕事を分断するためではない

福徳社が店舗開発をPLAN / FIND / CREATE / OPEN / ENABLEの5フェーズに整理しているのは、店舗開発に必要な論点を見落とさず、それらをつないで動かすためです。

重要なのは、5つのフェーズを順番どおりに終わらせることでも、すべてを同時に忙しく動かすことでもありません。

まず、どのような店舗展開を実現したいのかという全体像を持つ。

その全体像を見ながら、判断できることから決め、必要な仕事を並行して動かす。そして、実務を通じて新しいことが分かれば、計画そのものも更新する。

1店舗開けられたとしても、次の店舗を開ける人や仕組みがなければ、多店舗化は続きません。

店舗開発は、複数の専門業務を一つのプロジェクトとして動かす仕事です。

そして多店舗化を目指すのであれば、「1店舗を開ける」ことだけではなく、「店舗を継続して開けられる状態をつくる」ことまでを一つのプロジェクトとして考える必要があります。

続きは明日のブログStep 2「拡げる」編で。

リテールブランドの成長ステージ
店舗ビジネスの成長と店舗開発の変化を示した概念図