昨日に続き、北欧のデザインはなぜ優れているのか?というお話です。この点については色々な考え方があるのだと思いますが、何が正しいと言うものはないと思われますので、自身の経験に基いた考えをお話したいと思います。

それは、北欧人が、“家の中に高い関心を持つ”ためだと思われます。私自身、昔はそれほどインテリアにこだわりがあった訳ではないのですが、ある時期からインテリアにこだわるようになりました。ある時期とは、デンマークで暮らしていた冬の時期でした。

北欧の冬の時期は、昼の時間が非常に短いのです。コペンハーゲンでも、朝9時前に出かけようとしても、外はまだ真っ暗です。お日様が最も高く上る正午でも、自分の影が長く伸び夕暮れのような感じです。その後、午後3時には日が沈み暗くなってしまうのです。

最高気温は毎日マイナスです。室内の電気も間接照明が多く、部屋の中全体を明るくすることは少なく、日常的にキャンドルを使用しています。

こうした環境に数カ月いると気が滅入って仕方がなく、自分は病気ではないかと思い友人のデンマーク人にある日そのことを話したら、“この時期デンマーク人はみんな病気だ”と教わり、妙な安堵感を感じたことを覚えています。

東京の感覚で行くと、首都コペンハーゲンとはいえ街は人口も少なくて、何となくこじんまりとしており、商店や飲食店等の数も少ないうえ、夜もすぐに閉まってしまいます。近所のスーパーマケットは午後7時には閉まってしまいます。だからかもしれませんが、デンマーク人は用事が済むと自転車に乗ってすぐに家に帰ってしまうという印象を受けたものです。商店も休日はほとんどが休みでした。

このような訳で、自ずと家の中で過ごす時間が増えるのです。そして、部屋の外が暗く静かなので、どうしても家の中に関心が向くのです。

私自身は、夏の時期は何ともなかったのですが、冬が深まるにつれて何か家の中のものの色や調子に統一感が無いと落ち着かなくなりました。例えば、毎日使うフォークやナイフ、スプーンなどの食器はバラバラなのではなく、同じようなトーンのものであってほしいと思うようになり、それに合わせて皿も食器と相性が良いものであってほしいと思うようになりました。家具等も然りです。

北欧人は暗く静かで単調な毎日の生活の中で何かしらの変化を感じるため、インテリアにちょっとした変化を加えることにも関心が高まるのではないかと思います。その際も、目新しいものを闇雲に追加するのではなく、今ある統一感を維持するように物を探すのかもしれません。

北欧の雑貨のデザインが良いという場合、個々の商品のデザインだけでなく、それらをまとめて配置した場合の統一感もデザインの良さを感じさせる一因のように思います。そしてデザインの良さは、静かで暗い長い冬の間に人の精神を安定させる役割を果たしているように思われてなりません。

北欧の雑貨は、小物をちまちま買ってもその良さは分からないように思います。部屋の中の雑貨を全て同じ会社のもので揃えるくらいでないと、その本当の意味は分からないように思います。また、雑貨そのものだけでなく、現在の家の作りや部屋の壁の色、採光など雑貨の周囲にあるものとの調和がとれていることも不可欠です。要は気持ちを落ち着かせるように室内に同じトーンを作ることが大切なのです。

以上、『ソストレーネ・グレーネ』が“日々の暮らしに驚きと幸せを見いだせるようなお店”を目指し、“幅広いラインナップ”を展開する理由についての考察でした。続いて、デンマーク人のコレクション癖との関係をお話したいと思います。続きは明日のブログで。