私は、街を定点観察する日は、あえて予習をしません。
新しい店ができると、ニュースもSNSもすぐに見つかります。でも、先に答えを知ってしまうと、人は「あると知っているもの」を探す目になります。
だから私は、現地へ着くまでは検索しないようにしています。知らないまま歩く人に近い感覚を、最初に残しておきたいからです。
店舗観察で予習をしない理由
店舗開発では多くの資料を扱いますが、街を歩く人に事前資料はありません。
何の店か分からない状態で、どこから存在に気づくのか。立ち止まるのか、通り過ぎるのか。
最初に受け取った感覚は、店舗の入口で起きる「秒判断」を考える材料になります。
黒いファサードを見て最初に感じたこと
新宿サザンテラスを定点観測していたとき、工事中の区画が真っ黒なファサードに変わっていました。
ファサードとは、建物や店舗の正面外観のことです。
真夏の強い日差しの中、黒い外壁が光を吸い込んでいるように見えました。
最初に浮かんだ感想は「暑そう」。
次に「何屋だろう?」でした。
近づいて初めて、タリーズのコンセプト店舗「PRIME FIVE」だと分かりました。
ここで残したいのは、ブランドを知る前に何を感じ、どの距離で店に気づいたかです。
店を見るときに残したい3つの観察ポイント
店舗を見つけたら、次の順番で記録すると第一印象を残しやすくなります。
1. 最初に目が止まったのは何か
最初に目が止まったものを、一つだけ書き留めます。
色でも、形でも、素材でも、サインでも構いません。
理由は考えなくて大丈夫です。
まずは「最初に気づいたもの」だけを残します。
2. 店名を読む前後で印象が変わったか
VI(ビジュアル・アイデンティティ)は、ブランドらしさを視覚的に伝える仕組みです。
店舗では、ロゴだけでなく、色、形、素材、サイン、照明、空間デザインなどが組み合わさり、そのブランドらしさを表現しています。
店名を読む前から「何となくらしい」と感じられたなら、それはVIが機能していたのかもしれません。
3. 商品が見えなくても「何屋か」が分かったか
商品が見えない店でも、ファサードやサインだけで「何屋か」が伝わるかを観察します。
第一印象を残してから情報を調べる
予習をしないこと自体が目的ではありません。
第一印象をメモしたあとで、ブランドの狙い、店舗デザイン、VI、VMD、立地条件を調べます。
そして再訪し、最初の感覚と実際の体験を比べます。
この店舗も開業後に昼と夜で観察し、黒いファサードが自然光と照明でどう変わるかを確かめようと思います。
知識を入れる前の感覚は、すぐに消えてしまいます。
次に街を歩くときは、答えを検索する前に、最初に見えた色や形を一つだけ残してみてください。
いつもの店や街でも、見え方が少し変わるはずです。
街には、毎日たくさんの「秒判断」があります。
この「秒判断ノート」では、街で見つけた第一印象を少しずつ観察していきます。
📖 秒判断シリーズ
店舗は「何を見るか」ではなく、「どう見るか」で見え方が変わります。
このシリーズでは、街を歩きながら店を見る目を育てる観察法を紹介しています。
「秒判断」とは、店舗を見た瞬間に人が無意識に行う第一印象の判断を表す、福徳社独自の考え方です。
▶ 「秒判断とは?」はこちら
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