SC店舗面積評価は、㎡だけでなくその“意味合い”も考える必要がある

 一般社団法人日本ショッピングセンター協会によりますと、2024年には36件のショッピングセンターが開業しました(出所:2024年オープンSC一覧表)。今年開業したSCは、店舗面積が40,000㎡を超えるものは『ゆめが丘ソラトス(約42,700㎡)』『エミテラス所沢(約42,700㎡)』の2件にとどまり、中型サイズのものが目立ちました。

 長い間、“店舗面積が広ければ広いほど、より広域からの集客が期待できる”と考えられてきたため、ショッピングセンターの集客力を店舗面積で測ろうとする癖がなかなか抜けません。しかし、ショッピングセンターの開業が至る所で進む昨今、その集客力を測ろうとする際には、店舗面積以外の観点も必要なように思われます。

 そこで、新しい観点として、店舗面積の“意味合い”を考えることを提案します。 仮に店舗面積がほぼ同じ2つのショッピングセンターがある場合、集客力もほぼ同じになることはまれで、集客力には差があるはずです。その要因を考えてみました。

新設ショッピングセンターの地域“断トツ度”を測る指標を考えてみた

 あるショッピングセンターの店舗面積が大きく、同じ地域に同規模以上のショッピングセンターが全く存在しない場合、そのショッピングセンターの集客力はかなり高くなるはずです。まだ大型ショッピングセンターが少なかった今から四半世紀前は、こうした高い集客力の見込める大型ショッピングセンターの開業が多かったわけです。

 しかし、同じ地域に複数のショッピングセンターが開業しているのが日本全国で当たり前となった今日、あるショッピングセンターの店舗面積の“断トツ度”のようなものをどう測ればよいか?

 ここでは、2つの指標を考えてみました。

 1つ目は、あるショッピングセンターの店舗面積が、同じ地域のショッピングセンターの店舗面積の合計に占める割合(%)です。ここでは〔店舗面積の地域シェア〕と呼びます。

  • あるショッピングセンターの店舗面積の地域シェア(%)が高い場合、利用される確率も高くなることが期待できます。
  • 逆に、同じ規模のショッピングセンターが同じ地域内に複数あれば地域シェア(%)は低くなり、選択される確率も分散することが考えられます。

 2つ目は、【A】あるショッピングセンターの店舗面積が、【B】同じ地域にあり店舗面積が次に広いショッピングセンターの店舗面積の何倍かを示す数字です。プロ野球の順位のゲーム差のようなイメージの数字です。ここでは〔1位・2位面積比率〕と呼びます。

  • 店舗面積1位のショッピングセンターの店舗面積が、2位のショッピングセンターの2~3倍あれば、その地域ではかなり広いショッピングセンターと認識されるはずです。
  • 1~1.5倍程度であれば、開業のインパクトもさほど大きくはなく、同じような規模のものがまたできた、と思われる程度でしょう。

“断トツ度”指標を使って、近年の新設SCを評価してみると?

 下の表は、2022年から2024年に開業した主な大型ショッピングセンターの“断トツ度”に関するデータを示しています。

2022年~2024年に開業した主な大型ショッピングセンター

今年オープンした大型ショッピングセンターの“断トツ度”は?

ゆめが丘ソラトス』は、店舗面積が40,000㎡超と大規模であるだけでなく、横浜市泉区での店舗面積シェアが約60%もあります。さらに、店舗面積が同区内第2位の『イトーヨーカドー立場店(19,000㎡)』の約2.2倍です。シェア、2位との差を加味すると、ゆめが丘ソラトスは横浜市泉区では“断トツ”首位のショッピングセンターといえます。

 一方、『アークスクエア湘南平塚』は35,000㎡と規模は大きいのですが、平塚市での店舗面積シェアが15.9%しかなく、ゆめが丘ソラトスに比べてかなり低いことが分かります。店舗面積も平塚市内では第2位で、首位の『三井ショッピングパークららぽーと湘南平塚(47,838㎡)』の約0.7倍です。

 横浜市泉区と平塚市では、大規模商業施設間の競争の激しさのレベルが大きく異なるため、同じ35,000㎡でも“意味合い”が異なるわけです。

 『エミテラス所沢』は、43,000㎡と大規模な施設です。所沢市での店舗面積シェアは21.9%で、横浜市泉区に比べると大規模商業施設間の競争は激しいと考えられます。店舗面積は所沢市内第2位の『ワルツ所沢(25,031㎡)』の約1.7倍で、規模のインパクトも十分に大きいとはいえないようです。

一昨年・昨年オープンした大型ショッピングセンターの“断トツ度”は?

 横浜市保土ヶ谷区に2023年に開業した『イオン天王町ショッピングセンター』は店舗面積は16,550㎡と中規模ですが、同区での店舗面積シェアは30.3%あり、第2位の『ホームセンターコーナン保土ヶ谷星川店(13,730㎡)』の約1.2倍です。規模のインパクトはそれほど大きくはないものの、同区の大規模商業施設間の競争レベルはまだ高いとはいえず、中規模ながら現段階では侮れない施設といえそうです。

 『ジ・アウトレット湘南平塚(30,000㎡)』は、大規模商業施設間の競争が激しいと考えられる平塚市に2023年に開業しました。店舗面積シェアは低く、首位との差も大きいことが考えられますが、実際に、平塚市での店舗面積シェアは13.3%と振るわず、同市内首位の『三井ショッピングパークららぽーと湘南平塚(47,838㎡)』の約0.6倍でした。

2022年以降開業大型SCで”断トツ度”が高い/低いのはどこ?

 〔店舗面積の地域シェア〕〔1位・2位面積比率〕の指標で評価したときに、近年開業したショッピングセンターで“断トツ度”が最も高いのはどこでしょう?

答えは、2023年に開業した『ららぽーと門真、三井アウトレットパーク大阪門真』です。店舗面積が60,767㎡と超大型であるだけでなく、大阪市門真市での店舗面積シェアは42.9%と高く、同市第2位の『そよら古川橋駅前(14,319㎡)』の約4.2倍もあります。

 一方で、2022年開業の『ふかや花園プレミアム・アウトレット(24,355㎡)』。ここは今年一度だけ平日に立ち寄る機会がありましたが、かなり閑散としており、気になっていた施設です。 数字を確認すると、深谷市での店舗面積シェアは17.2%、アリオ深谷(22,774㎡)の約1.1倍でした。

閑散としていたふかや花園プレミアム・アウトレット
ふかや花園プレミアム・アウトレット(2024年8月2日金曜日16:00頃撮影)
閑散としていたふかや花園プレミアム・アウトレット(フードコート)
ふかや花園プレミアム・アウトレット(2024年8月2日金曜日17:00頃撮影)

 参考までに、全国的にみて断トツ度が高そうなショッピングセンター2店舗(イオンレイクタウンゆめタウン光の森)の数字も掲載しました。

 〔店舗面積の地域シェア〕〔1位・2位面積比率〕は、大型SCの集客力を推測するのに使えそうな指標ですので、今後もこの視点を加味した新規・既存商業施設の分析結果を共有させていただきます。ほかにも開設年月が新しいものは集客力が高いことが考えられますし、ショッピングセンターの立地(郊外・単独型か都市部で駅近接か等)、利便性なども集客力に影響すると考えられますが、それらは別の機会に扱う予定です。

 以上、2024年最後のブログ投稿となりましたが、本年も大変お世話になりました。皆様どうぞ、よいお年をお迎えください。来年も当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。

(おまけ)ふかや花園プレミアム・アウトレット(2024年8月2日金曜日16:00頃撮影)を360度見渡した映像です。2025年は、皆様のデスクリサーチに役立つ現調レポート動画を弊社公式YouTubeチャンネルでもっと配信していこうと思っています。まずはカタチからということで、昨日、最新のVlogカメラCanon PowerShot V10ホワイトモデルを買ってみました。ぜひご期待ください。