消費者が新しくできた商業施設等に行く場合、入口から入って、その後、“主だったところ”は隅から隅まで一通り見て回ると考えるのが妥当です。敷地内に2つの館があった場合、一方は行かないということは考えにくいものです。地上6階・地下2階の計8階建ての施設であれば1階から入ったあと6階まで上って、地下2階まで下りて、また1階に戻って外に出るというルートをたどることが多いように思います。“せっかく来たのだから全部見なくちゃ”という意識が働くのだと思われます。イーアス高尾の初日でも、開業後すぐに入店したのち1時間経つか経たないうちに“一通り見てきた感”に満ちて退店して行った人を少なからぬ人数目撃しました。
店舗開発担当の皆様が仕事で限られた時間内に施設等の状況を見る際にも、それと似たような心理状況になっているのではないでしょうか?
そのような時に施設への入店から退店までの足取りを考えると、ずっと同じ速さということはないように思います。あるところでは足早になったり、あるところでは足を止めたり、また、あるテナントは目に入ったとしても記憶に残らなかったり、逆にあるテナントでは実際にお金を払っていたりと移動の速さには緩急があるように思います。そしてそれは一般の消費者も同じと考えて良いと思います。
そのように考えると、売る側は消費者はどのテナントも公平に、同じように時間をかけ、同レベルの注意力をもってそれぞれのテナントを目にしている、あるいは、人によっては自社のテナントだけを見ている、と考えてしまうかもしれませんが、現実はそうではないということになります。それは、行くのに“わざわざ感”のある場所だけでなく、メインの動線上やそれに近接している場所であったとして移動の速度の緩急が“急”にあたる場所は苦戦を強いられることがあるということを意味します。
繰り返しになりますがグランフロントは北館と南館があり“大阪駅-南館-北館”と並んでいます。今日お話したことを当てはめると、大阪駅から“せっかく来たのだから全部見なくちゃ”という意識の人の目的地は“北館”です。だとすれば南館は緩急の“急”です。ということで南館の方が入れ代わりが激しいのでは?という作業仮説を次回より検証したいと思います。