消費者行動調査から読み解く首都圏商業施設の近未来~専門店テナント企業は今後、新規出店の案件をどう判断するべきか?~(2016年3月講演録)

大型商業施設の開発の推移

講演録【1】からの続き)それでは、大型商業施設の開発はどう進んで来たのかを簡単に振り返ってみましょう。

ここでは、「大型商業施設」とは、一般社団法人日本ショッピングセンター協会が出しておられる「SC(大型商業施設)の定義」に準じてお話しします。

SC(大型商業施設)の定義(出所:一般社団法人日本ショッピングセンター協会『SC白書2016』)

ショッピングセンターの定義「一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるものをいう。その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、快適性、娯楽性を提供するなど、 生活者ニーズに応えるコミュニティー施設として都市機能の一翼を担うものである。」

「ショッピングセンターは、ディベロッパーにより計画、開発されるものであり、次の条件を備えることを必要とする。(1)小売業の店舗面積は、1,500平方メートル以上であること。(2)キーテナントを除くテナントが10店舗以上含まれていること。(3)キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。ただし、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500平方メートル 以上である場合には、このかぎりではない。4テナント会(商店会) 等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。」

大型商業施設の開発はどういう推移をたどったのかを、戦後から見てみました。

新規SCオープン数の推移(1952~2015)

【図】新規SCオープン数の推移(1952~2015)

すると、大型商業施設は、高度経済成長とともに増えてきたことがわかるのですが、90年代以降は、年間100店舗以上開いた年が続きました。様々な法律改正や、大店法改正の関係で、2000年は駆け込み出店があった年であるなど、その時々の事情もあるのですが、全体としては、90年代以降、新規の開業ラッシュが続いて来ました。“最近大型商業施設が増えすぎだろう”という感覚が出て来たのがこのあたりからです。

それでは90年代以降はどうなっているかというと、青い波線は新しく開いた大型商業施設の平均の店舗面積を示していますが大型化が進んでいます。オレンジ色の棒は5万平米を超える新規商業施設の件数を示していますが、非常に大きいサイズの商業施設の開発が増えるようになってきました。90年代以降に大型化し、巨大な商業施設の開発が進んでいるということが読み取れます。

SC面積巨大化の流れ

【図】SC面積巨大化の流れ

これは、2005年9月の週刊東洋経済の記事です。「SCほど儲かるビジネスはない」と、お祭り騒ぎのような時代でした。このころは、大きいところ=安全・大丈夫、という雰囲気でした。

「巨大化が高収益を生む新たな方程式」

【図】「巨大化が高収益を生む新たな方程式」(出所:週刊東洋経済2005年9月3日号)

大型以外のものも含めた全部のSC数の推移を見ていると、ご覧の通り、右肩上がりです。2000年以降も着々と数が上がっています。今、世の中に右肩上がりのものはなかなかありませんが、ショッピングセンターの数だけは着々と増えています。

総SC数の推移(1952~2015)

【図】総SC数の推移(1952~2015)

では、なぜショッピングセンターの開発がこんなに進んでいるんだろう、という点をまとめてみましょう。続きは講演録その【3】で。