『イオンモール木更津』に関する消費者行動データ速報

福徳社では、開業時に話題性の高かった首都圏大型商業施設につき、開業後1年以上を経過した現時点でどの程度消費者の日常的購買行動に定着したかを消費者行動から検証する独自リサーチ『商業施設利用実態調査2015』を実施しました。ここでは、2015年から調査を開始した新しい商業施設について、調査結果の速報をご報告します。

2015年から調査を開始した新しい商業施設『イオンモール木更津』は、2015年6月調査実施時点では、開業後7か月が経過していました。ここでは概要をご紹介します。

『イオンモール木更津』は、千葉県での認知度が高いが1都3県全体では低い点や、来客の7割が千葉県から来ている点などを見ると、大型商業施設に期待される広域からの集客が十分にできておらず、商圏の広がりが限定的になっている可能性が考えられます。

また、広域から集客できない場合、大型商業施設でも、1度来た人に2度目、3度目とリピートしてもらうことの重要性が高まりますが、開業直後に1度行ったきりの利用経験者が一定数出現している点が気になります。

その理由の一つとして、『三井アウトレットパーク木更津』『イオンモール幕張新都心』『酒々井プレミアムアウトレットモール』『ららぽーとTOKYO-BAY』など周辺の大型商業施設との競合が熾烈になっていることが考えられます。

リピート確保のためにも、競合に勝つためにも、顧客満足度が高く維持されるよう継続的にウォッチすべきだと考えます。

リサーチ結果(速報)
  • 認知度は、1都3県では18.2%にとどまるが、千葉県だけで見ると38.3%の消費者に認知されている。
  • 同様に、利用経験率も、1都3県では4.6%にとどまるが、千葉県だけで見ると12.0%の消費者が既に訪れている。
  • 出現した利用経験者23人中11人がリピートしているが、半数以上は開業直後に1回行ったきりである。
  • 今後利用意向では、出現した利用経験者23人中6人が、今後「利用したくない」「あまり利用したくない」と答えている点が気になる。
  • 利用経験者のプロフィールを見ると、未婚者の比率が高く、職業は「勤め人」が多い。
  • 来客の69.6%が千葉県から来ている。東京都・神奈川県・千葉県からの客は5%未満である。
  • 併用率のデータからは、『三井アウトレットパーク木更津』『イオンモール幕張新都心』『酒々井プレミアムアウトレットモール』『ららぽーとTOKYO-BAY』との熾烈な競合が読み取れる。
  • 「イオンモール木更津」利用経験者のうち、他の調査対象施設の利用経験があると答えた人の割合(併用率)は以下の通りである。
    • 「三井アウトレットパーク木更津」との併用者が78.3%にのぼる。「イオンモール幕張新都心」の併用者が69.6%、「酒々井プレミアムアウトレットモール」の併用者が43.5%と、このエリアにおける大型所業施設の競合の熾烈さが読み取れる。
    • 広域から集客している「東京ソラマチ東京スカイツリータウン」「渋谷ヒカリエ」「ダイバーシティ東京」の利用経験者が多いことは、他の商業施設と同様である。
    • 今回の調査対象施設以外でよく利用する商業施設を尋ねたところ、「イオンモール木更津」利用経験者の4分の1強にあたる6人が「ららぽーとTOKYO-BAY」をよく利用すると答えた。

以上です。ご自身の印象と比べて、いかがでしたか?

これまでの大型商業施設は、施設の規模を大型化し、そのテナントミックスにより魅力を高めれば顧客を遠方からでも集めることができるという考え方に基づき、立地を主体的に創造してきました。

しかし、この首都圏の大型商業施設の利用実態調査を見ると、限られた領域に複数の大型商業施設の開発が進めば、単に施設の規模が大きく、希少性のあるテナントがあるという理由だけで、広域からの集客、更には、顧客の常連化が達成できるとは限らないということが考察できます。

また、開業前はもちろんですが、開業後も新たな情報を継続的に発信していくことが、施設そのものの認知度を維持・向上するために必要であることが考察できます。消費者は記憶した事柄を容易に忘却するものであり、何の刺激もなければ認知度は低下します。周囲に新たな商業施設が次々と開業すれば猶更です。