消費者が「定着しなそう」な商業施設に分類された『イオンモール幕張新都心』~その理由と背景を消費者行動データから読み解く~

福徳社では、開業時に話題性の高かった首都圏大型商業施設につき、開業後1年以上を経過した現時点でどの程度消費者の日常的購買行動に定着したかを消費者行動から検証する独自リサーチ『商業施設利用実態調査2015』を実施しました。その結果の概要をお知らせします。

『イオンモール幕張新都心』は、本リサーチの分析結果では、『イケア立川』とともに【消費者が「定着しなそう」な商業施設】グループに分類されました。開業から1年少々とまだ新しいことから、リーセンシー(直近で利用したのはいつか)は当然に高いものの、フリークエンシー(利用頻度)が低いためです。開業後の時間の経過とともにリーセンシーは下がっていく傾向があるため、このまま顧客の利用頻度が上がらなければ、近い将来「定着していない」商業施設のグループに入ってしまう可能性もあります。

レポート「商業施設利用実態調査2015【イオンモール幕張新都心編】」では、リサーチ結果データの表やグラフとともに詳しく解説していますが、ここでは概要をご紹介します。

リサーチ結果(サマリー)
  • 『イオンモール幕張新都心』は、その利用経験者中、開業後1年5ヶ月を経過した2015年調査時点において、一度だけしか利用していない人の割合が48.2%にのぼります。また、開業直後に利用した人のうち、一度だけしか利用していない人も38.3% にのぼります。このように、開業後に一度だけ行ってみたものの、「何らかの理由」によりリピートしていない利用経験者が相当数存在します。
  • 消費者による忘却のスピードが比較的早く進行している点も気になるところです。
  • 顧客のフリークエンシーが思うように高まらない原因は、実際に現地を確認したところ、4つの目的の異なるモールが距離的に離れており、駐車場に駐車し施設内に入ると、複数の買い物目的を達成するためには相当な距離を移動せざるを得ないため、日常的な買い物の場としては使い勝手に難があることが、可能性として考えられます。
  • 『イオンモール幕張新都心』は、オフィスビルや広域から集客する力のある施設の集積が進んだエリアに立地し、本来、商圏の広がりの点では申し分ないはずです。しかし、利用経験者が主に千葉県の住民であることから、大型の施設に期待される広域からの集客が十分にできておらず、商圏の広がりが限定的なことが分かります。商圏が思うように広がらない原因の一つとしては、千葉エリアで、より新しいイオンを含む話題の大型商業施設開業が相次ぎ、顧客の争奪戦となっていることが考えられます。このような競合の激化は、消費者のフリークエンシーが上がらない原因の一つでもあるでしょう。
  • 『イオンモール幕張新都心』をとりまく環境には、競合、消費者による忘却、施設の構造、といった課題がありそうです。
リサーチ結果(詳細)

1.認知度

『イオンモール幕張新都心』を「知っている」と答えた人の割合は、全回答者(1都3県に住む男女合計)の35.8%でした。近隣の『三井アウトレットパーク木更津』『酒々井プレミアムアウトレットモール』と比べて7~8ポイント低く、その規模と新しさの割には認知が低いといえるでしょう。

  • 都県別の差を見ると、千葉県で認知度が高く、66.2%にのぼる。東京都・神奈川県・埼玉県では認知度は3割を切っている。
  • 性別の集計では有意差はない。性年齢別集計では、30~40代の女性の間で特に認知度が高い。

開業直後だった前回調査(2014年6月)時点での『イオンモール幕張新都心』の認知度は50.3%あったため、忘却が進んでいることが分かります。

  • 1都3県でまんべんなく忘却が進んでいるが、足元の千葉県でも認知度が12.4%下がっている。
  • 男女別集計では、男女ともに忘却が進んでいる。男女年齢別集計では、若い男女とシニア男性の間で忘却が進んでいる。

2.利用経験率

『イオンモール幕張新都心』を「利用したことがある」と答えた人の割合は、全回答者(1都3県に住む男女合計)の16.8%にとどまりますが、千葉県だけで集計すると、千葉県では利用経験率が4割と高いことが分かりました。

  • 東京都、神奈川県、埼玉県での利用経験率は1割を切っている。
  • 大型の施設に期待される広域からの集客が十分にできておらず、商圏の広がりが限定的なことが分かる
  • 男女別・性年齢別では、利用経験率に有意差はない。老若男女の幅広い客層に利用されているといえる。
  • 『イオンモール幕張新都心』利用経験者プロフィールの特徴をみると、男女比、年齢層比、職業別、婚姻の有無では全回答者との有意差はなかった。老若男女幅広く来客しているといえる。居住都県では、千葉県民が利用経験者の65.1%と多数を占める。

前回調査(2014年6月)時の『イオンモール幕張新都心』利用経験率との今回調査との差異をみると、全体、県別、制年齢別の全てにおいて有意な変化はみられませんでした。

  • ニュートライヤーの拡大が既に頭打ちになっている兆候ともとれる。

3.利用経験者の利用状況

『イオンモール幕張新都心』利用経験者の利用状況のデータです。

  • 『イオンモール幕張新都心』利用経験者の56.6%が「開業直後に行った」と答えている。
  • 開業直後利用者の61.7%が、その後再び訪れている。
  • リピーター比率は51.8% である。一方、1回利用したきりの人が48.2%にのぼる。
  • 平均利用回数は2.45回である。
  • 定着率は24.1%で、調査対象施設平均を上回る。
  • リーセンシー平均が5.6ヶ月と、調査対象11施設の平均よりも短い。1年以上利用していない人の比率は平均より低い。開業後まだ1年しか経過していない時点で調査したため、当然である。
  • 利用経験者の今後利用意向では、利用意向の高い層が86.7%を占める。

4.他の商業施設との併用状況

商業施設利用実態調査2015【イオンモール幕張新都心編】では、『イオンモール幕張新都心』利用経験者のうち、他の調査対象商業施設の利用経験があると答えた人の割合(併用率)詳細に示しています。この商業施設が立地するエリアでは、大型商業施設が競合し、限られた市場で顧客の買物機会を激しく奪い合っていることが明らかとなる結果となりました。

  • 『イオンモール幕張新都心』利用経験者のうち、他の調査対象施設の利用経験があると答えた人の割合を集計したところ、広域から集客している『東京ソラマチ東京スカイツリータウン』『ダイバーシティ東京』『渋谷ヒカリエ』の併用率が高かった。これは、他商業施設利用者と同様である。
  • 特筆すべきは、商圏が重なる『三井アウトレットパーク木更津』『酒々井プレミアムアウトレットモール』との併用率が4割前後と高い点である。開業後7か月の新しい『イオンモール木更津』との併用者もすでに2割出現している。
  • 今回の調査対象施設以外でよく利用する商業施設を自由回答で尋ねたところ、『イオンモール幕張新都心』利用経験者の26.5%が『ららぽーとTOKYO-BAY』を挙げた。商業施設名を助成していないことを考えれば、高い数値である。『ららぽーとTOKYO-BAY』を自由回答で挙げた利用経験者比率は調査対象施設中でも最も高く、競合していることが読み取れる。
  • 他の調査対象施設利用経験者に尋ねると、『酒々井プレミアムアウトレットモール』利用経験者と『三井アウトレットパーク木更津』利用経験者の4~5割が『イオンモール幕張新都心』の利用経験ありと答えた。このエリアでは、大型商業施設が競合し、限られた市場で顧客の買物機会を激しく奪い合っていることが明らかとなった。

以上です。ご自身の印象と比べて、いかがでしたか?

これまでの大型商業施設は、施設の規模を大型化し、そのテナントミックスにより魅力を高めれば顧客を遠方からでも集めることができるという考え方に基づき、立地を主体的に創造してきました。

しかし、この首都圏の大型商業施設の利用実態調査を見ると、限られた領域に複数の大型商業施設の開発が進めば、単に施設の規模が大きく、希少性のあるテナントがあるという理由だけで、広域からの集客、更には、顧客の常連化が達成できるとは限らないということが考察できます。

また、開業前はもちろんですが、開業後も新たな情報を継続的に発信していくことが、施設そのものの認知度を維持・向上するために必要であることが考察できます。消費者は記憶した事柄を容易に忘却するものであり、何の刺激もなければ認知度は低下します。周囲に新たな商業施設が次々と開業すれば猶更です。

商業施設利用実態調査2015【イオンモール幕張新都心編】では、より詳細なデータをご利用いただけます。福徳社ストアにて販売を開始しました。

 

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