大きな看板がある。色も鮮やかで、遠くから目に入る。それでも、何を扱う店かは分からない。
このような店舗を「視認性がよい」と評価するか、「視認性に難がある」と評価するか。どちらか一つに決めようとすると、議論がかみ合わなくなることがあります。
見えている点と、伝わっていない点の両方があるからです。
新刊『店舗開発×AI ― 視認性評価の実務』では、店舗の存在に気づくことから、何の店か識別・理解することまでを対象に、四つの項目で見え方を整理しています。
四つに分けると、問題の場所が分かる
一つ目は「視覚的露出」です。店舗本体や看板などの手掛かりが、接近経路から見えるか。柱に隠れている、角度によって表示面が見えない、といった問題はここで扱います。
二つ目は「注意獲得」です。手掛かりは見えていても、周囲の広告や他店の表示に埋もれていれば、目に留まりにくいかもしれません。何が写っているかに加えて、周囲との関係を見ます。
三つ目は「個店分離」です。その表示が、一つの店舗の手掛かりとして区別できるかを確認します。集合看板全体は目立っていても、個別のテナント表示が看板群の一部に見えている場合があります。店舗本体が見えなくても、一店の表示として独立していれば評価できます。
四つ目は「店舗理解」です。店名やブランドが識別できるか、どのような商品・サービスを提供する店か分かるかを確認します。本書では、この二つを別々の欄で記録します。
店名が読めることと、業態が分かることも違う
知らないブランド名が大きく書かれていても、その名称だけで提供内容が分かるとは限りません。反対に、「クリーニング」と読めれば、店名が不明でもサービスの種類は分かります。
ブランドをよく知る人は、ロゴだけで何の店か理解できることもあります。そのとき、写真に見える情報で理解した部分と、もともとの知識で補った部分を分けておくと、評価の根拠が明確になります。
生成AIの回答でも、この区別が必要です。ブランド名を認識した結果、写真に写っていない商品やサービスまで説明していることがあるためです。
総合点より、項目の組み合わせを見る
例えば、表示はよく見え、周囲の中でも目を引くが、何の店か分からない場合。まず検討したいのは、提供内容を伝える表示です。単に看板を大きくしても、課題が解消するとは限りません。
一方、店名や業態の表示は十分でも、主な接近方向から柱に隠れている場合には、表示内容より、位置や見える角度を確認する必要があります。
この二つを一つの点数にまとめると、改善すべき場所が分かりにくくなります。本書では、各項目の採点と根拠を並べ、単純な合計点で優劣を決めない方法を採っています。
四項目は、写真を読み解くための共通の観点です。人間が必ずこの順番で認識することを測定・証明するものではありません。
二店舗を比べると、説明が具体的になる
同じ街路写真の中で、二つの店舗を比較してみると、差が分かりやすくなります。
一方は大きな表示があるが、周囲の看板と一体に見える。もう一方は表示面積が小さくても、一店の表示として区別しやすい。このように、同じ環境でも項目ごとの評価は異なります。
比較の目的は、優れた店と劣った店を決めることではありません。その撮影地点で、どの手掛かりがどう見えるかを説明することです。距離や接近方向を変えれば、評価が変わる場合もあります。
「視認性に難がある」という言葉の中身を分けると、現地で確かめることや改善の方向が具体的になります。本書の二店舗比較ケースも、その読み方を身につけるために用意しました。
書籍のご案内
『店舗開発×AI ― 視認性評価の実務』では、四項目の採点基準、実務プロンプト、二店舗比較ケースを収録しています。
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次回は、こうした評価に使う写真の撮り方と、生成AIへの質問の順番を紹介します。
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