「この物件は視認性がよいと思います」
店舗開発の実務では、よく使う説明です。しかし、会議で「どの方向から見た話ですか」「周囲にある店と比べて、何がよいのですか」と尋ねられると、言葉を補う必要が出てきます。
看板が大きい。遠くから見える。通行量の多い経路に面している。いずれも手掛かりにはなりますが、それだけで店舗の見え方を十分に説明できるとは限りません。
福徳社では、この問題を写真と生成AIで扱う実務書『店舗開発×AI ― 視認性評価の実務』を出版しました。今回は、本書を書くことになった背景を紹介します。
同じ「よく見える」に、違う判断が入っている
ある担当者は、看板が遠くから見えることを高く評価するかもしれません。別の担当者は、周囲の店より目を引くかを気にするでしょう。さらに別の担当者は、何の商品やサービスを扱う店か分かることを重視するかもしれません。
これらは、いずれも店舗の見え方に関係する話です。ただ、見ている点が違うまま「よい・悪い」だけを記録すると、後から比較することが難しくなります。
評価の違いが、物件の違いから生じたのか。それとも、担当者が重視した点の違いから生じたのか。説明や記録の中で、この二つが混ざってしまうのです。
特に、複数の担当者が調査する場合や、過去の物件と比較する場合には、「何を見て評価したか」が残っていることが重要になります。
写真を共通の根拠にする
写真があれば、その場にいなかった人も見え方を確認できます。しかし、店舗がよく見える位置から撮った一枚だけでは、通行人が接近するときの状況まで分かりません。
また、同じ写真を見ても、注目する要素は人によって異なります。そこで、撮り方と質問の仕方を揃え、評価の根拠を言葉にする手順を考えました。
生成AIには、写真の中で看板が占める位置、周囲との色や明暗の対比、柱や街路樹による遮蔽など、見え方に関係する要素を整理させます。「目立つ」という回答であれば、どの部分が、何との比較で目立つのかまで説明させます。
根拠が具体的になれば、人間も回答を点検しやすくなります。「その文字は写真では読めない」「その看板は隣の店のものだ」といった誤りも、確認する場所が明確になります。
AIで評価が揃うかは、手順と検証の問題
生成AIを使えば、評価者による違いが自動的になくなるわけではありません。使う写真、質問、AIの設定などによって回答は変わり得ます。
本書で目指したのは、撮影条件、評価項目、質問、記録の仕方を揃え、回答のどこを確認すればよいか分かる状態をつくることです。評価のばらつきをどの程度抑えられるかは、実務で繰り返し使いながら確かめる必要があります。
売上予測に視認性の評価を取り入れる場合にも、この区別は欠かせません。根拠を整理できることと、その評価値が売上予測の精度向上に役立つことは、別に検証すべき課題です。本書の採点を、そのまま検証済みのモデル変数として扱うものではありません。
物件会議で、次の確認へ進める説明に
「視認性に難があります」という説明だけでは、何を確認すればよいかが分かりません。
「主な接近方向では柱に看板の一部が隠れる。一方、反対方向では表示が見える」と説明できれば、経路ごとの重要度や、看板位置の調整可能性など、次の検討へ進めます。
本書では、店舗視認性を四項目に分け、撮影、生成AIへの質問、回答の確認、説明の順に扱いました。コピー&ペーストで使えるプロンプトと、同じ景色の二店舗を比較するケースも収録しています。
担当者の経験を、ほかの人が確認できる言葉で残す。そのための道具として、写真と生成AIをどう使うか。物件調査や会議での説明に携わる方に、ご活用いただければと思います。
書籍のご案内
『店舗開発×AI ― 視認性評価の実務』
加藤 拓・小泉 真理 著/株式会社福徳社 発行
Amazon Kindleで発売中です。(税込980円)
https://amzn.asia/d/05zGmknv

次回は、「見える」「目に留まる」「何の店か分かる」の違いを、四つの評価項目から考えます。
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