これまでの小売業やサービス業の研究では、主に“店内に存在する目先のお客さん(以下、顧客)にどう対応するかという問題に焦点が置かれてきました。その結果、“店内に顧客がいるのが当たり前”、あるいは、“店を開ければ顧客は自然に来てくれる”という勘違いが蔓延しているように思えてなりません。

そのため、開店した後になって思うように集客が伸びず、開業前の予測金額に売上が到達しないような場合、“短期的に変えられる店舗内部の要因”(商品、価格、接客サービス、内装など)を改善し、“量的に不十分な数の顧客”の満足度を高めることで現状に対処しようとしがちです。しかし、それは、長期的な売上の改善にはつながらない、というケースが多いのではないでしょうか?

例えば”顧客満足“という言葉がありますが、その分析対象はあくまでも顧客です。そこでは、どうしたら顧客は満足しリピートしてくれるかに関心が寄せられ、それに向けて商品、価格、接客サービスなどの戦略要素をどう改善するべきかが検討されてきました。

顧客満足の前に考えるべきことは、どうやって新たに顧客を獲得するかということです。もちろん利便性の高い立地に出店することも必要ですが、それだけで十分かというと、そうではありません。なぜなら、大半の(まだ顧客になっていない)一般消費者は“何屋だか知らない・わからない店(認知していない店)”には入店しないためです。

一般消費者はリテーラーの屋号・ブランドをまず認知し、更に、行動範囲内に実際の店舗が存在することを知ることによって、実際に入店するのです。

リテーラー、とりわけ広告宣伝に十分な予算が割けない成長初期段階のリテーラーは、屋号・ブランドの認知度の向上と出店を別個のものとして考えるのではなく、ある一定の領域に十分な数の店舗を配置することにより、認知度と立地の利便性を同時に向上させるような出店計画を立てる必要があります。

当社では、日本国内で展開する複数のブランド・屋号の関東圏における認知度を調査し、出店方法と認知度の関係をレポートします。

昨今、屋号・ブランドの営業譲渡に関するニュースを多く耳にしますが、こうした動きの先を占うことも試みたいと思います。詳しくはこちらをご覧ください。