業務自体はなくならない。しかし…

環境変化の激しい昨今ということで、また自省の念も込めて、今日は、店舗開発のキャリア形成というトピックで、今思うところをお話したいと思います。

店舗開発という仕事に今後どう関わっていくか?やや“余計なお世話”なお話になってしまったら恐縮ですが、よろしければお付き合いください。

そもそも“キャリア形成”とは?

よく聞く言葉ですが、“キャリア形成”とはそもそもどういう意味なのでしょうか。転職サイト「ビズリーチ」さんによると、

「人生の計画を立て、必要なスキルを身に着けたり」「経験を積み重ねたりすることによって」「自己実現をはかるプロセス」

キャリア形成とは? 今のビジネスパーソンに求められるキャリア形成とそのポイントを伝授 https://www.bizreach.jp/column/ctrt-no64/

だそうです。

自己実現を図るプロセス、というと非常に壮大な感じがしますが、人それぞれがビジネスをして生きていく中で最終的な着地点をどうしたいか、そういったことに関わる言葉ということでしょうか。いずれにしましても、自己実現を図るプロセスなのだそうです。これは、今のビジネスパーソンに求められることなのだそうです。

終身雇用が崩壊しているといった文脈の中で、自分の人生の計画を自分で立てて、必要なスキルを身に着けて、経験を積んで、最終的に自分が実現したいことを成し遂げる。そのためのプロセスを自分で考えて作っていきましょう。そういうことが重要で、今、ビジネスパーソンに求められているんですよ。そんなことが書いてあります。

店舗開発という仕事の将来は?

今、店舗開発、出店ということを考えると、暗いニュースが多いです。長引くコロナ禍、巣ごもり消費の定着。業績不振で店舗を閉店する会社が出てきて、最近では大量閉店などという言葉も耳にするようになってきました。

確かに、時代的要因もあるのでしょう。が、今閉店している店舗の中には、かつてバブル時代や経済成長・人口増加をしていた時代には「マル」だった出店が、バブル崩壊やデフレ等の環境変化の中で「マル」が「サンカク」になってきていた。それが、このコロナ禍で、いよいよ「バツ」になってきた。このように考えるべきものも、多く含まれているように思います。

言い換えると、昨今の閉店は、もう役割が終わっていたとか、一昔前は「マル」だったものが時代が変わって「バツ」になってしまっていた。そこを閉めていると考えるべき場合も多いように思います。

暗いニュースばかりではありますが、次は?これからはどうするんだ?ということを考えていくことが必要なわけです。これまでと同じやり方で済むかというと、そういうわけではないようです。

キャリアとしての店舗開発業務の現状は?

店舗開発を担当されている方々や、元同僚に会って聞いた話を総合すると、店舗開発の仕事は、担当者レベルの給与水準は、現状、あまり高いとはいえないようです。

また、店舗開発の業務経験者の人数は増えているようです。店舗開発という言葉も、転職市場では以前よりもだいぶ使われるようになってきたようです。業務経験者が増えている、つまり人材の“供給”が増えているから、給与水準は上がる傾向にはない、ということが考えられます。

収入を上げたいということで、少しポジションの高い仕事を考えるようになると、店舗開発部門がある企業の役員・部門長・部長といった管理職のポストを目指すことになります。こういったポジションは、あることはあるのですが、昔よりポストの数がだいぶ少なくなっていると言われています。

ポストの数が少ない中に人材の供給が増えているので、当然、空きもあまりないということになります。ですから、チャンスがあると転職をするという人の話も、最近よく聞きます。

店舗開発の仕事自体はなくならない

暗い話が続いてきましたので、少し明るい話をしたいと思います。

この店舗開発という仕事そのものがなくなってしまうということは、考えにくいです。店舗ビジネスそのものがなくなってしまうことが考えづらい、というのと意味は同じです。

総人口が減少しているといっても、1億人超の人口がある国は世界的にもそうありません。

再開発も続きます。日本は土地がもともと狭いうえに、平らな土地、人が住んだり商売をできる場所が限られているわけです。その限られた土地を有効に使うために、建物の新陳代謝といいますか、新しいものを建てて、古いものは壊す。古いものを壊したら、新しいものを建てる。こういう再開発を繰り返しながら街をいい状態に保つことが、江戸時代から続いている国です。

こういったものが今後も続いていくと考えますと、店舗ビジネスがなくなる、店舗開発という仕事そのものがなくなるということは考えにくいわけです。

しかしながら、ひと昔・ふた昔前の経済成長やバブルの時代ではなく、成熟した市場で総人口も減少するという大きな変化がある中では、やはり仕事の数や店舗の出店数全体は、このままだと減少すると考えた方がよいと思います。

では、そのような中で、キャリア形成をどう考えていくべきなのでしょうか?

今後どうしていかなければいけないか?

一つ言えることは、少し厳しい言い方になってしまいますが、店舗を出店できるだけでは不十分だということです。出店数全体が減少していく中で、業務経験者は増えているわけですから、お店を出店するだけであれば、“代わり”となる人材はいる、とう時代になったわけです。

では、どうすればよいかというと、“代わりがいない”人になればよいわけです。代わりがいない人になって、収入も上げたいとなると、出店できること以外の能力、特に、店舗開発部門を統括できるような管理職としての能力を開発していけばよい、ということになります。

この管理職としての能力というのは、身につけると応用がききますし、使える場所がたくさんあります。そのためには、発想を変える必要や、新しい考え方を取り入れる必要があります。

勤め先が出店をやめてしまったら?

また、店舗開発業務に特有な前提として、その仕事をするためには、勤め先が出店をしている会社である必要があります。よって、自分のいる会社の経営方針が変わり、出店に消極的になると、仕事がなくなってしまいます。そのような場合は、どう考えればよいのでしょうか。

よくあるコースの一つは、社内異動です。社内で異動して、別の仕事につくという考え方があります。

異動は嫌だ、店舗開発という仕事を続けたいとなりますと、出店をしている会社に転職することが考えられます。しかしこれが、業務経験者も増えている中、なかなか高い収入に結びつかないわけです。

と考えますと、転職にあたっては、別の発想も必要になってきます。例えば、何か新しい屋号を成長させるという気持ちを持つ必要があると思います。今あるものを増やす店舗開発ではなく、今まだ店舗がないか、少なくて知っている人があまりいないものを成長させる。そのために自分のノウハウや経験を使っていくんだ、といった考え方も必要だと思います。

転職先についての新しい発想とは?

具体的には、海外のチェーンで日本にまだ参入していない会社の日本初参入や、日本国内での展開に携わることが、一つの可能性として考えられます。あまり情報が出回っていませんが、よく調べてみますと、海外では多くの新しいチェーンが誕生して、店舗数を増やしているものです。

それから、日本国内企業の、異業種の小売参入に携わることも考えられます。異業種というのは、流通業の中でも、小売業ではなく製造業や卸売業など、もともと消費者と直に接する店舗を持たなかったような業種の会社が、出店して店舗を構えたいという話はよくあります。こういう流れから、新しい屋号が出てくることがあり得るわけです。

さらに、企業の多角化・拡大計画に伴って、これまで小売に参入していなかった会社が小売に参入する、地域の会社や零細企業で店舗数がまだ非常に少ないところが、多店舗化をするといったことも考えられます。

こうした流れから生まれる新しいテナントを見つけ、ご自身の店舗開発のノウハウや経験を活かして育て、増やしていく、といった発想も必要になってくると思います。

これを奇貨として独立する、という考え方もあります。これから多角化する会社や零細企業などは、店舗開発担当者をフルタイムの社員として雇えないところもあります。そうした会社と業務委託契約し、複数の屋号の店舗開発業務を手伝っている元同僚もいます(私自身も独立開業組の一人です)。

他に私の知っている事例を考えますと、物件を借りる側ではなく、テナントに貸す側の会社に転職する人もいます。ディベロッパーさんや、商業施設そのものを経営している会社、あるいは不動産会社、仲介をする側に移った人もいます。

ここに書いていないことでも、考え方によっては色々なキャリア形成が可能だと思います。

時代が変わり、働き方は変わっても、店舗ビジネスにおける「店舗開発という仕事」そのものの重要性が変わることはありません。ぜひご一緒に、前向きに柔軟に、キャリア形成を考えてまいりましょう。

弊社YouTubeチャンネルミニ講義もアップしましたので、ぜひご覧ください。