「雀荘」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。
タバコの煙が立ち込める雑居ビルの一室、常連客が集まる閉鎖的な空間、そして大人の遊び場——。
こうしたイメージを持つ方も少なくないでしょう。
しかし現在、その雀荘業界では大きな構造変化が起きています。
健康麻雀や認知症予防への活用、Mリーグの人気拡大、さらには24時間無人営業という新しい業態まで登場し、「昭和の社交場」だった雀荘は、「令和の頭脳エンターテインメント」へと姿を変えつつあります。
今回は、雀荘業界を店舗開発・出店戦略の視点から読み解いてみます。
長い衰退期を経て、新しい成長局面へ
雀荘は昭和から平成初期にかけて、一万店を超えるともいわれるほど普及しました。
当時の主要な利用者は成人男性で、ビルの上層階や地下に立地する店舗が多く、賭け麻雀や喫煙などと結び付いたイメージが強い業態でした。
しかし平成以降、
- 若者の麻雀離れ
- コンプライアンス意識の高まり
- 従来型雀荘へのマイナスイメージ
などを背景に、業界は長い衰退期に入ります。
ところが2010年代以降、状況が変わり始めました。
2018年にはMリーグが発足し、ネット麻雀も急速に普及します。さらに健康麻雀や知育、認知症予防など、新しい価値が加わったことで、女性や高齢者、若年層にも利用者が広がり始めています。
つまり、麻雀そのものの社会的な位置付けが変化しているのです。
なぜ雀荘チェーンは増えにくかったのか
店舗開発の視点で見ると、雀荘はもともと多店舗展開が難しい業態でした。
その理由は大きく三つあります。
一つ目は、店舗の回転率が極めて低いことです。
麻雀は一卓四人で長時間プレーするため、飲食店のように短時間で席が回転しません。結果として、一店舗当たりの売上には上限が生まれやすく、大規模投資によるチェーン展開のメリットが小さくなります。
二つ目は、地域コミュニティへの依存です。
多くの雀荘は店長や常連客との人間関係によって成り立っています。この属人的なコミュニティが新規顧客にとっては「入りづらさ」にもつながり、オーナーが目の届く範囲で数店舗を運営するケースが多くなります。
三つ目は、風営法による規制や業界イメージです。
資金調達や金融機関からの評価という点でも、飲食店などと比べると多店舗化しにくい環境がありました。
このような条件から、現在でも雀荘の多くは単独店舗であり、小規模事業者が多数存在する市場構造となっています。
店舗網にも様々な戦略が現れている
雀荘チェーンを調べると、店舗網の作り方にも違いがあります。
全国へ広く店舗を展開するチェーンもあれば、地域に集中してドミナントを形成する企業もあります。また、わずか二店舗で広域展開しているケースも見られます。
店舗数そのものは決して多くありませんが、それぞれが異なる店舗網戦略を採用している点は非常に興味深いところです。
これは福徳社でも繰り返しお伝えしているように、「どこへ出店するか」だけではなく、「店舗網をどう構築するか」が競争力を左右することを示しています。
新しいチェーンモデルが次々と生まれている
近年の雀荘業界では、従来とは異なる成長モデルが現れています。
例えば、大手資本によるチェーン展開です。
最新の全自動卓やスマートフォンアプリを活用し、店舗品質を標準化することで、従来型雀荘とは異なるブランドを構築しています。
また、フランチャイズというより「ライセンス供与」に近い形で全国へ広げるモデルもあります。
麻雀教室の運営ノウハウや講師育成システムを提供し、既存施設を活用して店舗網を形成する方法です。
さらに特徴的なのが、Mリーガーなどのプロ選手と連携した店舗運営です。
プロが来店するイベントを開催し、地方店舗でも集客力を高める仕組みを構築しています。
これは飲食店で言えば、有名シェフやインフルエンサーとのコラボレーションに近い発想と言えるでしょう。
積極出店するチェーンも現れた
業界全体を見ると、多店舗化はまだ限定的ですが、積極的な出店を進める企業もあります。
動画で紹介したマーチャオグループは全国約70店舗を展開し、駅徒歩3分以内という明確な立地基準を掲げながら店舗網を拡大しています。
興味深いのは、「40〜60坪」「主要駅徒歩3分以内」という具体的な物件条件を公開している点です。
これは駅利用者の行動導線を意識した店舗開発であり、カラオケやダーツなどの都市型レジャー業態とも共通する考え方が見て取れます。
中国では”無人雀荘”が急拡大
さらに海外へ目を向けると、中国では新しい業態が急速に普及しています。
24時間営業の完全無人セルフ雀荘です。
予約から入室、解錠、卓の電源管理までスマートフォンで完結し、人件費を極限まで削減しています。
オーナー一人で複数店舗を管理できるため、損益分岐点も低く、短期間で投資回収できるケースもあると言われています。
日本では風営法など制度面の違いもありますが、今後、無人運営や省人化の考え方が雀荘業界にも広がる可能性は十分考えられるでしょう。
まとめ──「雀荘」ではなく「頭脳エンターテインメント」と考える時代へ
雀荘は、かつての遊興施設という位置付けから、大きく変わろうとしています。
健康麻雀、認知症予防、Mリーグ、プロとの連携、ライセンス型チェーン、さらには無人営業。
こうした変化を見ると、業界全体が新しい市場を開拓しようとしていることが分かります。
店舗開発の視点で重要なのは、「麻雀」という商品が変わったのではなく、その提供価値と利用シーンが変わったことです。
市場の概念が変化すれば、求められる立地も、店舗フォーマットも、店舗網の作り方も変わります。
雀荘業界はまだ小規模事業者が多い市場ですが、だからこそ今後のチェーン化や業態転換の余地も大きい市場と言えるのではないでしょうか。
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