CoCo壱番屋減益から考える、「成熟市場」の店舗開発戦略
カレーハウスCoCo壱番屋の2026年2月期決算では、最終利益が前年比19.2%減という厳しい結果となりました。原材料価格の高騰や値上げによる客数減少が主な要因と報じられています。
このニュースだけを見ると、「物価高だから仕方がない」という話で終わってしまいます。
しかし、店舗開発の視点で見ると、もう一つ重要な変化が見えてきます。
それは、カレー市場そのものが成熟し、競争構造が大きく変化しているということです。
今回は、CoCo壱番屋の決算を入り口に、カレーショップ業界の出店戦略について考えてみたいと思います。
CoCo壱番屋が市場をつくった時代
現在のカレーショップ市場は、CoCo壱番屋が育てたと言っても過言ではありません。
全国どこでも同じ味を提供し、トッピング、辛さ、ライス量を自由に選べるスタイルを確立し、カレーショップを全国区の業態へと押し上げました。
店舗開発の観点で見ても、チェーンとして安心感のあるブランドを全国へ広げ、市場そのものを拡大した功績は非常に大きいでしょう。
市場成熟で起きた”好みの細分化”
ところが、市場が成熟すると消費者は経験を積みます。
カレーなら何でも良い時代ではなく、
- 欧風カレー
- スパイスカレー
- 金沢カレー
- スープカレー
- キーマカレー
など、それぞれに好みが分かれるようになります。
これは多くの成熟市場で共通して起こる現象です。
市場全体は大きいままでも、その内部は細かなニッチ市場へ分断されていきます。
その結果、個人店も参入しやすくなり、地域によっては局地戦が激しくなります。
「カレーなら売れる」は通用しない
カレーは日本人にとって非常に身近なメニューです。
一方で、調理工程が比較的シンプル、小規模店舗でも開業可能、初期投資を抑えやすい、といった特徴もあり、参入障壁は決して高くありません。
つまり、市場規模が大きい一方で参入企業も非常に多い。
そのため、競争は想像以上に激しい市場なのです。
店舗開発では、このような市場を「コモディティ化しやすい市場」と捉えることができます。
各チェーンは”売り方”で差別化している
今回動画では、いくつかのチェーンを紹介しました。
興味深いのは、それぞれが単に「美味しいカレー」を売っているのではない点です。
例えば、ゴーゴーカレーは、厨房の効率化や高速提供を前提に、ロードサイドからフードコートまで対応できるフォーマットを構築しています。
日乃屋カレーは、狭小物件や居抜きを積極活用することで、小型店舗でも成立するモデルを作っています。
TOKYO MIX CURRYは、客席を持たず、アプリ注文・テイクアウト中心という中食寄りの業態です。
一方、帯広のインデアンや札幌のみよしののような地域チェーンは、特定エリアで高密度に店舗を配置し、地域ブランドとして強い存在感を築いています。
つまり競争しているのは「味」だけではありません。
店舗フォーマット、立地戦略、店舗網そのものが競争力になっています。
出店戦略を見ると課題も見えてくる
動画ではゴーゴーカレーの店舗網も紹介しました。
石川県を起点に全国へ展開していますが、東京ではまだ26店舗程度です。人口規模を考えると、東京都内だけでもさらに出店余地があると考えられます。
一方で、地方へ広く店舗網を広げるあまり、まだブランド認知が十分ではない地域も見受けられます。
店舗開発では、「どこに出すか」だけではなく、
どの順番で市場を広げるか
が非常に重要になります。
福徳社ブログでも繰り返し取り上げていますが、店舗網の初期段階では、早すぎる広域展開はブランド認知や市場浸透の面で不利になることがあります。
ネパール料理店から見える「立地」の重要性
今回もう一つ興味深かったのが、ネパール系レストランの話です。
日本では「インド料理店」として認識されている店舗の多くは、実際にはネパール人が経営しているケースが多いと言われています。
店舗を見ていると、
- 駅から少し離れた立地
- 古い居抜き物件
- ビル2階・地下
- テーブル席中心
といった共通点があります。
もちろん例外はありますが、家賃を優先した結果、入りづらさや回転率の低さが課題になっている店舗も少なくありません。
加えて、日本人にとってナンとカレーは既に珍しい料理ではなくなっています。
つまり、「本場の料理」であることだけでは差別化になりにくく、日本市場向けの商品設計や店舗設計、立地戦略まで含めて考える必要があります。
ここにも店舗開発の重要性が表れています。
まとめ──成熟市場では「どう広げるか」が競争力になる
CoCo壱番屋の減益は、単なる原材料高騰だけで説明できる話ではありません。
カレー市場は成熟し、
- 消費者の好みが細分化し、
- 多様な業態が生まれ、
- 局地的な競争が激しくなっています。
その中では、「美味しいカレー」を提供することは前提条件にすぎません。
これから重要になるのは、
- どの立地に出店するのか
- どのフォーマットを選ぶのか
- 店舗網をどの順番で拡大するのか
- 地域でどれだけプレゼンスを高められるのか
といった店舗開発の視点です。
成熟市場では、「どこに出店するか」以上に、「どう店舗網を広げるか」が企業の成長を左右します。
今回のCoCo壱番屋の決算は、カレー市場全体が新たな競争フェーズに入ったことを示す一つのサインとして捉えることができるのではないでしょうか。
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